デジタル活用で成果を出すにはNo.13
広告主、媒体社との交渉が全て。アフィリエイト広告の運用の裏側
2016/04/11
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
コンバージョンして初めて広告費が発生するアフィリエイト
──まずお二人の業務内容を教えてください。
仁宮:前職のアフィリエイトサービスプロバイダー(以下、ASP)での経験を生かして、アフィリエイト型広告の運用を担当しています。電通は、ASPではできなかった、トレンド情報やデジタル情報などをアフィリエイトに生かせることが強みと感じています。日々のコンサルティング、運用に加え、アフィリエイト業界を盛り上げるための施策も模索しています。
河合:私は、デジタル施策全般を担当しており、リスティングなどの運用型広告だけでなく、アフィリエイトも含めてPDCAを回しながら成果を上げていくことを目指しています。
──まずアフィリエイトの仕組みから説明をお願いします。
仁宮:一言で言うと成果報酬型の広告モデルです。申し込み、購入など、広告主が目標とする成果に至って初めて広告費用が発生します。
広告主となるクライアントは、金融、エステ、化粧品など幅広い業界にわたっています。また、有名Eコマースサイトの多くがアフィリエイト広告を活用しています。コンバージョン獲得のうち、アフィリエイトの占める割合がかなり大きいクライアントもおり、非常に貢献度の高いマーケティング施策になっています。
一方、アフィリエイト広告を掲載するメディアも多くあります。アフィリエイトというと、個人のブログをイメージするかもしれませんが、普段皆さんが接している比較系のウェブサイトなどがアフィリエイトの媒体になっています。また、自社の会員を持っていて、サービスの一環としてポイント付与のプログラムとしてアフィリエイトを使っていることもあります。
──会員サイトで、保険の見積もりやサンプルの申し込みをするとポイントがもらえるというようなものですね。そういう仕組みも、アフィリエイトになるのですか。
仁宮:はい。ですから多くの方が日常的にウェブサイトを利用する中で、アフィリエイトに触れているのではないでしょうか。
成果報酬が高い広告主が、必ずしも収益性の高い広告ではない
──アフィリエイト広告を出稿するに当たって、広告主として考えるべきことは?
仁宮:先述のようにアフィリエイトは、定められた成果地点(コンバージョン)に至って初めて広告費が発生するという性質があります。これは媒体社から見ると、広告を掲載したからといって、必ずしも広告費という売り上げにつながるものではないということです。
媒体社からは収益性を求められますが、必ずしも成果報酬の単価を上げればいいというわけでもありません。例えば、メールアドレス一つで登録が完了する100円の成果報酬と、氏名、住所、職業、家族構成などさまざまな情報を入力して初めて登録が完了する1000円の成果報酬があるとします。
一見、1000円の方がいいように思いますが、登録完了のハードルが高いのでコンバージョンしにくくなり、収益性では100円の方が高くなることがあります。成果に至らないといけないことを考えて、設計する必要があります。
媒体社と交渉する際には、広告主の優位性を伝えることが非常に重要です。広告主はアフィリエイトをやれば売り上げが上がる、と期待されるかもしれませんが、やれば売り上げが上がるわけではなく、私たちのような広告会社が広告主であるクライアントの思いや優位性を媒体社に理解してもらうことで、売り上げにつながるのです。まさに、交渉力と調整力が求められます。
河合:例えば、ある媒体において競合他社が報酬単価を上げた場合、媒体社としてわれわれのクライアントの優先度が下がって良枠での掲載がなくなり、獲得しづらくなることが起き得ます。しかし、ただ単純に報酬単価を上げましょう、という話ではソリューションになりません。ここで必要となるのが、媒体社との交渉です。ここでいう交渉とは、広告主と媒体社の代理人になるということではなく、中長期的に見て広告主、媒体社双方にとって収益につながる取引になるように、Win-Winの関係を構築することです。その方向性を見つけ、導いていくのが私たちの役割です。
競合ばかりクリックされる。媒体によってコンバージョンに差がある。その理由は?
