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社歌で経営課題を解決!「社歌コンテスト」No.11

社歌なんて創っても、ビジネスは好転します。

2023/01/13

2016年から継続している社歌コンテスト(以下、社歌コン)を通して出会った企業・人・知見を紹介する本連載。今回は、「今どき社歌なんて作って意味あるの?」「社歌コンって楽しそうだけど、ビジネスの役に立つの!?」といった疑問に答える形で、発起人である私が7年間で体感したことをまとめたいと思います。社歌というコンテンツをソリューションプロジェクトとして見てきた結論、「社歌は、ビジネスを好転させる起爆剤となりえます」。

【社歌コンテスト】
企業の社内外コミュニケーション活性化を企図した社歌動画日本一決定戦。ウェブの一般投票や審査員審査を経て、決勝進出12社を決定。決勝はリアルイベントのプレゼンテーションと動画上映で順位を決める。2016年にスタート。19年から日本経済新聞社主催のNIKKEI全国社歌コンテストとなる。
 
社歌01
社歌コンテスト2023決勝進出12団体(左)と2022決勝戦の様子

社歌コン立ち上げの背景は、甲子園で経験した魂が震える実体験

社歌コンテストを創ったきっかけは、高校時代の原体験に遡ります。智辯和歌山高校の野球部に所属していた私は在学中に3回、メンバーとして2回甲子園を経験しました。実は同校の野球応援は、他校が演奏しない独自の応援曲で構成されています。さらに、全校応援という学校を挙げての後押しや、智辯の「C」の人文字もファンの間では定番です。

智辯和歌山

この独自の応援(曲も含めたコンテンツ)があることで、選手、関係者、ファンが一体となり、恩師の髙嶋仁前監督は甲子園歴代最多勝利記録を樹立しました。私は、甲子園のグランド内で応援を受けた感動(モチベーション・雰囲気・パフォーマンスの向上等)と、グランド外で感じたブランディング効果(ファン醸成・認知・生徒募集・野球部入部希望者レベル向上等)は、ビジネスの世界にも通じると感じていました。

そこで、各企業が独自の応援コンテンツとも言える「社歌動画」を競う大会を創れば、日本経済にポジティブな循環が生まれるのではないかと考え、社歌コンテストを立ち上げたという経緯です。つまり、社歌コンテストは、「企業(団体)の社内外コミュニケーション活性化によるブランド強化」を目的としています。

社歌

1曲に集約するからこそ、大事な部分が見えてくる

社歌制作にはある程度工数がかかります。ただし、そもそも社歌を創るだけでもメリットがあります。それは、1曲という限られた情報量の中に「何を入れるのか?=会社として最も大切な部分は何なのか?」ということを整理できる点です。これができるだけでも、さまざまなビジネスタスクの優先順位が見えてくるはずです。社歌を制作した企業からも「企業の魅力が普通の会社案内ではなく、音楽で届けられるという点が楽しい」という声をよく耳にします。

社歌

社歌コン応募企業アンケートに見る、社歌の効果

では、ここからは実際に社歌コンテストの応募企業アンケート結果を見ていきたいと思います。

社歌

まず、「社歌の活用方法」です。青色が前回大会(2022年)、オレンジが今大会(2023年)の数字です。目立つところとしては、「動画にして企業PRに使う 75.5%」、「人材採用に活用 41.5%」となっています。全体的に2年連続で似た傾向になっていますが、やはり今の社歌というのは、内向きというよりも、どんどん社外に対して、自社情報を発信していくという狙いで活用されていることが読み取れます。

社歌

続いて、「社歌コンテスト参加の効果」ですが、「顧客や取引先とのコミュニケーション増加 62.8%」「社員のコミュニケーション増加 61.7%」。この他、「人材採用に効果有 9.6%」「社員の生産性向上 9.6%」となっています。企画理念通り、社内外コミュニケーション活性化のPRツールとして社歌動画が活用されていることが見て取れます。商品・サービスへの問い合わせや売上向上にもつながっているという回答もあるので、このあたりの数字がさらに伸びてくると、より面白くなってくるのではないかと感じます。

企業における現代社歌の役割

社歌

この図は、「社歌動画=PRツール」という点を、過去応募企業の方々から伺った声をもとに、領域ごとに分解・整理したものです。ひと言でPRといっても、「インナー」「販売促進」「人材採用」「IR」等の領域での効果が期待できます。また、こういった発信を続けていくことが、さらなる企業ブランディングの向上(イメージアップ)にもつながっていくと感じます。

