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社歌で経営課題を解決!「社歌コンテスト」No.19

“全社員参加の社歌動画” ゲットイットが社歌コンテストで得たもの

2025/05/09

社歌は企業のパーパスアクションを駆動させる」ということを可視化し続け、毎年多くの感動を生み出してきた「社歌コンテスト」。

NIKKEI社歌コンテスト公式サイト

ゲットイットは、2025大会で中小企業事業所部門の最優秀賞、水谷靖賞を受賞し、総合2位にも輝きました。全社員が参加する社歌動画は、テレビやSNSでも話題となっています。社歌コンテスト事務局を務める電通のプランナー江口露美が、ゲットイット代表の廣田優輝氏とプロジェクト責任者の藤澤哲平氏に、今回の取り組みの裏側を聞きました。

ゲットイット
(右から)ゲットイット 藤澤哲平氏、廣田優輝代表、電通 江口露美氏
【NIKKEI社歌コンテスト】
日本経済新聞社主催、JOYSOUNDが特別協力する、企業・団体のパーパスを、歌と動画を通して体感できる社歌動画No.1決定戦。ウェブの一般投票や審査員審査を経て、決勝進出12社を決定。決勝はリアルイベントのプレゼンテーションと動画上映で順位を決める。単体企業の正式な社歌はもちろん、企業の非公式ソング、商店街や連合企業の応援歌、学校や自治体のテーマソング等あらゆる経済活動に関わる方々の思いが詰まった楽曲を「社歌」と捉えている。
 

パーパスやクレドに込めた想いを、心に届ける手段としての社歌

江口:本日はよろしくお願いします!まずは改めて、ゲットイットさんの会社概要について教えていただけますか?

廣田:私たちはエンタープライズ企業向けハードウェアのリユース・リサイクル事業を中心に、IT機器に関する販売・保守・レンタル・修理・買取り・データ消去など、あらゆる周辺業務を展開している企業です。リユースを通じてサーバー・ネットワーク機器などのハードウェアを持続可能なサイクルにしていくことで、循環型経済への移行に貢献することを目指しています。現在は、東京・築地の本社と森下、勝どきの倉庫に約130名の従業員を擁し、システムインテグレーターや通信事業者を中心に、1800社以上と取引があります。

江口:IT機器の中でも、かなり専門性の高い領域を手がけられているんですね。そもそも、リユース事業を始めたきっかけは何だったのでしょう?

廣田:もともと私は学生時代からパソコンが好きで、秋葉原のショップに通うようになったのがきっかけです。よく入り浸っていたお店から「一緒に働いてみないか」と声をかけてもらい、店員として働くようになったんです。そこでIT機器の中古業を営んでいる人と仲良くなり、中古販売の奥深い世界に魅力を感じるようになりました。当時、サーバーや通信機器の中古品は“ジャンク品”として安く扱われていましたが、そこにビジネスチャンスがあると確信し、2001年、学生のうちにゲットイットを立ち上げました。

ゲットイット 廣田優輝 代表
ゲットイット 廣田優輝 代表

江口:学生起業だったんですね!環境への配慮という観点からも、非常に価値の高い取り組みですよね。今の時代にぴったりな事業だと思いました。

廣田:ありがとうございます。私たちはこの取り組みを「Sustainable Computing(サステナブルコンピューティング)」と名付けて、お客様の課題に合わせてリユースの価値を訴求しています。たとえば会計部門には資産効率の向上、CSR部門には環境負荷低減、経営層には統合報告書への活用など、それぞれの視点でのメリットを伝えながら、着実に信頼を積み重ねてきました。

江口:「リユース」という言葉から、単にモノを再利用するだけではなく、人びとの暮らしや企業の未来を支える営みなんだという印象を受けました。そんなゲットイットさんが社歌をつくろうと思われたのは、どういった背景があったのでしょう?

廣田:一言で言えば、「会社の目指す方向をみんなで再確認するため」です。当社は2019年にパーパスやクレドを策定し、それらの指針に基づいて日々の業務を行っているのですが、それを“もっと心に届くかたち”にしたかった。社歌は、まさにそれを実現する手段だったんです。

ゲットイットのパーパス
ゲットイットのパーパス
ゲットイットのクレド
ゲットイットのクレド

江口:たしかに、ゲットイットさんのクレドを拝見すると、非常にまっすぐな社風が伝わってきます。そして、「ひとがカラフルに輝く場をつくる」というパーパスからも、多様な個性が活きる場をつくろうという意志が感じられます。

廣田:現代って、どうしても「嫌われたくない」「何か言われたくない」と思って、自分らしさを抑え込んでしまう風潮がありますよね。でも、人にはそれぞれ得意不得意があって当然で、それで100点だと私たちは考えています。違いを受け入れ、補い合うことで、一人ではたどり着けない景色や感動に出会えるはず。そんなメッセージを、社外の方にも感じていただけたとしたら、本当にうれしいです。

そしてクレドは、全員参加型の経営を実現するための行動指針であり、大切な価値観です。実際に、当社に入社してくる方の多くは、IT機器のリユース事業に興味があったというよりも、「この会社、なんだか面白そう」「ここで働いたら、人生が変わるかもしれない」と感じて入ってきてくれています。だからこそ、自分たちの言葉で、自分たちらしい表現で、当社の想いや価値観をかたちにしようと、社員のみんなと何度もキャッチボールをしながらつくりました。

社歌楽曲・動画制作から投票呼びかけまで。みんなのアイデアをかたちにしていったプロジェクト

江口:今回の社歌、皆さんの熱量がすごく伝わってきました。改めて、この社歌に込めた想いを聞かせていただけますか?

