地域企業に活力生む、社歌のチカラ 〜社歌コンテスト 応募中小企業座談会〜
2021/06/01
企業から社歌動画を募集し、ウェブ投票と特別審査員の審査で日本一を決めるNIKKEI全国社歌コンテスト(通称:社歌コン)。
日本経済新聞社、JOYSOUND(エクシング)、電通の3者が協力して企画・運営する本コンテスト第2回は、コロナ禍にもかかわらず応募数193社(前年比110%)、累計投票数68万票(前年比180%)を記録。全国各地の企業がそれぞれの想いを歌に乗せた社歌動画を届けてくれました。
今回は応募企業3社による座談会を実施。保研オフィス(大阪府堺市)代表取締役の田野雅樹氏、エイブル(福島県双葉郡)代表取締役の佐藤順英氏、ぽかぽか保育園(東京都八王子市)園長の加藤菜穂氏に、地域企業が社歌コンテストに参加することの意義や効果について、電通・森本紘平がインタビューを行いました。
3社三様の社歌に込めた想い
森本:今回は地域に根ざした活動をされている3社の皆さんに、社歌の力や社歌コンテスト参加をきっかけに生まれた変化などについてお聞きしたいと思います。はじめに、社歌が生まれた背景や社歌コンテスト参加の経緯をそれぞれ教えていただけますか?
田野:保険代理店の仕事は俗人的になりがちなので、当社では“チーム保研オフィス”としてのサービスを確立するために「まるごと安心」というモットーを掲げています。これを社長が社員に向けて説明するよりも、歌で伝えたほうが楽しく浸透すると思って作ったのが、第1回社歌コンテストに応募した社歌です。その後、創業20周年を記念して当社の想いを改めて歌にしたのが、今回の応募曲である「大切なもの」です。
森本:やさしい曲調が印象的ですよね。どのような想いを込めて作られたのでしょうか?
田野:私たちはお客様の“万が一”に備えたサポートを提供していますが、お客様にとって一番大切なのは、万が一のことが起きずに平穏な日常を過ごせること。大切な人へ大切な想いを伝え、大切なものを大切にする人生を歩んでいただきたいという気持ちを込めて、大阪府大阪狭山市出身のシンガーソングライター・西浦秀樹さんに作詞・作曲をお願いしました。
森本:プロの方が作詞・作曲をされているのですね。動画も作り込まれていて、とても感動しました。ぽかぽか保育園もプロの方が曲を作っているのですよね?
加藤:私たちの場合は社歌=園歌になるのですが、これは保育士や職員から集めた言葉を、園児の保護者でプロのトランペット奏者の方に曲にまとめてもらったものです。すごく良いものができたので、どこかで披露する場を作れないかと検索してたどり着いたのが社歌コンテストでした。
森本:事務局に「社歌じゃなくて園歌でも良いですか?」と、問い合わせをしてくださいましたね。
加藤:はい(笑)。園歌でも大丈夫とお返事を頂いたので、そこから急ピッチで曲のアレンジやダンスを考えて、八王子市民会館(J:COMホール八王子)で撮影を行いました。
田野:園長先生のラップのインパクトが強烈で、僕もあれぐらいやりたいと刺激を受けました(笑)。
加藤:ありがとうございます。コロナ禍でお遊戯会などのイベントができず、息の詰まるような自粛生活が続く中、少しでも保育業界を楽しく前向きにしたいという想いで作りました。
森本:皆さんが本当に楽しんでいるのが伝わってきました。エイブルの佐藤さんはいかがですか?
佐藤:当社の社歌は20年前に作ったものです。当時は会社経営でいろいろと悩むことも多かったのですが、人間の原点に立ち返って「夢」「希望」「愛」を胸に抱き、みんなで“理想の島”を目指そうと、そんな想いを込めて私が作詞しました。その後、東日本大震災の苦難も何とか乗り越えられたのは、社歌で一致団結できたからだと思っています。
加藤:動画では社員の皆さんで歌っているシーンが多く、普段から歌い慣れているように感じました。
佐藤:終業時のチャイム代わりに毎日流していますし、新入社員向けの研修でも歌詞の意味を説明しているので、体に染み付いているのかもしれません(笑)。懇親会でも毎回みんなで歌っているのですが、コロナ禍でずっと懇親会を開催できていなかったので、今回の動画制作は久々に社員が社歌を歌える貴重な機会となりました。
コロナ禍の動画制作で生まれた一体感
森本:歌はもちろん、動画にも3社三様の個性が表れていると思うのですが、動画制作はいかがでしたか?
佐藤:やはり仕事終わりに毎日聞いている歌なので、知らない社員は一人もいないですし、全員がすぐに歌えることに改めて感動しました。コロナ禍でなかなか一体感を作るイベントなどができていなかったので、みんなで一つになれたことがうれしかったです。
加藤:私たちはアレンジやダンスが完成した1週間後に撮影という強行スケジュールだったので、各自で練習を行い、全員で合わせたのは本番当日が初めてでした。スタッフ全員を出演させたかったので、当日は園児も会場に連れてきて控え室で寝かしつけて……(笑)。本番中だけ運営会社のスタッフに子守をお願いして撮影に臨みました。
森本:ハードスケジュールですね。スタッフの皆さんの反応はどうでした?
