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社歌で経営課題を解決!「社歌コンテスト」No.18

1300人で大合唱!?エフピコ、社歌コンテスト優勝の裏側

2025/04/28

「社歌は企業のパーパスアクションを駆動させる」ということを可視化し続け、毎年多くの感動を生み出してきた「社歌コンテスト」。

NIKKEI社歌コンテスト公式サイト

エフピコは、2025大会で社歌大賞ならびに弓狩匡純氏による審査員賞を受賞。2019年に「心に残る音楽賞」を受賞して以来、5年ぶりの挑戦で頂点に輝きました。2016年に社歌コンテストを立ち上げた電通のコンテンツプランナー森本紘平が、エフピコ代表取締役会長の佐藤守正氏とプロジェクト事務局の倉本英人氏に、今回の取り組みについて聞きました。

エフピコ
(右から)エフピコ 倉本英人氏、佐藤守正代表、電通 森本紘平氏
【NIKKEI社歌コンテスト】
日本経済新聞社主催、JOYSOUNDが特別協力する、企業・団体のパーパスを、歌と動画を通して体感できる社歌動画No.1決定戦。ウェブの一般投票や審査員審査を経て、決勝進出12社を決定。決勝はリアルイベントのプレゼンテーションと動画上映で順位を決める。単体企業の正式な社歌はもちろん、企業の非公式ソング、商店街や連合企業の応援歌、学校や自治体のテーマソング等あらゆる経済活動に関わる方々の思いが詰まった楽曲を「社歌」と捉えている。
 

BARでの一言から誕生した社歌と、2019年の社歌コンテスト初挑戦

森本:社歌大賞の受賞、おめでとうございます!はじめに、御社についてご紹介いただけますか?

佐藤:エフピコは、食品トレーや弁当容器などを製造・販売している企業です。全国各地にグループ会社を持ち、製造から回収・再生まで一貫したリサイクルの仕組みを構築しています。中でも「トレーtoトレー」のリサイクル方式は、業界の先駆けとして注力してきた取り組みで、環境配慮や資源循環を大切にした経営を続けてきたことが、私たちの強みであり、誇りでもあります。

森本:ありがとうございます。そんな御社が社歌をつくることになったきっかけについて教えてください。

佐藤:実はこの社歌、ある都内のBARがきっかけなんです。そこは生演奏が楽しめる老舗で、私はもう25年くらい通っている常連なんですが、社長に就任した2009年に、お店のギタリスト2人に「社歌をつくってくれないか」とお願いしたんです。

なぜその2人に頼んだかというと、同じ店の常連に某大学のゴルフ部の監督さんがいまして、そのゴルフ部の歌を彼らがつくっていたんですね。私はその大学の出身でもゴルフ部でもないんですが、その歌が好きでよくお店で歌っていたんです。そこで、ぜひうちの社歌もつくってほしいと頼んだのが始まりでした。

森本:代表ご自身のつながりから社歌が誕生したんですね。

佐藤:完成した曲を聞いてみると、歌詞もメロディも素晴らしくて、男女問わず歌いやすいキーでつくられているところも気に入りました。その後、正式にエフピコの社歌として採用されたのは2018年のこと。スタジオを借りてフルコーラス版、カラオケ版、アコースティック版、オルゴール版と、さまざまなバージョンを収録したCDを制作し、全社に配布しました。

そうやって徐々に社歌が社内に浸透してきたある日、社員が社歌コンテストの存在を見つけてくれたんです。面白い取り組みだなと思って、締切直前だったのですが急ピッチで動画を撮影してなんとか応募に間に合いました。

森本:2019年の社歌コンテストで「心に残る音楽賞」を受賞されましたよね。当時の作品もとても印象に残っています。

佐藤:でも正直、悔しかったですね。当時は決勝戦がなく、投票で決まる仕組みだったのですが、終盤リードしていたのに、最後に富国生命保険さんに逆転されてしまって。

エフピコ 佐藤守正代表
エフピコ 佐藤守正代表

社員と家族1300人で大合唱。若手中心で再始動した社歌プロジェクト

森本:2025大会に再挑戦しようと思ったのは何故でしょうか?