廣田:はい。根底に込めた想いは、「誰もがいきいきと仕事をする社会の実現」です。それは私たちのクレドに深く結び付いています。クレドに込められた価値観や行動指針を、もっと直感的に、心に届くかたちで表現したい――そんな想いで、今回の社歌を“道標”として位置づけました。

江口:「クレドを体現する道標が社歌である」という表現、とても腑に落ちました。実際、社歌動画や決勝戦のステージからも、まさにクレドそのものを感じました。社歌コンテストには、以前もエントリーされていますよね?

藤澤:はい。2020年、コロナ禍の真っ只中に初めて応募しました。当時も楽曲自体は良かったと思うんですが、参加していたのが一部の社員だけだったので、あまり全社的な広がりには発展しなかったんです。その反省を活かして、今回は「全社員が参加する」ことを大きなテーマに、約1年かけて取り組みました。

江口:なるほど。今回の作品は社員の皆さんがすごく良い表情をされていて、誰一人“やらされてる感”がないのが印象的でした。プロジェクトリーダーの藤澤さんは、社員を熱量高く巻き込むために、どんな工夫をされたのでしょう?

藤澤:私自身、あまり表立って率先していくタイプではないですし、何よりも強制はしたくなかったんです。でも、「ちょっとやってみてもいいかな」と思っている人たちの背中をそっと押すような声かけを心がけました。

ゲットイット 藤澤哲平氏
ゲットイット 藤澤哲平氏

江口:社員の皆さんの熱量が高まった瞬間と言いますか、一体感が生まれたきっかけはありますか?

藤澤:社歌コンテストの投票期間中に社内のコミュニケーションツールを使って毎日投票を呼びかけたのですが、その際にプロジェクトメンバーだけでなく楽曲の参加メンバーにも「毎日1人ずつ社内にメッセージを発信してくれませんか」とお願いしたんです。参加者が毎日それぞれの想いやエピソードを語りながら“投票してね”と呼びかけていくうちに、それを読んだ他の社員が、だんだん自分ごととして捉えるようになっていった感覚がありました。その“つぶやきリレー”が始まったあたりから社内の熱量が一気に高まった気がします。

江口:本当に、動画からも“みんなが主役感”が伝わってきました。部署や立場に関係なく、さまざまな人たちが輝いていて。まさに、ゲットイットさんがパーパスに掲げられている「ひとがカラフルに輝く場をつくる」が映像にも表れていましたよね。

電通 江口露美氏
電通 江口露美氏

廣田:楽曲制作についても、最初は僕がバンド形式で作曲することを考えていたんですが、作詞を担当してくれた社員から「もっと多くの人を巻き込みたい」と提案があって。そこからディスカッションしていくうちに、ボーカルが10人以上に増え、歌詞も一部英語に変わり、ラップも入れて、楽器も和太鼓まで入ってきて……。最終的には120トラックを超える音源になりました。

江口:すごい……!そのスケール感が、社歌の枠を超えていますね。

藤澤:レコーディングも本格的にやりましたし、動画の演出もメンバーで話し合って決めました。全員が同じ“かたち”で参加する必要はないけれど、「自分も関わった」と思えるポイントを持てることが大切だと感じています。

廣田:僕が思い描いているイメージにこだわりすぎていたら、まったく違う作品になっていたと思うんです。正直に言うと、はじめに「ボーカルを増やしたい」と言われた時は、どのような仕上がりになるのか全然想像できませんでした。これがビジネスだったら、自分の意見を押し通すことだってできるかもしれません。でも、あえて自分のイメージを手放したことで、みんなが関わりやすくなったし、結果的にすごく良いものができました。これはビジネスにも通じることかもしれないと、僕自身もすごく学びになりましたね。

社員に一体感が生まれた社歌コンテストでの取り組み

江口:社外の私まで力が湧いてくるような素晴らしい社歌動画ですが、決勝当日のパフォーマンスで披露されたアカペラも同じぐらい素敵でした。1番目にゲットイットさんが登場したことで一気に明るくなったのを覚えています。あの演出はどのように決められたのですか?

藤澤:実は最初、廣田が一人でプレゼンする案もあったんですが、「できるだけ多くのメンバーに、あのステージの景色を見てほしい」という思いがあって。会社員があれほど大きなステージに立つ機会ってそうそうないじゃないですか。だからこそ、みんなの記憶に残る時間にしたかったんです。

江口:みんなでしっかり歌って盛り上げながら、ここぞという大事な場面で社長が熱い想いを語るという演出がすごく自然でした。歌詞の中にある「一人でたどり着ける場所は想定内だ。一緒に新しい景色を見に行こう」というフレーズが、まさにそのまま実現されたステージでした。アカペラもけっこう練習されたんですよね?

