民放5局社長に聞く BS16年目の展望
第5回〜BSフジ・宮内正喜社長~
2015/12/04
2000年12月1日に始まったBSデジタル放送が16年目を迎えました。メディアの特性を生かした番組で着実にファンを拡大し、成長 を続けてきたBS民放5局。15周年の節目を機に、各社トップにコンテンツの魅力や強み、今後の取り組みについてインタビュー、さらにBSの将来を表す漢字一文字と、込めた思いを語っていただきました。
誰も実現していないことを見せるのが、BSフジらしさ
──フジテレビ系列の岡山放送で社長を8年務められ、現職に就任されて半年がたちました。現在の所感をお聞かせいただけますか?
地方局にいて一番モヤモヤするのは、その局が作ったコンテンツが全国になかなか発信されないということです。ドキュメンタリーにしても、報道にしても、イベントにしても。これが非常に残念で、悔しく感じることもありました。
BS放送は全国一斉に届けられます。もっともっとその特徴を生かせるコンテンツの開発と発信をBSフジでやっていきたいという気持ちでいっぱいです。
地上波のように系列局の乗り入れがなく、終日を通した編成ができる点もBSならではだと考えています。例えば平日夜8時からの「BSフジLIVE プライムニュース」でビッグゲストを迎え、時の話題でキャスターとの議論が白熱したら、野球中継のように延長したっていいじゃないかと。もちろん、後ろの番組を楽しみにしてくださっている方々のことなどを考えると、簡単にはいきませんが、私はそのくらい振り切ってもいいのではという気持ちでいます。
──この秋から、平日夜10時を「あなたがあなたに戻るとき BSフジの22時」と冠して、大人向けのエンターテインメント番組を拡充しています。16年目の核となるコンテンツについてお聞かせください。
「プライムニュース」が核であることに変わりはありません。新たなステージにステップアップさせていきます。同時に、「やっぱりBSフジ、やってくれるよね」と言われるコンテンツを、どんどん増やしていきます。
ご承知のように、BSのコアターゲットはシニア層です。放送局はその方々の満足感を大切にし、広告主企業にはこの層へ訴求していただけると、いい循環が生まれます。
好調の「鬼平犯科帳」などを維持しながら、メインの視聴者へ向けた新番組でもクオリティーを追求していきます。
先日発表した、日本映画放送との共同制作による藤沢周平原作のオリジナル時代劇も、その一つです。日本映画放送は「北の国から」の杉田成道監督が社長です。彼はフジテレビへ新卒入社した10人の仲間の一人で、現役の社長業としてただ二人残る同期なのです。同じ年代の鏡みたいなものですね。時代劇にとらわれず、まだまだお互いにいろいろなことをやってみようじゃないかと話しています。
一方で、BSはおおむね各局ともコアターゲットが同じなので、各局の編成を見ると、似た切り口の番組が目立つことも気になります。懐メロだったり、京都紀行であったり、時代劇であったり、韓流ドラマであったり、“らしさ”というものがない。じっくり、ゆっくりの方々ですから、番組や場面構成もそのペースに合わせる必要はあります。ただ、その中でも“BSフジらしさ”は出せるだろうと思うのです。BSフジらしさをどこかに加味して、今までになかったものを打ち出していかなければいけないと思っています。
──宮内社長が考える“BSフジらしさ”とは、どんなことでしょうか?
誰も実現していないことを見せること。既存の編成にはないようなものをぽっと提示して、視聴者や広告主企業、広告会社の皆さんに喜んでいただける仕掛けを考えていきます。
番組以外でも、結果を出していきたいですね。フジテレビ時代には「シルク・ドゥ・ソレイユ」や「ボローニャ歌劇場」の招聘なども手掛け、局内の情報番組やグループ内の活字媒体を活用したり、系列を回ってプロモーションイベントをしたりと、そんな仕事も大好きでした。今は社長という立場ですが、こうした企画にも着手したくてむずむずしています。
東京オリンピック・パラリンピックでは、ここ台場エリアも競技会場となります。これから2020年に向けて、全国・全世界に向けて発信し、注目を集める舞台となるのです。そして私たちBSフジはBS局として唯一、そのど真ん中にいます。
さまざまなハードルを、そして自身の経験を超える
──16年目に向けて、宮内社長が率いるBSフジの目指す姿をお聞かせください。
当社は民放BSの中で営業利益トップを記録しており、その状態で私が引き継ぎます。売上高、営業利益、経常利益をトップにしていくことを目指したいと思います。
加えて、今はBSを含めてメディア環境がたった半年でも激変していく、目まぐるしい時代です。われわれに直接関係のある、大きな制度改革や規制緩和なども頻繁に起こります。来年に何が起こるかは予測がつきませんが、それらにいち早く対応できる体制を整えて、一番乗りは常にBSフジでありたいと思います。
今、フジテレビからも“4M”——地上波、BS、CS、ウェブの四つのメディアを連動させていく戦略が出されています。これを言葉だけではなく具現化し、番組、コンテンツ、イベントなどで展開していけば、われわれがトータルで存在感を示している状態に急浮上していけるでしょう。
──BSの未来を、漢字一文字で表していただけますか。
来年から、BSで4K・8Kの試験放送が始まります。技術の進化によって、2020年の東京オリンピック・パラリンピックくらいまでには定着しているでしょう。そのためには超えるべきハードルもあるでしょうが、それもBSフジは最初に超えて、革新のど真ん中にいたい。これらをかけて、「超」を選びました。
これは、私自身が心に留めたい一文字でもあります。岡山放送やフジテレビ時代の話もしましたが、それは地上波の経験だろう、といわれればそれまでです。経験を生かしつつ、一方で過去にとらわれずに自分自身を超えて、BSフジとして新しいステージへ進みたい。思い切った挑戦をしていきますので、ぜひ来年のBSフジにご期待ください。
開局15周年「BS見本市15祭」
BS民放5局は開局15周年を記念し、12月1日から「BS見本市15祭」を実施する(2016年1月31日まで)。期間中は、紀行、ドキュメンタリー、映画など、5局厳選のアーカイブ作品60番組以上を計130時間にわたって放送。さらに年末年始(12月28日~1月3日)は、5局共同特別番組「バック・トゥ・ザ・21世紀」を各局日替わり2時間で届ける。俳優の吉田鋼太郎氏が「吉田未来研究所 所長」に扮し、21世紀の五つのテーマ「怪物」「仕事」「東京」「女性」「時間」の研究成果を発表していく。