佐藤:2021年に会社の60周年を迎えるタイミングがありまして、記念企画を若手メンバーに考えてもらうことにしたんです。普通なら「周年パーティをやろう」と考えるところだと思うのですが、そうではなく「コーポレートキャラクターをつくりたい」と言い出したんです。これには驚きましたね。

森本:ユニークなアイデアですね。

佐藤:そうなんです。年明けに全社朝礼で公募を発表したところ、1月末の時点で28件も応募があった。感動してさらに応募を促すと、最終的に981件も集まったんです。事務局は審査が大変だったと思いますが、最終的に10の作品に絞り込んでグループ全社員での総選挙を実施し、投票率はなんと96%。そこから「ピコザウルス」というキャラクターが誕生しました。

ピコザウルス
恐竜とトレー回収のリサイクルボックスをモチーフにした「ピコザウルス」。LINEスタンプやさまざまなパンフレット、ミネラルウォーターのラベルにも活用されるなど活躍の場がどんどん増えている

佐藤:私一人で60周年を企画していたら、間違いなくパーティしか思い付かなかったと思います。でも若手に任せたことで、これだけの熱量と一体感が生まれた。うちは5000人規模のグループですから、およそ5人に1人が応募してくれたというのもすごいことですよね。

こういう社員主導の取り組みを定期的にやりたいなと感じていたところで、「あ、そうか。あれから5年経つし、もう一度社歌コンテストに出てみようか」と思ったんです。今回も若手に社歌動画の企画を考えてもらうべく、各グループから推薦を募り、24人のプロジェクトチームを結成しました。日本全国に散らばっているメンバーだったので、集まるのも一苦労でしたね。

森本:それは大がかりなプロジェクトになりそうですね。

倉本:基本的にはリモートで進めつつ、何度か対面でも打ち合わせをしました。そこで出たアイデアが、「全国のグループ会社をキャラバンして撮影する」「できるだけオープンな場所で1000人を超える社員や家族と社歌を合唱しよう」というもの。結果的には創業の地、広島県福山市の「エフピコアリーナふくやま」で感謝祭を開催することになりました。グループ社員のご家族も含めた1300人でアカペラ合唱を行い、その映像を動画のクライマックスに採用しています。

森本:あの圧巻の映像の裏に、そんな背景があったとは驚きです。今回のプロジェクトでは、倉本さんが事務局を務められたんですよね。

倉本:はい、事務局として運営全体のサポートを担当しました。正直、最初は誰もここまで大きなプロジェクトになるとは想像していなかったんじゃないかと思います。集められた若手メンバーも経験をしたことがない規模でしたから、非常にチャレンジングな取り組みだったと感じています。プロジェクトメンバーだけでなく、役員も当日のイベントで飲食の屋台、輪投げやボウリングなどを手伝っていましたから(笑)。

森本:映像でも社長が屋台で焼きそばをつくっている姿が映っていましたよね。

佐藤:はい。屋台の焼きそばって、こうやってつくるんだなと発見があって、なかなか楽しかったですよ(笑)。

大賞受賞の瞬間、社内外に広がった感動と一体感

森本:決勝戦当日、12位から順に発表されていき、最後までエフピコさんとゲットイットさんが残っていましたよね。2位でゲットイットさんの名前が呼ばれた瞬間、皆さんが抱き合って喜ばれていたのがとても印象的でした。なかなか職場の人と抱き合うことってないですよね。

佐藤:あれは本当に、久しぶりに心から感動した瞬間でしたね。

倉本:決勝のトップバッターだったゲットイットさんの曲とプレゼンテーションが素晴らしくて、「これはヤバいかもしれない……」と思っていました。その他の皆さんの発表もすごく良くて、それぞれの思いがこもった作品ばかり。やっぱり決勝に残る作品のレベルは相当高いなと、改めて感じましたね。

ただ、私たちも今回応募するにあたって、ここ2〜3年の決勝戦の様子を徹底的に分析していました。その上で、「5年前とは違う挑戦をする」「他社がやらないことをやる」、そして「“うちらしさ”は忘れない」。そのようなポイントを挙げながら、かなり議論を重ねて戦略を立てていったんです。

森本:大合唱という構想も、そうした戦略の一環だったんですね。12位から順に発表されていくあの時間、心境はいかがでしたか?

