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アジアのZ世代視点から見る、半歩先の未来とは #01No.1

アジアの若者たちが考える「ツギクル友情のかたち」とは?

2024/09/17

2025年、アジアは人口の4分の1がZ世代となると言われており、購買力が期待される世代としても注目されています。こうした背景のもと、電通若者研究部(以下、電通ワカモン)は、電通グローバル・ビジネス・センターや電通グループの海外拠点メンバーと連携し、アジアの7つの市場(日本、台湾、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア)の10~20代の学生を対象に、Z世代の新たな価値観についての「ツギクル」調査を実施しました。(プレスリリースは、こちら

本連載では、現地の大学生と実施したワークショップの結果をもとに、アジアのZ世代のインサイトを探ります。各市場での共通点や違いに注目しながら、Z世代が未来の仮説として考える価値観やトレンドを紹介します。

今回のテーマは、若者が考える「ツギクル友情のかたち」です。コロナ禍で多様な友情モデルが生まれた今、この変化を把握することで、Z世代とのより柔軟なコミュニケーションを実現するヒントになると考えています。

<目次>
電通ワカモンとは?

アジアの若者から見る、「ツギクル友情のかたち」とは

ツギクル友情のかたち in 日本

ツギクル友情のかたち in 台湾

ツギクル友情のかたち in インドネシア

ツギクル友情のかたち in ベトナム

アジア各国のツギクルから見えてきた未来仮説

電通ワカモンとは?

電通ワカモンは、高校生や大学生を中心とした10~20代の実態を調査し、企業や社会、そして人々が若者とより良い関係を築くために、プランニングからクリエイティブ開発までを一貫して行う、電通内の特命異能ユニットです。

電通ワカモンが若者と向き合う理由は、若者は時代の半歩先を歩み、真っ先に「新しくなる人」だからです。彼らの感性や考え方は、しなやかなたくましさを持ち、社会が未来に向かうためのヒントを示してくれています。そのヒントの輝きを見逃してはいけないと、私たちは考えています。

そんな信念のもと、電通ワカモンでは、定期的に国内の学生と「ツギクル」と題したワークショップを実施し、「次に来る○○のかたち」というテーマで未来仮説の構築を行っています(過去の「ツギクル」ワークショップの記事は、こちら)。

電通若者研究部



 


 

アジアの若者から見る、「ツギクル友情のかたち」とは

今回は、アジア7市場の中から特に際立った特徴を持つ4つの市場(日本・台湾・インドネシア・ベトナム)を紹介します。各市場の学生たちにとって「友情」のかたちがどのように変化しているのか、その変化をもとに未来の仮説を考察します。

電通若者研究部

環境ありきで、自然と生まれる友情

これまでの日本では、学校のクラスが同じ、家が近所である、といった、環境ありきで生まれる友情が大半でした。その結果、「この人のここが好き!」という点がなくても、時間を共にすることで、なぜかいつも一緒にいるという関係がつくられてきました。

なぜそうだったのか?

日本人は集団の調和を大事にする「和」の概念を重んじ、友情関係においても、個を立てるのではなく、周囲となじむことを良しとしてきました。組織の中でいかに苦楽を共にしてきたかが友達関係を語る上で重要な尺度でした。

電通若者研究部
イラスト:ヤマモトアサコ(電通)

ツギクル友情のかたちは、「いつメン」から「都度メン」へ

コロナ禍による生活環境の変化で、個人の選択肢が広がり、「友達」の定義も多様かつ主観的になりました。リアルで会う頻度が減少したことで、従来の「頻繁に会う仲間」から、目的に応じて柔軟に選ぶつながりへと変化しています。オンラインの普及により、友達づくりは人種や年齢、性別を超えて、個人の目的に合わせてコミュニティを形成することが容易になりました。これからは、友達の定義が「いつでも会えるメンバー」から「目的ごとに集まる存在」へと変化していくと考えられます。

電通若者研究部

友情関係を維持するために膨大なコストをかけてきた

これまでは、生活環境をもとに学生時代の交友関係を重視し、友情関係を長続きさせるために、多くの時間や労力を費やすのが一般的でした。

なぜそうだったのか?