──そうすると運用型広告と違って、掲載には、交渉、調整、双方の理解が必要な広告なんですね。
仁宮:はい。人との交渉は必ず発生します。こうした事情もあって、アフィリエイトは明日あるいは来週までに成果を上げたいというような、短い期間での運用には向いていません。むしろ、1カ月、2カ月、3カ月先のトレンドを見ながら、広告や単価を仕込んでいくことが重要になります。
河合:逆に運用型広告はスピーディーな調整ができるので、電通としては広告主のご要望に合わせ、他のデジタル施策と組み合わせた提案をしていきます。
──具体的なケースを教えて下さい。
河合:例えば、ある媒体で競合他社と並んで掲載された場合に、競合の方がクリックされてしまう。あるいは複数の媒体社に同じ訴求で広告を掲載したとき、媒体によってコンバージョンに大きく差があることもあります。
この2つの問題は、実は媒体の特性ということが影響しています。つまり、媒体によって、ユーザーの特性、モチベーションが違うため、どういったユーザーの特性なのかを見極めてコミュニケーション方法を選択しないと、成果に結び付かないのです。
ASP経由で配信すると、一括で多数の媒体に配信できますが、媒体個別の訴求調整が難しいというデメリットがあるので、目的に沿って媒体を選択していくことが重要です。交渉では、媒体の特性をつかみ、どういう訴求をしていけば成果につながるかを媒体社、広告主双方で議論していきます。
──良い枠を押さえるだけでなく、媒体に合わせた出稿が必要ということですね。他にはどんなことが重要でしょうか。
河合:広告主側から、申し込みにつながった人がどういう人なのかという情報をもらうこともあります。さらにユーザーニーズをつかむために追加調査することもあります。私は以前、マーケティング部門にいたために、定量調査やデプスインタビューの経験があるので、ユーザーがなぜこういう行動をするのか、ということを常に思考しています。この経験が、ユーザーのニーズをどう広告に結び付けるか考える上で、非常に役立っています。
アフィリエイトで顧客育成。新規会員をリピーターにするには
──お話を聞いていると、いわゆる運用型広告とはずいぶん違いますね。
河合:そうですね、広告主であるクライアントとは、週に1回は2時間くらいのミーティングをしていますし、毎日電話やメールで課題について議論したり、提案したりしています。
──アフィリエイトではカスタマージャーニーをどのように設定していますか?
河合:カスタマージャーニー設計については、電通の中にマーケティングセクションがあるので、連携して一緒に取り組んでいます。一般的なユーザーの動向調査で分かることもありますが、商材によってターゲットユーザーも違うので、クライアントから情報をもらって最終的にはクライアントと一緒に設計します。
カスタマージャーニー設計では、デジタルだけでなく、リアルのコンタクトポイントでのアクションも加味しています。デジタルとデジタル以外の部分を組み合わせられるのは、電通の強みでもあります。例えば、テレビを見て商品を知り、比較サイトで検討、最終的に申し込みなど、デジタルとデジタル以外のユーザーの導線を仮説に基づいて可視化していきます。それをストーリーにして、アフィリエイトを含めたデジタル施策を考えています。
仁宮:アフィリエイトでは、媒体ごとに顧客を育てていくというのも施策のポイントです。例えば、あるEコマースサイトがポイントサイトにアフィリエイト広告を掲載したけれど、その媒体経由の売り上げがなかったとします。このとき、すぐにあの媒体はだめだ、と結論付けるのではなく、その媒体で似たような業種の成果はどうなのかを調べます。もし成果が上がっているようなら、PR方法を変えれば成果が上がる可能性があります。
実際の例では、まずEコマースサイトの会員登録キャンペーンを実施、その後に物販のキャンペーンを実施するというように、2段階にすることで売り上げにつながったことがあります。ユーザーの属性を見て、会員登録、リピート購入、さらにはファンになってもらうというように、アフィリエイトを通して顧客育成をするような施策を織り交ぜていくことができます。
後編では広告主、媒体の双方がWin-Winになるために実施している取り組みなど、さらにアフィリエイトの真髄に迫っていきます。