北陸観光の実態を位置情報データから見てみた―その3【NewsPicks×電通報】
2016/05/25
電通「人の流れラボ」研究員の秋元です。「北陸新幹線の開業によって、北陸観光の人の流れがどのように変化したのか、位置情報ビッグデータを活用して見てみよう」シリーズの3回目です。
1回目と2回目の記事はこちらを参照ください。
北陸観光の実態を位置情報データから見てみた -その1
北陸観光の実態を位置情報データから見てみた -その2
1回目の記事で日本人来訪者の分析を行い、2回目の記事では富山県に焦点を当てました。以下はそのまとめです。
今回はドコモ・インサイトマーケティングのご協力の下、モバイル空間統計※のデータを活用して、富山県への外国人来訪者の特徴を細かく見ていきます。
※モバイル空間統計(訪日外国人版):ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使用して作成される人口の統計情報です。訪日外国人を、1時間ごとの変化(時間分布調査)や指定期間内の延べ人数(期間調査)などを把握できます。期間調査では入国空港・出国空港別の集計や前後の滞在場所の集計など、これまでの統計には無い新しい調査ができます。
調査時期は、北陸新幹線の開業前を2015年1~3月、開業後を2015年4~6月として比較しました。時間帯とエリアは、観光時間帯となる9:00〜18:00の間に、1時間以上、富山県に滞在した人を集計対象として設定しました。さらに今回は、入国から出国までの全日程の滞在状況が把握できている方のみを集計対象にしています。
中部エリアと東京エリアからの入国者が大きく伸びた
それでは、富山県に滞在した外国人来訪者を、入国した空港別に見てみましょう。
圧倒的に中部国際空港と成田国際空港が大きく伸びています。エリアでは、東京エリア(成田国際空港・東京国際空港<羽田空港>)と中部エリア(中部国際空港)が2大入国エリアとなります。
この二つのエリアからの来訪者の居住地域を見てみましょう。
東京エリアからはアジア圏以外に居住する来訪者が約3割存在しますが、中部エリアからはアジア圏でほぼ100%になっています。関西国際空港や他の空港も同様に内訳を見てみたのですが、中部エリアと同様にアジア圏からの入国者が9割を超えていました。アジア圏以外からの来訪者のほとんどは、東京エリア→富山県へ流入していることになります。北陸新幹線はアジア圏以外からの来訪者の開拓に大きく貢献しそうです。
東京エリア→富山間の経由地を見てみよう
次に東京エリアからの入国者に限定して、富山県入りする前に立ち寄った経由地を市区町村単位で見てみましょう(1時間以上滞在した市区町村のみが集計対象になっており、1時間未満の立ち寄りは集計対象外です)。
アメリカからの来訪者は「東京エリア→愛知県・大阪府・京都府を経由→富山県」といったルートを通る人もおり、経由地が西側に広がっています。一方、アジア圏からの来訪者は「東京エリア→山梨県・群馬県・長野県・石川県・岐阜県エリア→富山県」と北上ルートに集中しています。ヨーロッパ圏の方々は空港のある東京都・千葉県以外の経由地ではほぼ滞在が見られませんでした(「直接富山県入りしている」もしくは「市区町村単位の滞在者数が少な過ぎて、匿名化処理の関係上、滞在者数がカウントされなかった」のどちらか)。
消費金額や平均泊数から富山県の特徴を確認する
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」(平成27年)を見ると、東京エリア(成田・羽田)から入国した台湾人の平均旅行消費単価は約12万8000円、平均泊数は約6.8泊であることが分かっており、この数字を来訪先の都道府県で分け合っています。
先ほどの分析を深掘りした結果、台湾からの来訪者は山梨県・群馬県・長野県・石川県・岐阜県を経由して富山県入りすることが把握できているので、それら各県の数字と富山県の数字を比べてみました。この散布図は観光庁の「訪日外国人消費動向調査(平成27年)」の「訪問地別×国籍別の1人1回当たりの旅行消費単価」と同調査の「訪問地別×国籍別の平均泊数」から作成しています。なお消費単価は「訪問地で消費した1人当たりの総額」となっているため、現地平均泊数で除して「訪問地で消費した1人当たりの1泊当たりの金額」に換算しました。
数字を見てみると、富山県における1泊当たりの消費単価は長野県の6割程度、同じく平均泊数でも他県に比べて低い数字になっています。
台湾からの来訪者のお金の使い方
データはRESAS「観光マップ:外国人消費花火図」から、2015年1~6月分のジャンル別の消費金額の割合(VISAカードの利用額)を抜粋しています。同データにはサンプル数や推計の表示がありませんでしたので、あくまでも傾向を確認するものとして、実金額ではなく各県ごと・ジャンルごとの割合を見ていくことにします。
数字によると、消費単価の高かった長野・石川県は「小売」の割合が非常に高いことが分かります。一方の岐阜県は「宿泊」の割合が高いです。富山県はその中間となり、「交通」の割合が高めなのも特徴です。
「小売」について内訳を見ていきましょう。長野県はファッションとデパート・高級小売で約9割を占めます。軽井沢・長野駅の大型商業施設の影響でしょう。石川県もデパート・高級小売が多いですが、他県に比べて薬局・ドラッグストアが多いのも特徴的です。
富山県はスポーツ・レジャー用品の割合が高くなっています。立山・黒部といった登山観光の名所があり、それに関連した消費だと思われます。「買い物したくなる場所」として強みを発揮している長野・石川県に対して、富山県は「ハイキング・トレッキングの名所」としての認知をさらに広げ、関連グッズやアクティビティーサービスの消費の増加、ひいては泊数の増加につなげたいところです。
富山県への来訪者を増やすには長野県からの流入がカギ
最後に今回のまとめです。
次回はアメリカからの来訪者について分析を進めたいと思います。
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モバイル空間統計とは、NTT ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使用して作成される人口の統計情報です。「モバイル空間統計」はNTTドコモの登録商標です。
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