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デジタル活用で成果を出すにはNo.14

Win-Winを創りあげる。これからのアフィリエイト

2016/04/12

前編は、アフィリエイト広告の仕組み、運用型広告との違いなどについてお話を聞きました。引き続き、ネクステッジ電通の仁宮学さんと、電通の河合友大さんに、アフィリエイト広告でコンバージョンさせる方法について聞いていきます。
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
(左から)ネクステッジ電通の仁宮学さんと、電通の河合友大さん。
(左から)ネクステッジ電通の仁宮学さんと、電通の河合友大さん。

比較サイトで、選ばれるためのメッセージを考える

──アフィリエイトのクリエーティブについて教えてください。

河合:クライアントの商品の特徴、伝えるべきことはいくつかあると思いますが、媒体に集まっているユーザーに訴求ポイントがマッチするかどうかを考えます。

例えば、媒体に対して、訴求ポイントの異なるA、B、 Cという3つのクリエーティブを出したときに、成果が変わってきます。その媒体に来ている人が求めるものがAであるならば、BとCは掲載しても成果につながらない、媒体社にしてみれば、収益につながらないということになります。ですから、媒体のユーザー情報を元にクリエーティブチームがそのユーザーに響く表現を作っていきます。

仁宮:価格比較サイトでは、価格の安さを一番訴求した方がいいということもありますが、パソコンなどの場合はスペック面を強調した方がコンバージョンすることもあります。

ユーザーごとのクリエーティブの出し分けなどは難しいですが、媒体や商材に合わせて適切なクリエーティブを入稿して、一定期間を経てクリエーティブを変えて検証するというようなことも行っています。運用型広告は、出し分けやABテストを自動化していますが、アフィリエイトは手動で検証することになります。

河合:だからこそ、最初にユーザー特性を正しく把握してクリエーティブを作ることが重要です。最初に成果が出ないと、中長期的な取り組みができないこともありますから。

消費者が購入前にネットの比較サイトで検討する行為が当たり前になる中で、各社の商品やサービスを比較したり、ランキング形式で紹介するようなウェブサイトに掲載されることが、商品認知や比較検討してもらうために重要な機会になっています。成果を上げて、中長期的に掲載されていくようにする必要があります。

電通の河合友大さん
各社の商品やサービスを比較したり、ランキング形式で紹介するようなウェブサイトに掲載されることが、商品認知や比較検討してもらうために重要な機会になっています

 

広告主、媒体社、広告会社の3社によるミーティングを開催することで、協力体制を作る

──電通ならではの強みはありますか?

仁宮:ASPと媒体のアフィリエイトネットワークでは、アフィリエイト関連の情報を元に効率的な運用をしています。電通の場合は、それに加えて、デジタル広告、テレビCMなどの影響も含めて分析して成果を上げていくことができます。

他にも電通の調査データ、マーケティング情報もありますし、ネクステッジ電通はSEO、SEM、ソーシャルメディア、ディスプレイ広告、分析などの運用の最前線をやっていますから、アフィリエイト以外の情報で有益なものを提供することで、ASP、媒体双方にメリットを感じてもらえます。

例えば、あるクライアントで特定の商品のSEOが弱いとしましょう。SEO単体の施策としてクライアントのサイト構造的に効果が厳しかった場合、SEOを得意とするアフィリエイトサイトに、そのキーワードと紐づくようなランディングページを作成してもらい、クライアントのサイトに誘導するというような施策ができます。このように、ASPだけでは気づかなかった視点を提供できるからこそ、ASPと媒体双方の協力体制がとれるのです。

河合:一つの方向を向いてお互いに情報を伝えるのは重要です。通常は広告会社が間に入り、広告主と媒体社が直接話し合う機会はなかなかありません。そのようななか、協力していきたい相手がどう考えているか直接声を聞きたいというご要望が双方からありました。

そこで、クライアント、媒体社、電通の3社での合同ミーティングを定期的に開催するようにしました。直接会って、自社利益だけでなく、Win-Winな関係を作って一緒に伸ばしていきたいと考えて、コミュニケーションの場を設けるのです。方向性を合わせて、中長期における大きな目標に向けてみんなで戦略を考えられるようになりました。先が見える事で、広告主としては中長期目標が見えやすくなる、媒体社としても中長期の売上見込みが立ちやすくなる、といったメリットがあります。

また、「あの人のためなら」ということが広告主にも、媒体社にも生まれるんですね。人が本当に重要になる領域でして、コミュニケーションのスピードも上がって良い流れが生まれています。

仁宮:広告主と媒体社を巻き込み、実績を伸ばすための施策を考えることで、実現の可能性が高まりますから、合同ミーティングは非常に重要です。電通としても啓発しながら積極的にやっていきたいです。

報酬単価を上げるだけでない、EPC改善の方法

──アフィリエイト施策の改善はどのようなことを行いますか?

