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「好き」をもっと好きに。“推し活”変革!No.2

推し活の行動を変容する。ミージアムが目指すクリエイティブeコマースとは?

2025/10/24

富士フイルムビジネスイノベーション(以下、富士フイルムBI)と電通が共同で開発を進める「MeSEUM(ミージアム)」は、ファンが公式画像を自由にセレクトし、自分だけの写真集やグッズをオンデマンドでつくれる「クリエイティブeコマース」サービスです。

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今年5月には、花人 赤井勝氏の企画写真展「時静-JISE- 花人 赤井勝のせかい」を開催し、展示作品の一部をコンテンツサイトにて販売。9月25日には日本外国特派員協会で赤井氏の世界観を新たに展開するミージアムの構想が発表されました。本稿では、ミージアム総合プロデューサーのアーロン・ズー氏が、ミージアムの狙いや記者会見・企画写真展の舞台裏、今後の構想を語ります。

推し活の体験価値をアップデートする、「クリエイティブeコマース」

近年、「推し活」と呼ばれるアーティストやタレント、キャラクターへの応援活動が活発化し、ファン一人一人が多様なかたちで「推し」を楽しむ時代になっています。

ミージアムは、ファンがライブやイベントなどの公式写真の中から好きなカットを選び、自分だけの写真集としてオンデマンドで製本・購入できるサービスです。写真集以外のオリジナルグッズ制作にも対応し、単なるグッズ販売/グッズ購入を超えて、ファンとコンテンツホルダー双方にとっての新たな関係を生み出す可能性を秘めています。

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長年、銀塩写真やデジタルプリンティングを極めてきた富士フイルムグループの技術力に、電通のコンテンツ開発力を掛け合わせることで、ファンとアーティストの関係性を新しいかたちにアップデートできるのではないか。そんな思いで、私たちは共同開発を進めています。

ミージアム(MeSEUM)は、「Me(自分)」と「Museum(ミュージアム)」を掛け合わせた造語です。自分だけの推し写真集や推しグッズを、自分の部屋にある小さな博物館のようにコレクションし、飾っていく。そのような行為そのものを楽しんでもらいたいという願いが込められています。推し活は単なる消費行動ではなく、すでに日本独自の文化として定着しています。スマホをはじめとするデジタルの世界だけで完結するのではなく、「手に持ち、飾り、めでる」という身体的な行為も重視されているのが、日本の推し活文化の特徴です。

富士フイルムBIの取締役 執行役員でグラフィックコミュニケーション事業を統括する木田裕士さんは、ミージアムの構想をこのように語ります。

「ミージアムは、ファンの皆さまが好きな写真をみずからセレクトし、弊社のAI技術とデジタルプリンティング技術を活用して、世界に一つだけのオリジナルアイテムをつくれる推し活プラットフォームです。コンテンツホルダーの皆さまにとっては、眠っているコンテンツを可視化することで、その価値を再発見していただくことができます」

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富士フイルムビジネスイノベーション 取締役 執行役員 木田裕士氏(中央)

ミージアムは推し活を楽しむファンとコンテンツホルダーの双方にとってのパートナーでありたいと思っています。公式素材をもとに、ファンが自由に編集し、自分だけの、とっておきのアイテムに囲まれていく。その体験をきっかけに、アーティストやタレントの新しい魅力も今以上に深く引き出されていき、さらなるブランディング推進やビジネス拡大につながる。このように、次世代プラットフォームを通して推し活の行動変容と社会貢献につなげていく世界観を、私たちは「クリエイティブeコマース」と名付けています。

MeSEUM(ミージアム)は、
単にセレクト写真集を売るためのツールでなく。

MeSEUM (ミージアム)の「好き」をもっと好きに。
の思想・理念を広げること。

結果的に、推し活界隈のいまの人々の行動を変容する事業。

これが私が考える「クリエイティブeコマース」です。

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 「MeSEUM」サービス提供スキーム構想

写真の中に「装花」する。花人 赤井勝氏とともに探る表現の可能性

ミージアムのコンセプトを体現する手段として、私たちは花人 赤井勝さんとのコラボレーションにチャレンジしています。2025年5月に開催された企画写真展「時静 -JISE- 花人 赤井勝のせかい」は、富士フイルムの銀塩プリントとオンデマンド印刷を併用しながら、赤井さんの「装花」という行為と写真を掛け合わせた、これまでにない作品の世界を提示する場でした。赤井さんの花はいわば、瞬間芸術です。その時、その空間にしか存在しない素晴らしい作品を、写真の中に表現することで、永遠に残していくことができるのではないか。私たちはそう考えました。

