loading...

生成AIで広がるデジタルヒューマンの可能性No.2

デジタルヒューマン・キャスティング事業、始動! ~立川志らくの落語をグローバルコンテンツに~

2024/08/21

立川志らく

近年、生成AI技術の飛躍的な進歩に伴い、人間にそっくりな姿で自由自在に動く「デジタルヒューマン」の実用化に向けた取り組みがさまざまな業界で進んでいます。

前回は日本の芸能界におけるデジタルヒューマン活用の可能性を紹介しましたが、今回のテーマは伝統芸能です。

大手芸能事務所のワタナベエンターテインメントは電通とともに、キャスティング共同事業をスタート。第一弾として、立川志らくさんを模したデジタルヒューマン制作を行いました。

本プロジェクトを統括する電通BXクリエーティブ・センターのアーロン・ズーが、立川志らくさんとの取り組みを解説します。

言語や時間の制約を超え、日本の伝統芸能をグローバルに発信する

能楽、文楽、歌舞伎、そして落語など、日本で古くから親しまれてきた伝統芸能は、国内のみならず海外でも根強い人気を誇るコンテンツです。訪日観光客が日本の公演に足を運ぶだけでなく、近年は伝統芸能が海を超えて海外公演にチャレンジする事例も出てきています。

しかし、やはり言語の壁は大きな障壁となっており、伝統芸能が生み出す感動や笑いを十分に伝えきれていない部分もあるようです。また、伝統芸能の担い手が限られる中、国内での活動と並行して世界各地に活動を広げることは、なかなか難しいのが実情です。

そして、著名な落語家などは芸能事務所に所属し、メディアを中心に幅広く活躍していますが、前回もお伝えしたとおり、従来のキャスティング手法では、時間や移動の制約がどうしても影響してくるため、企業や世の中のニーズに応えきれないケースが生じています。

こうした課題を解決し、新たな価値を創出する手段として大きな可能性を秘めているのが、デジタルヒューマンの活用です。

デジタルヒューマン活用は、特にSNSや動画コンテンツ、メタバース空間などのデジタルメディアにおいて、高い話題性と柔軟性を持つコミュニケーション手法です。ここ数年で生成AI技術が飛躍的に進歩したことで、デジタルヒューマンがリアルタイムで反応したり、自由な対話をしたりといったことも、より自然かつスムーズに行えるように進化。広告領域をはじめとして、さまざまな領域での展開が加速しています。

リアルタレントの拡張を目指す、ワタナベ×電通の新規事業

そこで、国内電通グループは大手芸能事務所のワタナベエンターテインメントとともに、デジタルヒューマンのキャスティング共同事業をスタートさせました。

ナベプロ

本共同事業の第一弾として、ワタナベエンターテインメント所属の落語家・立川志らくさんのデジタルヒューマンを制作しました。

立川志らく
デジタルヒューマンの完成イメージ。画像の背景は、フラワーデザイナーである赤井勝氏が立川志らくさんのデジタルヒューマンをイメージした「菊」

志らくさんのデジタルヒューマンを活用することで、時間や場所の制約を超えて、いつ、どこでも本人の声で落語の演目を披露したり、自由会話によるコミュニケーションを取ったりすることが可能となります。

将来的には生成AI技術の活用により、多言語に対応したモデルの制作を行い、志らくさんの落語をグローバルコンテンツとして世界各国に展開していくことも目指しています。さらに、AIが志らくさんの“枕”(本題に入る前の小噺。世間話や本題のポイントとなる言葉の説明などを行うことが多い)の全パターンを学習して新たに“枕”を生み出すなど、デジタルヒューマンならではの新しい体験を創出することにもチャレンジしていく予定です。

例えば、今回の撮影で演じていただいた古典落語の「死神」では、呪文を唱える場面で志らくさんが呪文に時事ネタを挟み込むアレンジが定番となっています。そのアレンジパターンと世の中の外部情報をAIが学習することで、その時の旬のネタ、しかも海外のローカルネタを取り入れたアレンジも可能になるかもしれません。

世界共通でイメージが湧く題材、しかし演じるのは難しい「死神」

この画期的な取り組みを、立川志らくさんご本人はどのように捉えているのでしょうか。本共同事業を統括するアーロン・ズーが聞いてみました。

アーロン:このたびはデジタルヒューマン制作にご協力いただきありがとうございます。志らく師匠にとっても新しい取り組みだと思いますが、いかがでしたか?

立川志らく(以下、志らく):面白い取り組みですよね。私は落語をいろんな国の言葉で表現することに前からすごく興味があったんです。

立川志らく

アーロン:そうだったんですね。

志らく:それをAIにやらせようっていう発想はなかなかユニークですよね。だから、今回挑戦してみようって思ったんです。

アーロン:ありがとうございます。数ある演目の中で「死神」を選んだのはなぜでしょうか?

志らく:もともと「死神」は、グリム童話やオペラをもとに作った噺だといわれています。それに、外国の方でも想像できる題材ですよね。

立川志らく

アーロン:確かに、多言語展開しやすい作品かもしれませんね。

志らく:ただし、「死神」は題材としてはシンプルで分かりやすいのですが、いざ演じるとなると非常に高度な技術が必要となります。弟子レベルではまず無理でしょうね。

アーロン:なるほど、だからこそ志らく師匠のデジタルヒューマンが演じることに大きな価値が生まれそうですね。日本の優れたコンテンツである落語の魅力を全世界に届けられるよう事業を進めてまいりますので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします!


本事業では日本の優れたコンテンツの可能性を拡張し、リアルのみならず、デジタル世界への新たな挑戦を行っていきます。今後、デジタルヒューマンの制作監修や、デジタルヒューマンを活用したコンテンツブランディングの企画・実装などを担い、企業のマーケティング活動におけるキャスティング業務などを、ワタナベエンターテインメントとのプロジェクトを皮切りに、国内電通グループ各社はさまざまな会社と連携して推進していきます。

そして、デジタルヒューマンの活用により、従来のコンテンツをAI技術でアレンジすることで、タレントのマネジメント力の向上や製作稼働の効率化を行い、今まで以上にタレントコンテンツの多様化を目指していきます。

デジタルヒューマン

ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

【事業に関する問い合わせ先】
株式会社電通 BXクリエーティブ・センター
アーロン・ズー(Aaron Z. Zhu)
Contact:https://dentsu-bxcr.com/contact

https://x.com/dentsuho