社歌で経営課題を解決!「社歌コンテスト」No.16
社歌コンテスト上位2社に聞く、企業課題にエンタメを活用する意義とは?
2024/07/23
2024年1月24日、社歌日本一を決める「NIKKEI社歌コンテスト2024」(以下、社歌コンテスト)決勝戦・表彰式が開催され、応募総数120作品の中から関西地質調査業協会の「夢掘るボーリング」が最優秀賞、ノジマの「Present」が第2位に輝きました。
受賞を記念し、関西地質調査業協会の田中謙次氏、ノジマの村井清崇氏に特別インタビューを実施。社歌動画を作った経緯や受賞後の反響・変化、そして企業の課題解決にエンターテインメントを活用する意義について、社歌コンテスト事務局を代表して電通の森本紘平がお聞きしました。
【NIKKEI社歌コンテスト】
日本経済新聞社主催、JOYSOUNDが特別協力する、企業・団体の社内外コミュニケーション活性化を企図した社歌動画No.1決定戦。ウェブの一般投票や審査員審査を経て、決勝進出12社を決定。決勝はリアルイベントのプレゼンテーションと動画上映で順位を決める。単体企業の正式な社歌はもちろん、企業の非公式ソング、商店街や連合企業の応援歌、学校や自治体のテーマソング等あらゆる経済活動に関わる方々の思いが詰まった楽曲を「社歌」と捉えている。
企業PRの絶好の機会に加え、「テーマソングを歌いたい」という夢をかなえるチャンスに
森本:最優秀賞と第2位受賞、おめでとうございます。早速ですが、お二人に社歌が生まれた経緯からお聞きしたいと思います。まずはノジマの村井さん、いかがでしょうか?
村井:経緯をたどると、私がノジマに就職する前までさかのぼるのですが、私は2003年からtheSoulというバンドで音楽活動をしておりまして、2006年にはメジャーデビューもしました。ただ、ある時に私が体調を壊してしまい、一度生活を立て直そうと思っていたタイミングで、求人雑誌で見つけたのがノジマの店舗スタッフ募集の記事でした。
そんなご縁もあって2011年からノジマで働くことになったのですが、就職する時にバンドリーダーの河野(健太郎氏)が「おめでとう。いつかノジマのテーマソングを歌えたらいいよね」と言ってくれたんです。その後、私はノジマの社員として働きながらバンド活動を続ける中で、リーダーの言葉はずっと心の片隅に残っていました。
そして昨年、たまたまテレビで社歌コンテストの存在を知った時に「これだ!」と、ひらめいたんです。長年思い描いていた夢がかなうチャンスであることはもちろん、こうしてメディアで大々的に取り上げられることで会社のブランディングやパブリシティにつながる可能性もあります。早速、会社に提案したところ、これは面白そうだと前向きに捉えてもらえて、作詞作曲をリーダー河野(健太郎氏)が担当し、theSoulのメンバーで社歌を作ることになりました。
森本:本当に偶然が重なって社歌にたどり着いたんですね。楽曲にはどのような思いを込めたのでしょうか?
村井:もともと当社には「一番星」というテーマソングがあったのですが、これはどちらかといえば従業員に会社の理念を伝えるためのメッセージソングでした。今回は従業員だけではなく、お客様にもノジマの理念を感じていただきたいという願いを込めて楽曲制作をしました。
森本:1番の歌詞で「家族が増えるんです」と冷蔵庫を買いに来たお客さんと出会い、2番の歌詞で「スヤスヤ寝ている赤ちゃんと会いに来てくれました」とお客さんとの再会を喜ぶ。そのシチュエーションが目に浮かんできて、グッときてしまいました。
村井:店舗で接客をしていると、本当にああいうシチュエーションに出会う瞬間があるんですよ。私たちはメーカー販売員がいない唯一の家電専門店として、お客様にぴったりな商品をコンサルティングすることを常日頃から大切にしています。だからこそ、お客様に満足のいく買い物をしていただき、またお店に足を運んでくださるのがすごくうれしいんですよね。その感謝の気持ちをお客様にお伝えし、従業員もそんな瞬間を思い出すきっかけになることを願って歌詞にその思いを込めました。
田中:私も会場でじっくり聴かせていただきましたが、「ノジマ」を繰り返すサビがとてもキャッチーで、メッセージが頭にスッと入ってくる良い曲だなと思いました。映像もリアリティがあって良いですよね。
村井:ありがとうございます。社歌動画は実際にスタッフが接客している映像を全国各地から集めて作りました。
一語一句に妥協のない、思いを詰め込んだ歌詞制作
森本:関西地質調査業協会さんはどのような経緯で社歌を作ったのでしょうか?