仁宮:アフィリエイトでは、EPC(EPC=アフィリエイト報酬額÷クリック数)という指標で、1クリックに対する収益性を評価します。比較検討サイトは、サイトに集客したのち、広告主のサイトに送客することが根幹のビジネスになります。しかし、アフィリエイトの場合は、成果になって初めて収益になりますから、送客してもコンバージョンされなければ、1円も入らなくなってしまいます。

そこでEPCを改善するために、成果報酬の金額を上げるという策がありますが、広告主側で金額を上げられない場合は、打つ手がないと思われがちです。そんなことはなくて、例えば広告自体とLPの訴求内容に差異がないか、送客した先のランディングページはユーザーにとってアクションしやすいページとなっているかなど、改善をしていくことでコンバージョンレートが上がり、媒体社に支払える報酬が上がります。こうした形でのEPC改善ができるのです。EPCを指標にしたときに効率を上げるようにしていけばいいわけです。

商品情報を掲載しているような大手の比較サイトでは、クライアントの商品データベースと連携して商品情報を掲載していますが、そのまま連携すればよいというわけではありません。世間のトレンドに合わせた情報を、商品説明に取り入れたり、キャンペーン、クーポンなどユーザーにとって有益な情報を入れることで、提供する商品データベースの品質を上げていくということも重要です。

例えばTシャツを売るときに、ブランド名を入れて検索する人が多ければ、Tシャツのブランド名を商品タイトルなどに入れれば検索ヒット率が上がります。他にも送料無料を入れるなど、細かい改善をすることで、アフィリエイトの成果につながります。

河合:消費者から比較をされるときに、他社と同じ訴求をしていれば、選ばれる可能性が低くなります。他社の訴求ポイントを見ながら、文章や紹介の仕方などの細かい表現を提案して、変更することもあります。特にタイトルなど目立つ部分は重要で、リスティングと同様、ユーザーの求めるものに対して、どんな答えを出すのかをよく考える必要があります。

仁宮:媒体によって商品情報が長過ぎると、後半が“・・・”という表示になることもありますから、実際にどのように掲載されていくのかを常に意識して作ることも重要です。

また表現にうそが入るのはもちろんだめですが、主観的すぎるものもNGです。第三者の調査による人気ナンバーワンなどの評価は、ユーザーにとってもコンバージョンするうえで後押しにもなります。

──インセンティブサイトの場合はどういった工夫がありますか?

仁宮:インセンティブサイトでは、媒体特典の訴求が重要です。物販では○○媒体限定のモデル、限定価格帯、限定クーポンなどですね。会員登録では、新規会員限定特典を訴えると、登録率がアップします。

比較系が、もともと興味のある人を刈り込むアプローチだとすると、インセンティブ系は、経由している人に特別感を感じてもらうアプローチになります。競合の広告主に成果を持っていかれる可能性もあるので、その媒体ならではの独自性を提供していくことで、競合他社との差別化を図っていくことも重要です。

ネクステッジ電通の仁宮学さん
比較系が、もともと興味のある人を刈り込むアプローチだとすると、インセンティブ系は、経由している人に特別感を感じてもらうアプローチになります

 

他のデジタル施策に置いていかれないように、仕組みそのものの進化が必要

──これからのアフィリエイトはどう進化していきますか?

河合:アフィリエイト単体ではなく、カスタマージャーニーのデジタル施策の中でどう使っていくか、テレビCMの影響や他の施策の関連性を見て、アフィリエイト活用の議論を進めていく必要があります。

最近議論した中では、ユーザーのデジタル行動の分析結果に基づいて、比較検討をしてからクライアントサイトに詳細を確認しにいくタイプ、テレビを見て認知してクライアントのウェブサイトを見て、そこから評判を確認するために比較サイトを見るタイプなど、ユーザーの動線を仮説立てしながら、アフィリエイトをどう活用していくかを考えようという話をしました。

仁宮:アフィリエイトは広告主と媒体社とのコミュニケーションが重要で、それがいいところでもあるのですが、他のデジタル施策がシステム的にどんどん進化しているなか、アフィリエイトは従来のシステムのままとなっています。

この背景には、アフィリエイトは個人の方も利用しているため、シンプルで使いやすいということを大切にしないといけないという理由があります。一般の人は複雑な機能、細かい設定は使わないから、使い方が難しいと個人の方が離れてしまうかもしれません。今後は、広告主側だけでもシステマチックに最適化を図れるようになれば、他のデジタル広告のように進化していけると思います。

例えば複数の比較サイトA、B、C、Dを見た時に、最終的にDでコンバージョンしたら、成果報酬はDにしか支払われません。Dに至る前でのA、B、Cのアシストは評価されないんですね。こうなると、A、B、Cのモチベーションが下がってしまいますから、アシスト評価ができるような仕組みを検討しないといけないと思っています。

他のデジタル施策ではアトリビューションとして評価されているように、アフィリエイトでもコンバージョンまでの動線を評価していく必要があります。

──アフィリエイトの新しい標準化などを提案していくのでしょうか。

仁宮:アフィリエイト業界は成熟しているからこそ、ある程度形が決まってしまっているところがあります。そのなかで、電通が旗振りをして、新しいアフィリエイトの基準をASPや媒体、あるいはツールベンダーなどと一緒に考えていきたいですね。ネクステッジ電通としてアフィリエイト業界を盛り上げていきたいですから、援護射撃をしていくつもりです。

河合:広告を掲載してほしい広告主の気持ち、サイトを経由して申し込まれない限り成果報酬が得られない媒体社の気持ち、それぞれのことが分かる広告会社だからこそ、課題を解決していくのが一つの使命だと思っています。電通グループとして推進していきたいですね。