赤井さんは、この写真展に込めた思いをこう語ってくれました。

「装花したものを撮るのではなく、写真の中に装花する。そして、見る人の心の中に装花する。そのような気持ちで作品をつくりました」

展示会場では、大判の銀塩プリントが放つ圧倒的な存在感と質感で赤井さんの作品を表現。展示期間中に一部の作品を、ミージアムのセレクトコンテンツとして提供しました。この写真展には1週間で約8000人が来場。富士フイルムBIの木田さんも、「個人開催としては過去最大級の集客だった」と話してくださり、多くの方の心に響いたという手応えを感じました。

赤井勝

推し活文化を世界に。ミュージアム構想発表の場にFCCJを活用

ミージアムは、ファンとアーティストの関係を深める仕組みであると同時に、日本発の推し活文化を世界に発信するプロジェクトでもあると私たちは考えています。その意味で、構想の本格始動を発表する舞台として、日本外国特派員協会(FCCJ)を選んだのは自然なことでした。

9月25日、東京・有楽町にあるFCCJで開催した記者会見には、花人 赤井勝さん、富士フイルムBIの木田裕士さんらの5人で登壇しました。

赤井勝
花人 赤井勝氏

この日、赤井さんはこれまでの活動を振り返りながら「花」と「人」とともに生きてきたことへの感謝を述べ、今後の活動として「装花」と写真のコラボレーションにも挑戦していくことを発表。私たちは、その赤井さんの新たなチャレンジを展開する場として、ミージアム構想を紹介しました。また、アーティストやタレントの魅力をコンテンツで届ける手段の一つとして、TOKYO FMで10月からスタートするラジオ番組「すきもあミージアム」の立ち上げも発表。登壇者がそれぞれの立場から「推し」や「好き」を表現する大切さを語りました。

この会見のもう一つの特別な側面は、各国の駐在大使夫人の方々がずらりと最前列に並ばれていたことです。実は赤井さんは、長年にわたり駐在大使および大使夫人と「装花」を楽しむ会を続けてこられた方で、駐在大使夫人の間でも深い信頼と敬意を集めています。そうした背景があり、この日の会場では国境や文化を超えた交流がさかんに行われていました。

推し活という言葉は、いまや一時的なトレンドではなく、自己表現とつながりを生み出す文化的な行為になっています。ミージアムは、そんな「好き」という感情に寄り添い、誰もが自分らしく「好き」を表現できる新しい入り口になれたらと願っています。そしてその入り口は、日本だけでなく、世界中のファンに向けて開かれています。今回、世界各国の駐在大使夫人も同席したFCCJでの会見は、推し活文化を世界に広める第一歩となる情報発信の機会をいただけたと、今あらためて思います。

ミージアム総合プロデューサーのアーロン・ズー氏
MeSEUM総合プロデューサー アーロン・ズー氏

一人一人の「好き」をかたちに残す

ミージアムを活用した「クリエイティブeコマース」は、ファンとアーティストの関係性をより深め、同時にアーティスト自身の魅力を新しい角度から引き出す役割も果たします。たとえば、普段は公開されないようなオフショットや未発表カットを、ファンが自分の視点で魅力的に編集し、一冊にまとめて残す。それを他のファンたちが見つけ、新たな魅力として拡散していく。そういった、個人の「好き」から生まれる新しいコンテンツを、コンテンツホルダーの公式の枠組みの中で提供することが重要なのです。

さらに、オンデマンド製造による在庫レス運用や必要なときだけ生産する体制は、コンテンツビジネスにおける廃棄の最小化、つまりサステナビリティへの貢献にもつながると考えています。

今後、より多様なジャンルやアーティストとの連携が増えていくことを想定していますが、それぞれの世界観にどう寄り添い、どのようにサービスに落とし込むか。その部分は常に、IPごとに丁寧に向き合っていく必要があると感じています。

誰かが生み出した作品と、自分の感情とを、自分自身の手でつなぎ、かたちにして残す。それがごく自然なこととして広がっていく社会を、私たちは思い描いています。今後も国内外のステークホルダーの皆さまとの連携を加速させながら、体験価値のアップデートにチャレンジしてまいります。

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