田中:最初は採用動画を作ることが目的で、楽曲を作ることは計画していませんでした。ただ、コンペを経て制作をお願いすることになった地元の制作会社ガハハさんは、社長がミュージシャンでもあることからオリジナル楽曲の制作を得意としていたのです。いくつかアイデアをいただいた中で、やっぱり音楽が一番いいねという話になりました。
森本:楽曲のクオリティの高さはもちろん、メッセージが伝わってくる歌詞にも感動しました。
田中:音楽はプロの方にお任せだったのですが、歌詞についてはかなり白熱した議論を何度も交わしましたよ(笑)。素人の意見をまとめるのは大変だったと思うのですが、私たちも思いを伝えたい、やるなら良いものを作りたいというこだわりが強かったので、構想から1年ぐらいかけて制作しました。
森本:「稼ぎはいいよ 600万とか」という歌詞は、審査員のあいだでも話題になっていましたよね(笑)。
村井:あれはインパクトが大きかったですよね。今でもハッキリと覚えていますから(笑)。
田中:ありがとうございます(笑)。実際は、もっと稼いでいる人もいればそうでない人もいるのですが、「やっぱり600万ぐらいはもらわなアカンよな」という思いも込めてラフ段階で入れたものが、結局最後まで残りました。あくまでも真剣なトーンでありながら、関西らしいセンスも入れたいと話していたので、そこに注目していただけてうれしいです。
でも不思議なものでして、「その仕事が キミの仕事が 誰かのためになっているんだ」というフレーズがあって、私は最初、あんまりしっくりこなかったんですよ。ある意味、仕事が誰かの役に立つのは当たり前の話じゃないですか?でも、何回も繰り返し歌っているうちに「あぁ、確かに俺たちは誰かのために仕事をしているんだよな」という実感が湧いてきて、自分の言葉になっていった感覚があるのです。
森本:音楽にはそういう力がありますよね。社歌動画の後半、皆さんが心を込めて歌っているシーンも非常に印象的でした。動画を作ったあとに社歌コンテストに応募されたのですか?
田中:そうです。私たちは社歌コンテストのことを知らなかったのですが、ガハハの社長が見つけてきて応募したんです(笑)。事後報告で「エントリーしておきました」と言われたのですが、「まぁ、どうせ通らないからええよ」って話していたのです。まさか決勝に行けるとは思っていませんでしたから。
普段は交わることがない企業と、熱量の高い交流が生まれる
森本:決勝戦の雰囲気はいかがでしたか?
村井:最高でしたね。私は「大人の甲子園」のような感覚で楽しんでいました。
田中:決勝に出場する社歌動画は事前に全て拝見していたのですが、大きい会場で聴くとやっぱり迫力が違いますよね。発表が終わるたびに、メンバーと「これ、すごいなー!」と話していて、順位を競う大会であることを忘れてしまうぐらい純粋に楽しんでいました。
森本:他社の発表をみんなで応援するような、ポジティブな一体感がありましたよね。ノジマさんは、応援団の方々の合唱がすごかったですね。
村井:はい、ノジマのお客様でもあるtheSoulのファンの方々が来てくれました。事前に何度も歌を練習したり、グッズも用意してくださったりと、すごい熱量で応援してくださって、とても心強かったです。
田中:うちは、関東の地質調査業協会と全国の連合会が応援に駆けつけてくれました。関西と関東は、一緒に活動する機会はあまりなかったので、大勢で応援に来てくれたのは本当にうれしかったですよ。おかげさまで、打ち上げも大盛り上がりで、役職や年齢も関係なく、まるで長年の付き合いがあるかのように意気投合できました。社歌コンテストが全国の協会が団結するきっかけとなったのです。
森本:決勝を終えて、社内外からの反響や変化を感じることはありますか?
