動画広告出稿時に気をつけたい、ブランド毀損のリスクとは?
2016/04/04
電通は2016年2月、独自形成の大規模PMP(プライベート・マーケット・プレース、優良広告枠限定の自動取引システム)を使った動画広告で企業ブランディングに貢献する「Premium Videoシリーズ」の展開を発表しました。これは、急速に高まる動画広告のニーズに応えていくためのもの。では今、企業は動画広告をどのように活用すべきなのでしょうか?
電通PMPのパートナーでもあるTeads Japan代表の田中洋一さんと、電通デジタル・ビジネス局の村山亮太さんに、企業が抱える課題と最新の動画広告事情について話を聞きました。
テレビCMのようにウェブでブランディングしたい
──まずは現在、広告主が抱えている課題から教えてください。
村山:多くの広告主が、ウェブ動画広告を活用したいという思いを持っています。その理由は、テレビCMでリーチできないユーザーに訴求できること、オフラインメディアと比較すると精緻なターゲティングとパフォーマンスデータを詳細に把握できることなどがあります。
でも、今のウェブ広告で広告主のニーズに対応できる環境が十分にあるかというと、そうではありません。現状、国内の動画広告はほとんどがYouTubeです。YouTubeの動画広告のニーズは大きな拡大を見せており、多くの広告主が満足していますが、他の媒体やフォーマットでも動画広告を展開したいという声が高まってきていました。
田中:動画広告ではYouTubeが、テレビCMのようなきれいな動画が流せるところで評価されてきたと思います。そこで、この動画広告を通常のテキストサイトに組み込むことができたらリーチ数が上がるのではないかと、2011年にフランス・モンペリエで始まったTeadsは考えました。私たちが「プレミアム媒体」と言っている新聞や雑誌などの優良サイトなら、ユーザーの読んでいるコンテンツからライフシーンも見えやすいので、より広告主のニーズに対してしっかり出稿できるのではないかという考え方ですね。Teadsは、グローバルで約500の優良サイトをネットワーク化。日本では当初50でしたが、電通PMPは現在230ものメディアを網羅しています。
──どんな広告主が動画広告を求めているのでしょうか。
村山:今までテレビや新聞、雑誌でブランディングを行ってきた広告主の多くが、ウェブでもブランディングをしたいと考えています。なので、ウェブ広告の役割自体がこれまでと変わってきています。
今までの運用型広告は、パーチェスファネルでいうと一番下層の“刈り取り”のコンバージョンだけに着目し、CPC(クリック単価)、CPA(顧客獲得単価)を広告パフォーマンスの主要指標としてきました。ただ、今後は運用型広告でのブランディング、つまり運用型広告がテレビや新聞のようにブランディングやプロモーションにも多く用いられるようになってくると思っています。ここでいう運用型広告は、従来のRTB型運用型広告ではなく、PMP型運用型広告を指しています。RTB型は、どこに出るか分からないためにブランド毀損のリスクがあり、ブランディング施策には向いていません。しかし、掲載枠を純広告のように一つ一つ指定しながらターゲティングもできるPMP型運用型広告は、ブランディング広告と非常に親和性が高いといえます。
※RTBとPMPの分類の詳細はこちら。
ウェブ広告の問題点「どこに広告が表示されるか分からない」を解決!
──電通PMPのPremium Videoシリーズを活用するメリットを教えてください。
村山:まずは、YouTube以外のプレミアムな媒体にも動画広告を出稿できる点です。Premium Videoシリーズは媒体を一つ一つ指定して出稿できます。さらに、さまざまなフォーマットがあること、運用型広告なのでターゲティングやPDCAを回せるというメリットがあります。
田中:例えば、ビジネスマンが夜、自宅でYouTubeを見ているとしましょう。このとき、たとえ趣味の動画を見ていたとしても、再生前に流れる動画広告にはビジネスに関連したものが出てきてしまうんですね。ターゲティングは合っていても、オフの時間にビジネス広告は見たくない。
それが電通PMPでは、出稿するウェブサイトを限定することで、よりマッチした広告を出すことができます。「東洋経済オンライン」を閲覧しているときは、確実にその瞬間はビジネスに興味があって見ているわけです。ここに、開閉型のプレーヤーできれいな動画が流れれば、効果は高くなりますよね。広告主がターゲットしたい層と、メディアのオーディエンスがかみ合うことを評価していただいています。
村山:今のウェブ広告の大きな問題点は、「どこに広告が表示されるか分からない」こと。だからプレミアムな媒体を集め、掲載面を選定できる電通PMPなら、ブランディング施策の際、広告主に大きなメリットを提供できると考えています。
田中:出稿先のメディアについては、新聞社系サイト、ポータルサイト、専門サイトなど、大手の主要メディアのほとんどが電通PMPに入っています。どのメディアも、動画コンテンツを持っていなくても動画広告が流せるということで、積極的に考えていただいているようです。
──「どこに広告が表示されるか分からない」は、広告主側も問題視しているのでしょうか。
村山:はい。出稿メディアを指定できない従来型の運用型広告(RTB)では、意図しないメディアに掲載されてしまい、「ブランド毀損」を招く可能性があります。日本では、運用型広告を出稿する際にこの点が軽視されてきましたが、外資系広告主は非常にシビアに考えています。
田中:日本でも、ある大手企業の広告がアダルトメディアに掲載されて、大きな問題になったことがありました。認知を広げるためにウェブ広告を使うなら、こういったブランド毀損のリスクは回避しなければいけません。
村山:他にも、ビューアビリティー(実際に広告がどれ位見られているか)の問題もあります。日本の広告主でビューアビリティーを意識しているケースは非常に少なく、そのため媒体社も向上施策をそれほど講じていないという現状があります。その結果、広告枠がファーストビューに入っているにもかかわらず、ローディング時間などの問題からビューアビリティーが非常に低い媒体も少なくありません。
──なぜ、日本の企業やマーケターは、ブランド棄損やビューアビリティーの問題を重要視しないのでしょうか。
村山:やはり“刈り取り”の効率を重視しているからでしょうね。クリック単価を重視する傾向にあります。ウェブ広告の役割が“刈り取り”で、認知という部分でのプロモーションはテレビで達成できていましたから。それがテレビ的な視点でウェブを考え直すようになって、ようやく問題視し始めたというところでしょう。また、企業内ではテレビのプロモーション担当とウェブ担当が違うケースが多いんです。担当が別々ならば当然、KPIも違います。プロモーションやブランディングはテレビで、ウェブは“刈り取り”でCPAやCPCが良ければいいと。こうした企業のセクショナリズムの問題もあると思います。
田中:私は15年ほどこの業界にいますが、ブランディングを行うにはウェブ広告のフォーマットがあまり良くなかったというのもあると思います。それが動画広告の出現により、ようやく良くなってきました。動画広告のフォーマットにより、テレビCMで伝えられていたブランドストーリーやメッセージが、スマートフォンでも伝わるようになったなと感じています。
<後編へ続きます>