佐藤:きっと5位以内には入るだろうと信じていたんですが、4位、3位と順位が進むにつれてドキドキが止まらなくなって。2位が発表される時には、もう祈るような気持ちでした。

森本:社歌コンテストでは、組織の代表がどれくらい前に出るかが、毎年皆さんが悩むポイントの一つになっています。社長が出すぎると「やらされてる感」があるし、逆に出なさすぎると「現場だけでやってる感」が出てしまうかもしれない。その点、エフピコさんのプレゼンテーションはバランスがすごく良かった印象でした。

佐藤:そうですね、プレゼンは私が前に出て話すのではなく、倉本が担当してくれました。

森本:倉本さんから見て、プロジェクトの中での代表の立ち位置、どんなふうに映っていましたか?

倉本:決勝の舞台に限らず、代表は常に「任せてやらせてみよう」というスタンスで接してくれたので、それがとてもありがたかったですね。自由にやってみろと背中を押してもらえたことで、自分たちで考え、行動することに責任もやりがいも感じられる。そういう意味で、すごく理想的な立ち位置だったと思います。

佐藤:プロジェクトにかかる予算を聞いた時は驚きましたけどね(笑)。

倉本:そこは本当に……。当初の想定よりも、かなり予算が膨らんでしまいました。でも、もう後には引けない状況でしたし、絶対に形にしなければ、という気魄でやり切りました。これで決勝に行けなかったらどうしようって、本当に不安でしたね……。

森本:結果的に大賞を獲得されて、本当に良かったです。受賞後、もう一度社歌動画が流れるじゃないですか。あの時、他社の方々も目に涙を浮かべていたんですよね。それだけ社外の皆さんの心にも響くものがあったと思うんです。

エフピコ 倉本英人氏
エフピコ 倉本英人氏

一体感は家族へ、そして社会へ。社歌を起点に広がるパーパス

森本:今回、大賞を受賞されたことで、社内外からの反響も大きかったのではないでしょうか?

倉本:本当にありがたいことに、社外の方々から「おめでとうございます」と声をかけていただく機会が多くありました。社内でも、部署や営業所ごとに配信をみんなで視聴していて、大賞が発表された瞬間には歓声が上がったという話も聞いています。今回の取り組みを通じて、社内に一体感が生まれた実感がありますね。

佐藤:決勝の後、打ち上げの場で24名のプロジェクトメンバーの一人一人に挨拶をしてもらったのですが、本当にみんな立派なコメントをしてくれました。「最初は何をするのかも分からなかったけれど、プロジェクトを通していろんなグループ会社の人と知り合えてよかった」「すごく楽しかった」といった声が多くて、やってよかったと心から思いましたね。

それから、イントラネットには完成版の動画とは別にメーキング映像もアップしているんです。各拠点での撮影風景や、採用されなかったシーン、準備の様子などをまとめたもので、これもまたグループの一体感が感じられる良い記録になっています。

森本:その映像もぜひ見てみたいです。最後の合唱シーンで子どもたちも一緒に歌っていたのがとても印象に残っています。社員のご家族にまで社歌の輪が広がっているのは素晴らしいことですよね。

佐藤:以前マスコットキャラクターを公募した際にも、社員から「家族との会話が増えた」「エフピコがどんな会社か家族と考えるきっかけになった」という声が多く寄せられました。今回の社歌も同じように、社員のご家族も含めてエフピコのことを身近に感じてもらえる機会になったらうれしいですね。

森本:社歌動画は採用活動にも活用していくのでしょうか?

