海外Eコマース最前線リポートNo.2
アイソバーに聞く、ECの最新トレンド
~ブランドコマースとは~
2016/04/04
電通イージス・ネットワーク傘下のグローバル・デジタルマーケティング会社・アイソバーは、急速に拡大するEコマース(EC)領域においてその先端的な取り組みが注目されている。同社のグローバルCEO、ジーン・リン氏に聞いた。
ブランドコマースとは
──アイソバーは、ECにおいてどのような取り組みをしているのでしょうか。
リン:ブランドの未来は、ECを包含する「ブランドコマース」にあると考えています。
ブランドコマースとは、プラットフォームやチャネルの枠を超え、ブランディングと購買活動を統合すること。オンライン・オフラインを区別することなくシームレスに捉え、顧客のブランド体験のいかなるポイントからでも決済を可能にするビジネスソリューションです。その実現のためには先端的な電子決済のテクノロジーと高度なクリエーティビティーが必要になってきます。ECの実装能力は、ブランドコマースにおける非常に重要な要素です。
オムニチャネルは当たり前のサービス
──ECは急速に浸透し続けていますが、特筆すべきトレンドは見られますか。
リン:場所や手段に限定されないオムニチャネルな購買環境を整えることは、今や必須です。さまざまなデバイスで、クリック一つで手軽に買い物を済ませたり、いつでもどこでもあらゆる商品情報を閲覧できるのは、もはやユーザーにとって「当たり前のサービス」という認識です。逆にそれができなければ、離れていってしまいます。
スマホなどのモバイルデバイスは、ECの主要なプラットフォームとして定着するでしょう。豊富なデータの利用やアルゴリズムの進化に伴い、企業は消費者をより詳細に把握し、パーソナルなニーズにカスタマイズしたサービスで応えることができるようになります。それは、感動を創出するブランド体験につながります。
技術開発も、ECの将来に大きく関係してきます。例えばIoTの進化は、消費者の購買行動を便利にするだけでなく、新たな体験をもたらすでしょう。それにより、今までにない“市場”が出てくるかもしれません。VR(仮想現実)や顔認識システムなどの先端テクノロジーの進化で消費者の心をより深くつかむことができれば、ECはますます加速するのではないでしょうか。
──アイソバーのECに対する取り組みは、クライアントにどのようなアプローチで、どのような顧客体験・メリットをもたらしているのでしょうか。
リン:グローバルネットワークから選抜されたチームが、戦略立案からプラットフォームの構築、オムニチャネルの設計、さらにリテールに革新をもたらすツールの開発から運用など、ECのあらゆる領域に網羅的に取り組んでいます。経験豊かなコンサルタントが、既存ショップのビジネスパフォーマンスやユーザーエクスペリエンスの評価、あるいは新規ショップの開設やデータのエコシステム構築、またテーラーメ-ドのワークショップなど、幅広くクライアントを支援します。
成長が著しい重点地域においては、市場分析とそのデータに基づくコンサルテーションに特に力を入れています。アイソバーのビッグデータ・プラットフォーム「Code1」は、カテゴリーにおける生活者のニーズを洗い出し、ブランドの資産価値とカスタマージャーニーを継続的に計測することで、見込み客の獲得を最適化します。
「クリック&コレクト」(ネットで購入し、店で受け取る)のような旬の手法や、セールスのピークシーズンに対応する拡張性の導入など、成功をつかむためにはあらゆるディテールにこだわらなくてはいけません。 そして最も重要なのは、ECの知見とテクノロジーを、ブランドのストーリーの伝達につなげることです。私たちはそれを高度なレベルで実現できると自負しています。
東京2020に向けて、日本企業はEC対応の準備を
──世界のEC市場は今後も拡大していくと思いますか。
リン:国境を超えて商品を購入する「ボーダーレスバイヤー」の台頭は、グローバルの経済の大きな潮流となりつつあります。すでに消費者は、自分の国で販売されているものだけでは満足できなくなっています。 今もお花見のシーズンを迎えて大勢の中国人が日本を訪れていますが、その「爆買い」を見ても日本の製品がいかに中国人にとって魅力的か分かると思います。
また、日本企業、中でもローカルブランドは東京2020に向けてインバウンドによる大きなチャンスを迎えます。世界中の人が日本を訪れ、日本のブランドを体験すれば、帰国後の継続購入にもつながっていきます。それまでに、いかにグローバルなプラットフォームを用意できるか、早急な準備が必要です。世界中の人が日本に関心を持ち、日本の商品を購入しようとするビッグチャンスですから、今からアクションを起こすべきでしょう。