コンテンツマーケティングの現場からNo.29
「相手にとって」の視点に、本当にスイッチできているか
2016/04/06
「コンテンツをつくっただけでは人が来ないのでアドを出さなければと思うのですが、どうしたらよいでしょう」
「もっとコンテンツを回遊してほしいのですが、どうしたらよいでしょう」
最近立て続けにそんな話がありました。
誰に来てほしいのか。ユーザーにとって回遊するメリットはどこにあるのか。
よくよく話を聞くと、どちらも自分たちの伝えたいことを中心にプランニングしているうちに、コンテンツを受け取る相手のことがいつの間にか抜け落ちていることが分かりました。
コンテンツとは本来「相手にとって有益で説得力のある情報」のことですが、この「相手にとって」というところには、広告やブランドプランニングの経験が長い人も、ウェブマーケティングの経験が長い人も、等しく陥りやすい落とし穴があるようです。
例えば、ユーザー調査を行ってきちんとターゲットに向き合っているように見えて、実は調査の答えと本心のギャップをきちんと埋め切れていなかったり、一人一人ではなくマスで把握していたりするケース。あるいは、ペルソナを細かく規定しているのにステレオタイプで実在のリアリティーがなく、ペルソナ設定のためのペルソナになっているとか、数字上きちんと成果を上げているように見えても、実は目標数字をクリアすることに終始するあまり、ユーザーの本音とは関係のない小手先のテクニックに走っているなどのケースがあったりします。
また特に、金融、住宅、通信、自動車など、日用品に比べて検討期間も長く、多岐にわたる情報をユーザーが求める商品では、ユーザーとの情報格差がある分どうしても送り手主導の情報発信になりがちです。さらに付随して送り手都合の購入支援、刈り取りにもなりがちです。本当の意味でユーザーが求めていることにきちんと応え切れているのかどうか。他の業種以上に丁寧に気を配る必要がありそうです。
そこでいまさらの話ではありますが、コンテンツマーケティングを実施するにあたって、最も重要で最も基本のポイントをあらためて整理しておこうと思います。
1)そのコンテンツは誰に届けたいのか
ここの「誰に」は、かなり具体的な「誰か」を想定しておく必要があります。みんなに届けたいメッセージは誰にも届かない、というのもよく言われることです。
具体的な「誰か」が想定されていると、SEOやPRなど届け方の部分も、コンテンツを企画するときからプランニングすることができます。
2)その相手にどんな行動をしてほしいのか
リーチして終わりではないところが、広告と大きく違うところです。コンテンツを受け取った人に次に何をしてほしいのか。どう行動してほしいのか。想定してプランニングする必要があります。ただし、送り手が想定する行動が、無理に回遊してもらうなど送り手都合にならないようにすることがポイントです。
3)そのコンテンツ、その行動によるユーザーのベネフィットは何か
ユーザーのライフスタイルや興味関心のあるテーマに入り込んでコンテンツをつくるだけではなかなか振り向いてはもらえません。また行動を起こしてもらうためにプレゼントしているばかりでは、中長期的なリレーションを築くのが難しくなるという課題が出てきます。
そのコンテンツを見ることで、その行動を起こすことで、ユーザーはどんなベネフィットを得るのか。機能的な側面だけでなく、情緒的な側面も含めて常に考えていく必要があります。
これらがうまくいっているかどうか、は実際に運用に入ったときに分かってくるように感じています。きちんと「相手」を見て始めたコンテンツマーケティングは、運用のステージに入ったとき毎回の分析・PDCA会議が非常に有効なものになります。なぜなら、出てきた数字から狙っているターゲットの心理を読み解こうとする会議になるからです。
一方、相手を見極めずに始めたコンテンツマーケティングは大概、分析・PDCAの会議が数字の報告と数字を上げるための施策のディスカッションになりがちです。
短期的な成果はどちらも同じように上がるかもしれません。が、中長期的な成果にはきっと差が出てくることでしょう。
さて今、皆さまのコンテンツマーケティングはどちらに向かっているでしょうか?