ユニリーバのスタートアップ企業支援、同業にも拡大
2016/01/14
ユニリーバは、マーケティングテクノロジー分野のスタートアップ企業支援を目的として昨年に新設したプログラム「ユニリーバ・ファウンドリー」を拡大展開させる、とアドエージが報じている。新構想は、競合相手となる可能性もある同業ベンチャーとの提携だ。
ユニリーバ・ファウンドリーは、コンテンツ制作やデータ分析、モバイルマーケティング、ソーシャルメディアといったマーケティングテクノロジー分野のスタートアップ支援を目的として1年半前に創設された。変化の速い同分野で最先端のベンチャー企業と組むことにより、自社のマーケティング投資効果を向上させる狙いだ。2015年のカンヌライオンズでは、イノベーション部門との協働で世界のベンチャー企業のトップ50を選ぶコンペティション、「ユニリーバ・ファウンドリー50」が新設され注目を集めた。
事業内容は、優秀なベンチャー企業を発掘するためのイベントやコンペティションの開催、スタートアップ企業とのユニリーバブランドの提携、さらにユニリーバが持つマーケティングノウハウの伝授という3本の柱からなる。
ユニリーバ・ファウンドリーのウェブサイトには、ユニリーバで現在進行中のプロジェクトが掲載され、ベンチャー企業は自社のアイデアを応募できる仕組みだ。世界には20億人のユニリーバ製品のユーザーがいるとされ、採用されれば非常に規模の大きいビジネスとなる。
採用されたベンチャー企業には5万ドルの資金の他、ユニリーバ傘下の有名ブランドとの試験プロジェクトのチャンスが与えられる。その後3カ月にわたり、ユニリーバのマーケティングの専門家が事業拡大に向けてベンチャー企業を指導。最終段階として、財政支援が提供される。
創設から1年半で4000社が審査を受け、うち80社がユニリーバブランドとの試験事業を実施。また、40社がすでに展開規模を広げている。同社の関連支出はこれまでに1500万ドルに達した。
英ロンドンに拠点を置くユニリーバ・ファウンドリーは、米国支社開設に伴い、パーソナルケア部門での同業ベンチャー企業の支援にも乗り出す。すでに少数のスタートアップ企業とビジネスモデル改革の試験事業を行っているという。ユニリーバ・ファウンドリーの総括責任者を務めるジェレミー・バセット氏は、同業のスタートアップ企業は「敵でもあり味方でもある」が、成長をてこ入れすることで「自然成長と買収の間の第3の道による事業拡大」という構想を描いている。他業界と同じく、小回りが利くスタートアップ企業の台頭は、ユニリーバにとっても市場シェアを脅かす動きには違いない。しかし、スタートアップ企業支援に対するユニリーバの各ブランドの関心は高く、11月に行われた米国支社発足のイベントには、スタートアップ企業との出合いを求めて100ブランド以上の幹部が会場にあふれた。北米ユニリーバのキース・クルイトフ社長は「我々は巨大企業として新しいものを取り入れていかないといけない。常に変化し続ける世界とつながりを維持することは有意義なことだ」と同業ベンチャー企業への支援に意欲を見せた。