コンテンツマーケティングの現場からNo.28
意外と難しい、チームマネジメント
2016/03/15
コンテンツマーケティングを始めるとき、ついつい方法論や知識、必要なメンバーの確保に気がいきがちなのですが、意外と難しいのがチームのマネジメントだと感じています。私の周辺でも過去さまざまな摩擦がありましたし、専門家を呼んでもツールを導入しても、何かがうまくいかない進まない、というケースも時折耳にします。なんで「進めること自体」が難しいのか。少し考えてみたいと思います。
①詳しい人と詳しくない人
いちばんよくあるのが、メンバー間のデジタル習熟度の格差問題でしょう。コンテンツマーケティングにはクリエーティブからマーケティング、編集まで多様な機能が必要なため、必ずしもウェブ業務歴の長い人だけでチームが構成されるわけではありません。また、たとえある程度の経験がある人が集まったとしても、この領域は広く、深く、作業はきわめて複雑なため、それぞれの得意分野が偏っていたりすることがあります。
そんな環境が日常的なデジタルの作業で意外と骨が折れるのが、あまり詳しくない人に説明すること。用語上の知識だけで済むときはあまり問題がないのですが、そもそもの捉え方や向き合い方の違いから説明しなければならないとなると、思っている以上に時間がかかります。おまけに詳しい人ほど毎日忙しく、しかも作業は常にスピード勝負。詳しくないがゆえに仕事が遅い人への気遣いが欠けてしまうことも無理からぬことでしょう。
またデジタル領域に精通している側の人間は、詳しいだけでなく常に最新情報を追いかけ、吸収し、自分自身をアップデートしています。そういう人間からすれば、詳しくない人はどこまでも初心者に見えてしまうためでしょうか。詳しい人間が上、未熟な人間が下。そんな決まりはなくてもついつい無意識下に、上下関係が生まれやすい環境でもあります。
詳しい人と詳しくない人の間に目に見えない意識が働き、小さなストレスがたまり続けること。いろいろな人が集まるコンテンツマーケティングチームのリーダーが気を付けておかなければならないポイントの一つです。
②ワクワクさせたい人と数字で応えたい人
デジタルは数字の世界です。コンテンツの企画を考えるときでも数字を切り離すことはできませんが、チームの中には時に特に数字を信頼していて、狙った数字がクリアできたこと、もやもやしていたことが数字で説明できるようになること、シミュレーション通りの数字が出てくること、に価値を感じる人々がいます。
もう片方に、出て来た数字の意味を求め、そこから生活者の本音を読み解こうとし、さらにはその本音を揺り動かす企画で顧客をワクワクさせたいと考える人間がいます。
両者の大事にするポイントの違いは、仕事のやり方や仕事への温度感にまで現れてきます。当然、作業にかける時間量と向き合い方も変わります。すばやく効率的に数字で応えていく人は、無駄と思われることをできるだけ排除していきたいと考えがちです。
一方で本質的なメッセージを探し出し、ちゃんと届く企画で顧客をワクワクさせたい人間にとっては、効率性と同じくらいアイデイアをきちんと考え、吟味する時間をとることが重要になってくる。そうなったときに、どこまでを必要なこととして認め合うのか。互いの感覚値の調整が必要になってきます。
もちろん、すべてを数字でがっちり固めて効率的にプロジェクトを進めていくやり方もあります。けれど、そのような作業では「顧客をワクワクさせたい人」は居場所がなくなってしまい、自然と離れていくことになります。そして最終的には、アイデアが生まれず変革もイノベーションも起きないチームになっていってしまう。アイデアと数字。熟考と効率性。その調整も、チームマネジメントでは常に問われることになります。
③理由のある判断、ない判断
コンテンツマーケティングの仕事は、最終的にはモノをつくっていく作業になっていくわけですが、この過程で混乱を招くのが判断の意図が見えないこと。例えば、「この写真をもっと青っぽくしてほしい」といった感覚的な話。人は相手の感覚までは把握しきれないので、なぜそう言っているのか理由が分からないと何度もやり直しを繰り返すことになります。
あるいは、「上が言っている」といった話。これも上の方の意図が見えないと、つくり手は右往左往し作業時間が積み上がります。
さらにデジタルの作業は、一度着手してしまうと簡単に引き返せるものではありません。突然の理由不明の変更が大きなリスクとなるという前提で判断していかなければなりません。
意図の見える判断をしていくこと、判断したことを覆さないこと。そんな基本ともいえることがとても重要なのです。
あらためて整理してみると、チームマネジメントという点ではどれも当たり前のことですね。コンテンツマーケティングではその当たり前のことを、きちんとケアしていくことがプロジェクトの成功にとって想像以上に重要なポイントになっているのです。