ゲットイット
決勝戦プレゼン時のアカペラの様子

藤澤:はい、決勝進出が決まってから、登壇メンバーで何回もボイストレーニングを受けました。動画撮影時にもお世話になったボイストレーナーのMISUMIさんにお願いして、歌唱指導をしていただきました。練習は社内の会議室で行い、業務の一環として就業時間内に取り組みました。

江口:そこまでしっかり準備されていたんですね!当日の会場でも、発声練習などを入念にされている様子が印象的でした。

廣田:当日は、社員だけでなく家族や取引先の方々も応援に駆けつけてくれて、みんなでゲットイットのロゴ入りトレーナーを着て、横断幕や手旗を持って会場に入りました。月末の繁忙期にもかかわらず、約50人が立川の会場に集まったんです。社内では「自分が残るから、行ってきて!」という声が飛び交っていて、現場にいたメンバーたちからも「送り出してくれたチームに感謝している」という言葉がたくさん聞かれました。

江口:それはすごいチームワークですね。

ゲットイット
決勝戦前の準備の様子
ゲットイット
観客席もおそろいのロゴ入りトレーナーを着用し横断幕を準備

藤澤:社内の事業所でもパブリックビューイング形式で応援してくれました。登壇中の5分間は、みんな手を止めてモニターの前に集まり、「おめでとう!」「惜しかった!」と拍手と声が飛び交ったそうです。あの一体感を作れたことが、本当に何よりの財産になったと思っています。

江口:まさに、会社員の青春という感じですね。

廣田:本当にそうですね。社歌コンテストという舞台があったからこそ、全社でこんな体験ができました。惜しくも総合2位で大賞には届かなかったんですが……あの時は本当に悔しかった(笑)。

江口:スピーチでも開口一番「本当に悔しいです!」とおっしゃっていましたよね。でもその悔しさの中に、本気で取り組んだ誇りがにじんでいて、会場の社員さんたちもすごく晴れやかな表情だったのが印象的でした。

廣田:あの悔しさは久しぶりに味わいましたよ。たとえばビジネスのコンペで負けてもいろんな言い訳ができるじゃないですか。「本業じゃないから」とか、「この領域では取れなかったけれど、こっちの領域で取れればいいから」って。でも、社歌コンテストはシンプルに“2位は2位”。その現実を真正面から味わったことが、ある意味すごく良かったと思っています。ビジネスでも「2位は嫌だ。絶対1位を取ろう」と心の底から思いましたね。

ゲットイット

同じ歌を歌えることで、特別なつながりが生まれる

江口:決勝戦から少し時間が経ちましたが、社内外で何か反響はありましたか?

廣田:当日の日本経済新聞の朝刊に載せていただいたので、「見たよ!」と連絡をくれたお客様がけっこういましたし、先日お会いした銀行の担当の方にも「おめでとうございます!」って言われました。

江口:社外とのコミュニケーションのきっかけにもつながっているんですね。私も社歌を通じてゲットイットさんの“輪”に触れることができて、すごく勉強になりました。

藤澤:採用の面でも、これから応募してくれる人が増えそうですよね。もともとこの会社には音楽好きな人が多くて、僕自身もそこに惹かれて入社したので。

廣田:社歌って、昔は「ダサいもの」っていうイメージもあったかもしれません。でも実際にやってみると、すごくあたたかい絆を生むんですよね。たとえ会社を辞めてしまったとしても、校歌と同じで、離れていても同じ歌を口ずさめる人とは、特別なつながりが生まれる。今回の社歌も、そういう存在になってくれたらうれしいなと思っています。

江口:ゲットイットさんの社歌動画を見て、「うちもやってみようかな」と思った企業、たくさんあると思います。これから挑戦する企業へのメッセージがあればお願いします。

藤澤:やっぱり、楽しむことが一番だと思います。真剣に、でも肩肘張らずに、みんなで“面白がって”やる。それが自然と良いものにつながるのではないでしょうか。

江口:今後、この社歌を活用して何か新しい活動をされる予定はありますか?

廣田:まだ具体的な予定はありませんが、社内のクラブ活動と連携して発表の場をつくったり、どこかでまた演奏する機会があるといいなと思っています。それと……もし次やるなら絶対に1位を獲りたいですね(笑)。今はまだ創作意欲を充電中ですが、またみんなで渾身の新作をつくりたいです。

電通

江口:エクシングの水谷社長からも発表がありましたが、今年も決勝進出12社の社歌がJOYSOUNDで配信されるとのことで……私、もう何度も聴いていて、気づくと「欠点だって100点にするんだ~♪僕ら補い合って~♪」って、つい口ずさんじゃうんです。改めて、本当にいい歌ですよね。カラオケで歌えるのが今から楽しみです!

廣田:それはうれしいですね。配信されたら、ぜひ皆さんで歌っていただけたらと思います。

江口:はい、楽しみにしています!またこの社歌をきっかけに、たくさんの人にゲットイットさんの想いや魅力が届くといいですね。

NIKKEI社歌コンテスト公式サイト

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