加藤:保育園では派手にお化粧をしたり着飾ったりすることがないので、ヒールに履き替えて“映える”メイクをすることを楽しんでいました。そして、限られた時間での動画制作だったので、チームワークの素晴らしさや一人一人の底力を改めてお互いに認識できました。子どもを寝かしつけている様子も撮ったので、スタッフの思い出にメイキング映像も作りたいと思っています。
田野:メイキング、いいですね!私たちも丸1日空けて全社員で撮影に臨んだのですが、私も含めて表情が良くない人はカットしたので、メイキングを作りたいと思いました。
森本:社長がカットされるって斬新ですね。
田野:事務所で真剣に仕事をしているシーンに出演したのですが、顔がシリアス過ぎてムードをぶち壊すということで、お蔵入りとなりました(笑)。
社歌をきっかけに、採用や地域活動が活性化
森本:社歌コンテストに参加したことで、社内外にどのような変化が生まれましたか?
加藤:スタッフ同士の結束力やチームワークが高まったことに加え、私たちが大切にしているものを歌で表現したことで、保育方針もさらに磨かれたように思います。また副産物として、社歌動画を見て採用に応募してくださった方が何名かいました。
森本:すごいですね。実際に採用につながったのですか?
加藤:はい。保育業界は相変わらず採用難が続いていますが、その中で数名を採用できたことは社歌の力が大きいと思っています。
田野:当社も採用に効果が出てきています。動画を見て応募してくださる方がいますし、私たちの社風に合った人材の応募が増えているように感じます。
森本:確かに、資料を見せながら会社のことを長々と説明するよりも、会社の理念や想いが凝縮された社歌を聞いてもらったほうが一発で伝わるものもありますよね。日経と「社歌で人材不足や採用難の解決にも貢献したい」と常々話しているので、このように効果が表れているとお聞きするのはうれしいです。社外の反響や効果はいかがでしょうか?
佐藤:社外に対しても、企業理念や社風を伝える力がありますよね。私たちも取引先や金融機関の方々との会議で、社歌を流して言葉に込められた意味を説明することがあります。当社がどんな想いを持って活動している企業なのか、理解していただくのにこれほど最適なツールはありません。
田野:社歌コンテストに出場してから、保険会社やお客様に社歌を聞いていただく機会が一気に増えました。お客様に訪問した際、「あのフレーズ良いよね。ちょっと歌ってよ」「次の曲はどうするの?」といった会話が生まれることもあります。
加藤:近隣企業や市役所、保護者の方々に私たちがやっていることを知っていただくきっかけになりました。また、保育園のYouTubeチャンネル登録者数が増加し、動画再生数も急速に伸びています。以前はパソコンの電源ボタンすら分からないスタッフもいましたが、今では動画編集や画像加工にチャレンジするなど、スタッフのITリテラシーも急成長しています(笑)。
日経に社名が掲載されることは、地域企業の誇り
森本:社歌コンテストの目的の一つに、「企業同士がつながる場づくり」という大きなテーマがあります。企業がお互いの本質を知ることで、これまでにない新しいつながりが生まれる。その結果ビジネスが発展し、ひいては日本経済の活性化に貢献したいという想いで企画しています。
佐藤:今回、皆さんとディスカッションができて、非常に大きなパワーと勇気をもらいました。社歌の価値を実感したので、この財産をもっと企業活動に生かしていきたいと思いました。
田野:中小企業にとって、社歌コンテストはメッセージを広く発信できる重要な場だと感じています。私たちだけでなく、地域企業にも勧めて活性化していきたいですね。次回は決勝に残れるように、社歌一筋で頑張ります(笑)。
森本:いや、本業も頑張ってください!(笑)
田野:素早い突っ込みありがとうございます。さすが関西人!
加藤:社歌コンテストを通して、いろいろな企業の想いを知ることができたのは大きな刺激になりました。会社と保育園でカタチは違いますが、本質的に大切なものは同じだと思うんです。私たちも皆さんに倣って、園歌を大切に育てていきたいと思いました。
森本:皆さん、ありがとうございます。最後に、地域企業が社歌コンテストに出場する意義を改めて教えていただけますか?
田野:今回、日本経済新聞で応募企業全社を掲載していただきましたが、われわれ中小企業にとっては日経に社名が載るだけでも大きな意義があります。うちの社員もみんな大喜びして発行当日を楽しみにしていました。社内外に自社の想いを浸透させる貴重な機会ですので、今後もぜひ参加したいと考えています。
佐藤:われわれも日経に社名を掲載していただくことは自社の誇りです。日々頑張っている社員の励みにもなったので、とても感謝しています。
加藤:社歌コンテストに出場したことで、保育従事者の生き生きとした姿にスポットを当てられたことは大変意義のあることだと思っています。保育士の学校を卒業しても保育業界に就職しない人も少なくないのが現状なので、今後も保育士が自信と誇りを持って働く姿、保育の楽しさを発信することで、少しでも業界の活性化に貢献していけたらと思っています。
森本:皆さんの言葉は、企画・運営する私たちにとっても大きな励みになります。次回のコンテストも、ぜひ一緒に盛り上げていけたらうれしいです。今後ともよろしくお願いします!