民放5局社長に聞く BS16年目の展望
第1回〜BS日テレ・赤座弘一社長~
2015/11/30
2000年12月1日に始まったBSデジタル放送が間もなく16年目を迎えようとしています。メディアの特性を生かした番組で着実にファンを拡大し、成長を続けてきたBS民放5局。15周年の節目を機に、各社トップにコンテンツの魅力や強み、今後の取り組みについてインタビュー、さらにBSの将来を表す漢字一文字と、込めた思いを語っていただきました。
日テレとBS日テレであらゆる視聴者の期待に応えたい
──赤座社長はBS日テレを率いて4年目を迎えられます。BS日テレの強みをどうお考えですか?
強みは、やはり日テレブランドです。同時に、日テレブランドを背負う重みを日々感じてもいます。
今、日本のテレビ局の中で、おかげさまで日テレは視聴者に大変高い支持を頂いています。それに比べるとBS日テレはまだ発展途上ですが、理想を言うならば、日テレを見ていない方は皆さんBS日テレをご覧いただきたい。日テレとうまくすみ分け、また連携しながらブランド全体で視聴者の期待に応えることを目指しています。
最近では、平日夜10時からの「深層NEWS」で安倍首相のインタビューを1時間にわたって放送し、地上波の日テレのニュース番組ではポイントを絞って展開しました。これはいい連携の事例になったと思います。
──この3年間で、手応えがあったコンテンツについてお聞かせください。
2013年秋に開始した「深層NEWS」はじりじりと定着し、今や一つの看板にまで育ちました。帯で展開する番組は、視聴習慣がつくかが肝心ですが、現場の工夫によって確実に成果が表れています。
昨年春に開始した「地球劇場~100年後の君に聴かせたい歌~」は、谷村新司さんをMCに毎回豪華なゲストを迎える、大変高品質で本格的な音楽番組です。月1回の放送ですが、こちらも看板の一つになっています。
BS日テレではずっと、BSだからできる“趣味の深掘り”を進めてきました。BSのコアターゲットはシニア層だといわれ、今年4月から始まった機械式接触率調査でも実際にその傾向は表れていますが、今後の発展にはより幅広い層の支持も必要です。開局以来、根強い人気の「BS日本・こころの歌」や「TOSHIBA presenta 小さな村の物語 イタリア」などに加え、ペットや美術などテーマ性のある番組を拡充して、40代以下の若い世代や趣味性の高い方々を捉えようと注力しています。
──最近では、10月10日にゴルフと野球の生放送をマルチ編成で展開されました。
BS日テレで初のゴルフ4時間生放送を予定していたツアーワールドカップ(HONMA TOURWORLD CUP AT TROPHIA GOLF)に、巨人戦のクライマックスシリーズ初日の放送が1時間重なったため、マルチ編成で対応しました。これまでの野球ナイター延長時以外にも、マルチ編成の可能性があると感じました。
もともとBS日テレが得意とする、巨人戦をはじめスポーツのジャンルで支持いただくことは、今後もわれわれにとって一番肝心なところですね。
番組をじっくり育てながら、過去にない挑戦を続ける
──間もなく、開局15周年特番として時代劇「佐武と市捕物控(さぶといち とりものひかえ)」が放送されます(12月19日午後7時~予定)。16年目に向けて、どういった部分に注力されていく予定ですか?
BS全体で時代劇は支持が高いのですが、BS日テレとしてはその中でも、ひとひねりある作品を提供していきます。石ノ森章太郎による本作品は、私も原作をリアルタイムで読んだ世代で、しゃれたテイストが印象的でした。これを4Kで撮影し、細部にまでこだわって仕上げています。シニア層にはもちろん、若い世代には時代劇の面白さを感じてもらえる作品です。
来春にもまた改編はしますが、新番組を次々にというよりは、視聴者の反響を見極めながら、レギュラーをじっくり育てるのがわれわれの姿勢です。例えば、今春にスタートした「片岡愛之助の解明!歴史捜査」や「三宅裕司のふるさと探訪〜こだわり田舎自慢〜」は、調査を見ても着実に支持されている。こうした番組を核として伸ばしていきます。
地上波の日テレでも、深夜帯から数々の人気番組が生まれてゴールデンに定着していますが、その遺伝子をわれわれも持っているんです。自社制作のレギュラー番組本数がかなり多いことも、私の就任前からの伝統として大切にしたいと思います。
──BSの未来を、漢字一文字で表していただけますか。
挑戦の「挑」を挙げました。BSは開局してまだたった15年、新しいことへの挑戦を忘れてはいけないと考えています。今、特に重要なのは、来年に試験放送が始まる4K・8K放送です。さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、技術や制度などさまざまな面が動き、ネット配信の流れも強まるでしょう。
その中で、来年は各局が大きな決断を迫られる年になると思います。当然私も、経営者として会社を成長させるため、この3年間以上に挑戦の勢いを増していきたいと思っています。
もう一つ、BS日テレとしては、地上波の日テレに挑むという意味を込めました。兄弟関係にある日テレは、ライバルであり、盟友です。われわれで占拠率100%を獲得するくらいの意気込みで、挑戦を重ねていくつもりです。
開局15周年「BS見本市15祭」
BS民放5局は開局15周年を記念し、12月1日から「BS見本市15祭」を実施する(2016年1月31日まで)。期間中は、紀行、ドキュメンタリー、映画など、5局厳選のアーカイブ作品60番組以上を計130時間にわたって放送。さらに年末年始(12月28日~1月3日)は、5局共同特別番組「バック・トゥ・ザ・21世紀」を各局日替わり2時間で届ける。俳優の吉田鋼太郎氏が「吉田未来研究所 所長」に扮し、21世紀の五つのテーマ「怪物」「仕事」「東京」「女性」「時間」の研究成果を発表していく。