佐藤:もちろんです。会社の雰囲気や価値観を伝えるという意味でも、非常に有効なコンテンツだと思っています。

森本:あの動画1本に、御社の魅力がぎゅっと詰まっている気がしました。何をつくっているかだけでなく、「どういう想いでつくっているか」が伝わってきますよね。

佐藤:エフピコはBtoBの事業が中心なので、どうしても表舞台に出る機会は少なくなりがちです。でも、実は最近、日本経済新聞の一面に広告を出稿しました。ああいった形でブランド認知を高めることは、学生や求職者に知ってもらうためにもとても大切だと考えています。

森本:たとえ入社しなかったとしても、どこかでエフピコという名前が記憶に残っていれば、いつかつながりが生まれる可能性もありますよね。

倉本:以前から代表は全国の社員と少人数で意見交換をする機会をつくっているのですが、その中でもよく出てくるのが、「うちはもっと社外に向けてPRをしないのですか?」という声なんです。近年、プラスチックに対するネガティブな報道に触れる機会もあって、社員自身も少し気にしている部分があると思います。でも、私たちは人びとの暮らしや社会にとって必要なものを提供しているという自負がありますし、その背景や取り組みをしっかりと世の中に伝えていく必要があると考えています。だからこそ、社歌というコンテンツを使って、それを内にも外にも伝えていきたいです。

森本:私自身も社歌コンテストに関わる中で、もともとインナー施策として始まった社歌を外に発信していくことで、結果的に社内の人たちへのブランディングにもつながっていく。そんな循環が生まれていることを強く感じています。社歌動画を起点にエフピコのパーパスを社会に伝えていくことは、とても意義のあることだと思います。

佐藤:もう一つ印象に残っている出来事があるんです。実は昨年9月、グループに加わったばかりの九州の会社があり、そこの社員もプロジェクトチームに参加してもらいました。エフピコのことも、社歌コンテストのこともよく分からないまま、10月からいきなりプロジェクトに入れられて、最初は戸惑うことばかりだったと思うんです。でも、終わった頃には見違えるように成長し、積極的にチームの中で動いたり、率先して挨拶をしたり、発言したりできるようになりました。その会社の社長からも「別人のようだ」と言われるほどです。プロジェクトを通じてそういう社員の成長が感じられたことも、今回の取り組みの大きな収穫でしたね。

電通 森本紘平氏
電通 森本紘平氏

感謝祭開催を計画。社歌を通じて想いと感謝を届け続ける

森本:今後この社歌をどのように活用していきたいと考えていらっしゃるのか、展望をお聞かせください。

佐藤:実は、今回感謝祭に参加したのは基本的に福山地区の社員だけだったんです。でも、年初の全体朝礼で、全国で感謝祭をやると社員に向けて宣言してしまいましてね(笑)。言ってしまったからには実現せねばと思っているんですが、東京だけでも近郊の工場を含めると、おそらく3000人規模になります。今から頭を抱えていますが……それでも、社員への感謝の気持ちを込めて、何とかやりきりたいと思っています。今年中にすべては難しいかもしれませんが、関東の規模で成功すれば、他の地域にも広げられると思っています。

森本:それをやりきった時の感動も、きっとすごいものになりますね。

佐藤:それから、まだ決勝の興奮が冷めやらないうちではありますが、「次はどうしようか」と自然に考え始めている自分もいます。やはり、こうしたイベントは定期的にあった方がいいと思うんです。全国に散らばっている社員が、心を一つにするきっかけにもなりますから。もしかしたら、また数年後には新しい動画をつくることになるかもしれませんね(笑)。

エフピコ

森本:ぜひ、新しい動画も楽しみにしています。倉本さんは今後について、どのように考えていらっしゃいますか?

倉本:社外の方々に対しては、今回の社歌を通してエフピコグループのことをもっと知っていただきたい、というのが一番大きな願いです。そして社内に向けては、社員自身はもちろん、ご家族にもファンになっていただけるような会社でありたいと思っています。仕事って、楽しいことばかりじゃありませんよね。落ち込むことや大変な時もある。そんなときにふと、「あ、うちには社歌があるな」と思い出してもらえるような、寄り添ってくれるような応援歌として、ずっと大切にされていってほしいです。この曲は、20年、30年と時間が経っても、変わらない良さがあると思うんです。そんな普遍性を大切にしながら、これからも歌い継いでいきたいですね。

森本:本当に、いつの時代でも親しみを持てそうな社歌ですよね。

佐藤:そうですね。私たちが大切にしている想いやビジョンをまっすぐに歌っている曲です。今回の受賞をきっかけに、グループ全体でその想いをさらに共有し、環境への負荷低減に取り組みながら、お客さまとのコミュニケーションもいっそう活性化していけたらと考えています。

NIKKEI社歌コンテスト公式サイト

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