村井:決勝戦は会場に足を運べなかった従業員も公式YouTubeの生配信を見ながら応援してくれて、結果報告を社内報に掲載してもらったこともあって、多くの従業員に社歌を聴いてもらうことができました。私は仕事中に社員からの電話に出ることが多いのですが、第一声で「社歌コンテスト、おめでとうございます」「すごかったね」と声をかけてもらうことも多々ありました。
それから、決勝に出場していた蒲郡信用金庫さんと会場で仲良くなり、オリジナルキャラクターの「がまちゃん」のぬいぐるみをプレゼントしてくださったんです。今日もポケットに入れてきたんですけど。
森本:ずっと気になっていました(笑)。
村井:後日、theSoulのInstagramライブ配信で決勝のご報告と一緒に、がまちゃんをいただいたエピソードなどをお話ししたのですが、なんと蒲郡信用金庫の方もそのライブ配信を見てくださっていて、そこから緩やかな交流が始まりました。そのように、普段はご一緒する機会がない企業同士のつながりが生まれるのも、社歌コンテストの良いところだと思います。
森本:すてきなエピソードですね。まさかライブ配信まで見てくださっているとは思わないですよね。
村井:うれしいですよ。やっぱり決勝を共にした仲間といいますか、順位を決める大会ではありますけれど、同じような思いを持って決勝まで頑張ってきたからこそ、熱量の高い交流が生まれやすいのかもしれませんね。
協会を超えて広がる共感の輪。社歌動画きっかけの採用も増加
森本:関西地質調査業協会さんはいかがですか?
田中:もともと、採用強化の一環として社歌動画を作ったのですが、関西や関東だけでなく、全国各地の地質調査業協会からの反響も非常に大きく、結果的に全国の仲間たちを応援することにもつながりました。また、行政の方々からも好評をいただき、国土交通省のホームページにリンクを張っていただくなど、協会だけにとどまらない共感の輪が広がっていることを感じます。
森本:分かります。同じ職種の方々が勇気付けられることはもちろん、もっと言うと業界を超えて私たちにも「なんのために働くのか」を深く考えるきっかけを与えてくれるようなパワーを感じました。
田中:そして、当初の目的だった採用にも効果が表れています。われわれは技術サービス業なのですが、広い意味で捉えると建設業界に属しています。高卒が建設業に就職後、3年以内に40%以上が離職しているのです。つまり、未来を担う若手の約5人に2人が3年で辞めてしまうのです。その40%を建設業から離さず、地質調査の仕事にお誘いしようというのが今回のコンセプトでした。「せっかく3年学んだのだから、この業界に戻っておいでよ。マニアックな仕事だけど、人の役に立てる仕事だよ。600万払ってくれる会社もあるよ」と。
そして、実際に社歌動画がきっかけでこの業界に入ってきてくれた人は、私が知っているだけでも2人います。1人は我が社に入社しました。「なんでボーリングに興味を持ったのですか?」と聞くと「YouTubeを見て、かっこいいなぁと思いました。確か関西なんとかってやつなんですけど」と言っていて、「それ、俺やないか」と(笑)。おそらく、私が知らないだけでそういう人はもっといると思うのです。私たちの誇りや仕事の魅力を込めた動画に反応して入ってきてくれた人がいることは、大きな成果の一つですね。
森本:確かに、仕事の本質を捉えた動画だからこそ、それがきっかけで入社された方は離職率も低そうですよね。
企業の本質と思いを、音に乗せることで広く、深く伝えられる
森本:社歌コンテストを第1回から支え続けてくださっているエクシングさんのご厚意により、今回も受賞企業の社歌がJOYSOUNDのカラオケで配信されることが決定しました。
田中:うれしいですね。協会の仲間たちもみんな喜ぶと思います。
村井:自分たちの曲だけでなく、関西地質調査業協会や蒲郡信用金庫の曲も歌いたいですよね。theSoulでライブ配信しようかな(笑)。
森本:楽しそうですね。最後に社歌を今後どのように活用していきたいか、展望があれば教えてください。
田中:実は私たちはすでに2作目の動画を作ったのですが、このように継続的に活動を発展させていくことで協会の認知を高め、この業界に入ってきてくれる人を増やすことが重要だと考えています。地質調査という仕事はあまり世間から注目を浴びることはありませんが、川や道路など日常のインフラを守るために欠かせない仕事ですし、災害が起きた時にはいち早く現場に駆けつけ、1日でも早い復旧のために尽力しています。
そのように、誰かの幸せを支える仕事であるという本質を伝えるのに最適な手段なのが、社歌であり動画であると、この大会を通して気が付くことができました。今後もこういった手段を活用しながら、私たちの仕事をもっともっと多くの人たちに届けていきたいと思います。
村井:先ほども申し上げたとおり、私たちはメーカー販売員がいない家電専門店として、お客様にぴったりな商品を見つけ出してご紹介することを大切にしています。そのような思いを言葉だけでなく音楽と融合して発信するからこそ、お客様や従業員に対してより広く、深くメッセージを届けることができると思っています。今後は店舗でのインストアライブを企画したり、YouTube等のSNSやアプリなどのプラットフォームを通じて発信するなど、この曲をもっと多くの方々に楽しんでいただけるような取り組みにどんどんチャレンジしていきたいです。
森本:今後の展開を楽しみにしています。改めて、受賞おめでとうございます!