また、社歌動画のメリットには、情報を届けたい対象者に対して、「重層的にアプローチできる」という点もあります。一般的な会社案内だけでは振り向いてもらえなかった対象者へも「琴線に触れる音楽」「情緒的な歌詞」「社風が伝わる動画」等の複数のアプローチが可能となり、それだけチャンスが広がります。野球に例えるなら1打席しかなかったものが3打席、4打席とチャンスが増えるようなイメージです。さらに、この社歌動画では社員の日常等、「非認知要素(外からは認知しづらいけど大切な要素)」も可視化しやすくなります。

中小企業こそメリット大!? 社歌コン応募企業の声に見た可能性

社歌

続いて応募企業のフリーコメントをいくつか見ていきたいと思います。「小さな会社でも夢が持てる事を教えてくれたコンテストでした」というコメントや、「中小企業にとって、大きな舞台で企業PRが出来ることに感謝しております」といった中小企業の方々からのポジティブなコメントが目立ちました。大企業も、もちろんなのですが、この社歌コンテストは、中小企業にこそメリットが大きい設計になっています。会社によっては、広告宣伝に予算が割きづらいケースもあると思いますが、社歌動画となると、ほとんど費用をかけずに創ることだって、やろうと思えばできます。

さらに、前回の記事(水谷隼と横澤夏子が『社歌コンテスト』参画! “企業エンターテインメント”を進化させる視点とは?)で谷澤伸幸さん(映画プロデューサー/監督)のコメントにもあった通り、今のSNS時代では、コンテンツとして面白ければ、プロが制作したものよりも話題になることだってありますし、世界中の人の目に触れる可能性だってあります。それを主催である日本経済新聞社の持つ各メディアが大々的に後押ししてくれるという点でも参加メリットは大きいように感じます。

社歌

続いて、「地域とのコミュニケーション促進」という文脈のコメントです。

コロナ禍の中、この取り組みを通じて企業として社会へ貢献する意味や、顧客、取引先への感謝、また、従業員や家族への感謝も多く感じることができ、企業としての未来への在り方を再構築出来る取り組みとなりました」という声や「地域の方々や取引先とコミュニケーションが充実し、話題が増えました」といったコメントを頂いています。このあたりの地域との連携という観点で言えば、やはり「音楽のチカラ」というものは大きいのではないでしょうか。いろんな人の気持ちがグッと近づく点は、音楽コンテンツの強みだと感じます。

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「他の会社さんの楽曲を楽しめました」という声も目立ちました。「どの会社様からも会社や社員の皆様の想いが伝わってくるような動画ばかりでした」「良い歌がたくさんありますね」「他の企業様の作品も素敵なものがたくさんあり楽しみながら参加できました」といったコメントです。

あと、面白かったのは、「参加~受賞社歌のコンピレーションアルバム等あったら面白いですね」というコメントや、「投票のお願いを社員にしたところ、普段は非協力的な社員も投票に協力どころか呼びかけまでしてくれて感動しております」といったものもありました。いろいろなドラマが生まれる場になっていることが読み解けます。こういった企業の日常が、ある意味コンテンツとして可視化されていくと、経済はもっと楽しく、盛り上がっていくのではないでしょうか。

社歌コンの本質的価値を考える

最後に、7年間の経験から、社歌コンテストの本質的価値は何かと考えたときに、もちろん上述の通り、各企業単位で見れば社内外コミュニケーション活性化というところではあるのですが、全体で見た時には、「本業+αの取り組みを主体的に行い、新たな価値を生む人の集まり」と言えると思います。これを換言すると、「各分野で情熱と行動力を持った人のコミュニティ」でもあると感じます。加えて、応募企業に限らず、主催の日本経済新聞社、特別協力のJOYSOUND(エクシング)、協賛のココペリをはじめ、運営側も情熱を持ったメンバーで構成されています。

このような企業規模や業種を超えて熱い人びとが集まる場はなかなかないと思いますので、この社歌コンテストをきっかけにさまざまな連携が生まれていくことを願っています。

社歌

社歌コンテスト2023の決勝戦はLIVE配信も実施されます。こんな楽しい会社があって、こういう人たちが働いているんだ!という発見から、楽曲クオリティの高さへの驚きもあると思います。ぜひ、笑いあり、涙ありの企業エンターテインメントをご覧いただけますと幸いです。

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