台湾では、交友人数が個人のステータスと結びつけられているため、「独りぼっち」にならないよう、さまざまなSNSやコミュニケーションチャネルを通じて深く交流し、友情関係を育ててきました。友人の数が個人のステータスの一種として重視されていたからです。

電通若者研究部

ツギクル友情のかたちは、「高粘着ディープな付き合い」から「淡泊なプチケア」へ

現在の台湾では、SNSが主なコミュニケーション手段となり、若者は多様なソーシャルコミュニティを形成しています。その結果、特定の友人と過ごす時間は減り、必要な時や共通の話題がある時にだけ意図的に連絡を取ることが増えました。

普段はSNSのストーリーやメッセージでの軽いやり取りを通じて、非対面的かつ干渉しないかたちで友情を維持しています。コロナ禍を経て、依存度の高い付き合い方よりも、自分を大切にしつつストレスフリーな関係を重視する傾向が顕著になり、この傾向は今後も続くでしょう。

電通若者研究部

オフライン中心の友人関係の限界

従来は、友人関係は主にオフラインで築かれ、オンラインで友人をつくることは少なかったようです。オフラインでの友人関係は、物理的に近い場所や同じ学校・地域に限定されがちで、議論も浅くなりやすく、多様性に乏しい傾向がありました。そのため、オフライン中心の消費には限界があると感じられ始めています。

なぜそうだったのか?

親世代はオンラインの友人を持つことを禁止してはいないものの、オンラインの友情を重視することには消極的です。彼らは、オフラインでの友情が最も受け入れやすく、合理的だと考えているからです。

ツギクル友情のかたちは、新たに生み出される多層的な友情の可能性
 
バーチャルな価値共有による友情は、アーティストや映画などのエンターテインメント分野での共通の興味に基づくことが多く、特にファンは好きなものに深く傾倒するため、オフラインの友情よりも情熱的になりやすいです。特にインドネシアでは、K-POPのファンの勢いがすごく、SNS上でファン同士のコミュニケーションが熱狂的であると言われています。

電通若者研究部

一方で、リアルな友人関係における友情は、学校や地域活動など共通の体験を通じて形成され、安定的で深い絆になりやすいです。今後は、特にファンダムコミュニティにおいて、バーチャル、リアルを融合した友情関係によって、友情の多層化が進むのではないかと考えます。

電通若者研究部

同じ趣味や環境を持つ仲間から友情は生まれる

ベトナムの階層文化では、年配者は若者を友達と見なさず、教える立場に立つため、年齢が異なる友人関係は珍しいです。「Giàu vì bạn, sang vì vợ」(金持ちは友達のおかげ、優雅さは妻のおかげ)という言葉もあり、友人は慎重に選ばれる傾向にあります。

電通若者研究部

なぜそうだったのか?

ベトナム文化は階層が重要で、相手の年齢を知らないと正しい人称代名詞が使えません。ベトナムでは、家族を含む親しい人との強い絆を重視するため、他人と友人になる前に深い関係を築く必要があります。

ツギクル友情のかたちは、「キャリア形成」フレンド

年齢を問わず、共通の趣味や環境、価値観を持つ相手と、平等な立場で友情を築く傾向が強まっています。例えば、学生は、若者向けのコミュニティに参加し、職業経験や将来のキャリア形成という共通の目的意識の中で、友情関係を育んだり、階層を超えて友情が芽生えたりする例も増えています。これからは、趣味や利害が一致すれば年齢や性別を問わず友情が成立する柔軟な交友関係が拡大していくでしょう。

アジア各国のツギクルから見えてきた未来仮説

電通若者研究部
アジア各国の学生たちの「ツギクル」を俯瞰(ふかん)してみると、グラデーションはあるものの、共通して従来の規範にとらわれない新しい友情観が見受けられます。コロナ禍によって社会基盤であるネットコミュニケーションの自由化や世の中の常識がリセットされ、若者たちの価値観が各国で似通ってきていると言えるでしょう。デジタルテクノロジーの進化によって、グローバルの境界線が薄れつつありますが、今回の「ツギクル友情のかたち」においてもそれが証明されたのではないでしょうか。

ツギクル友情のかたちは、リアルなつながりに限定されず、「趣味や目標が一致する」といった柔軟な基準でかたちづくられる目的・状況ベースの友情と言えます。自由で柔軟な関係が増える一方で、「どう付き合えばいいかわからない」という新たな悩みが浮上しているのも事実です。こうした背景から、アイデンティティ形成やつながりの支援を目指すマーケティングの重要性が高まり、より一層コト消費やコミュニティマーケティング、共創マーケティングが注目されていくのではと考えています。

次回は、「ツギクル健康のかたち」を紹介予定です。

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