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ぐるぐる思考 発見!モード③ (コンセプト=アイデア)

ろーかる・ぐるぐる №19

  • 山田 壮夫

2013/11/21

ぐるぐる思考 発見!モード③
(コンセプト=アイデア)

ごめんなさい。

このコラムをずっと読んでくださっている方は混乱されているかもしれません。第5回に「コンセプト」を「目標に向け課題を解決する新しい視点」と定義しました。にもかかわらず第11回には「目標に向けて課題を解決する新しい視点(=アイデア)」とあります。
コンセプトとアイデアの関係はどうなってんの?ですよね。

ある先輩によれば「広告のアイデアには三つある。ブランド戦略のアイデア。表現のアイデア。メディアのアイデアだ」ということです。よく「ビッグアイデア」とも呼ばれる「ブランド戦略のアイデア」こそ、実は経営学の世界でいうところの「コンセプト」と同じものです。それはどちらも「目標に向けて課題を解決する新しい視点」を意味します。

こまちヨーグルト
栗駒フーズさんは秋田県で美味しい牛乳や
ヨーグルトをつくっています。

ところが実際には「アイデア」はもっと軽い意味で用いられることが多いですよね。手許の広辞苑にも「①思いつき。着想。考案。②理念。→イデア」とあります。どちらかといえば楽しいけれど非現実的なニュアンスが強いようです。
一方の「コンセプト」は経営学の世界で「戦略ストーリーにおけるコンセプトの重要性はいくら強調してもし過ぎることはありません」 と言われるほど大切なものです。だからなのでしょうか、アイデアに比べるとずいぶん生真面目で無難なものであるべきと考える人が多いようです。

 


たとえば栗駒こまちヨーグルトの「コンセプト」って社内でどんな風に規定されているのでしょう? あくまでぼくの勝手な想像ですが、こんな感じかもしれません。

「栗駒こまちヨーグルト」はブランド米あきたこまちをお粥にして栗駒高原ヨーグルトとブレンドした朝食ヨーグルトです。食べごたえはあるのに低脂肪なのでお子様からお年寄りまで幅広い年齢の方にお楽しみいただけます。

あるいは・・・

 「ヨーグルト新体験」

いかがでしょう? 皆さんの身の回りにあるコンセプトってこんな調子ではないかと思います。でもこれって本当に「コンセプト」なのでしょうか?

コンセプト(サーチライト)が経験的世界の闇を照らし出します。

 

第5回にも紹介しましたがアメリカの社会学者タルコット・パーソンズはコンセプトについて経験的世界を照らす「サーチライト」のようなものだ、と説明しています。「暗黒の中でわれわれはサーチライトによって、初めて事物を見ることができる。これと同じように『概念』というサーチライトによって、照らされた事物を、われわれは『事実』として認識する」 と。
こういった元来持つ意味合いからすると、世の中にある多くの「コンセプト」は何も映し出さない、ただの説明だったり言葉遊びに過ぎません。「ヨーグルト新体験」もどんな新体験かよくわからんですもんね。耳にするだけで何をしたいのか直感的に伝わる「芸術は爆発だ」のような本物のコンセプトにはなかなか出合えません。

「コンセプトを見直そう」というのは、きっといまの延長線では限界がありそうだ、何かイノベーションが必要だ、というタイミングでしょう。そしてイノベーションとは「芸術は爆発だ」のような本物のコンセプトによって新しい経験世界が照らし出され、と同時にいままで当然と思われていた常識が否定されるプロセスです。

新しいコンセプトが新しい世界を照らし出し、常識を覆します。

 

イノベーションを起こす新しい視点としての「コンセプト」は正しく生真面目に無難にロジカルに考えて導き出せるものではありません。なぜなら過去の体験の延長線上にはないからです。もっと人々が「アイデア」という言葉から連想するような一見非現実的な楽しいものとして考える必要があります。

 

ぼくが電通に伝わる「アイデアづくりの方法論」を「ぐるぐる思考」としてまとめた目的はここにあります。この方法論を広告領域のみならず広くビジネスにおける「コンセプト創造の方法論」として活用していただきたい、というのが大きな願いなのです。「イノベーションしたければ、(すぐれた)広告マンに相談だ!」です。


えーと。
これからこのコラムでは当分の間「目標に向け課題を解決する新しい視点」を「コンセプト(アイデア)」と書くことにします。
そして次回はいよいよぐるぐる思考4つ目の「磨く」モード。もうちょい旨い食べものの話を増やして、のんびり進めていこうと思います。

どうぞ、召し上がれ!
 

 

 i 楠木建『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社、2010年より抜粋。「優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ」とも。
 ii 高根正昭『創造の方法学』講談社現代新書、1979年より抜粋。