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未来の難題を、こう解いていく by Future Creative CenterNo.2

2020/08/19

独自の可視化メソッドで、未来の事業を切り開く専門チーム「Future Vision Studio」誕生!

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center」は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティーでサポートする70名強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティー」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

今回は、世界から注目される食転送プロジェクト「OPEN MEALS」を牽引するセンター員の榊良祐氏が、そこで得たナレッジを生かして「未来を可視化するプロジェクト」として立ち上げる「Future Vision Studio」(FVS)について、世界トップクラスの未来分析デーカンパニー・アスタミューゼ社長の永井歩氏、イラストコミュニケーションサービスを中心に創作活動支援サービスを運営するピクシブ執行役員の東根哲章氏と共に、FVSで実現したいこと、そして3社の連携が生み出すものについて語りました。

アスタミューゼ永井、ピクシブ東根、電通榊
※この取材は、オンラインで行われました。
 
FVSロゴ

描いた未来からバックキャストし、今取るべき選択肢を考える

榊:鼎談に入る前に、読者の方に向けてFVSの紹介ができればと思います。FVSは、Future Creative Centerで手掛けているプロジェクトのひとつで、一言で言えば「未来をつくるプロジェクト」。企業のさまざまなアセットと、電通の妄想力・企画力を掛け合わせて、魅力的な未来を高解像度にビジュアライズする。そのビジュアルを基にバックキャストして、今必要なアクションを導き出し、プロトタイピングや事業コンサルティングなどを通じて「未来ヴィジョン」を具現化させる、異業種4社連携のプロジェクトです。

最近は“VUCA”の時代ともいわれ、変化が激しく、未来は複雑化しており、そこにニューノーマルが加わって、ますます予測不能になっています。  

これからの時代は、過去の延長線上で未来を予測するのではなく、まず「つくりたい未来」=「Future Vision」を先に描き、その実現に向けて着実に進んでいくアプローチが有効だと考えています。この手法を「ヴィジョンドリブンメソッド」と名付け、独自のフレームワークを開発しました。

実はその先例となったのが、未来の食体験を共創する「OPEN MEALS」の取り組みです。食転送プロジェクトなど、「超飛躍的なヴィジョン」をまず妄想して、そのヴィジョンを基に研究者を取材。リアルに何ができるかを編集し、未来をビジュアライズしました。まさに未来ヴィジョンドリブンで行われた事例であり、多数のメディア露出、企業からの問い合わせも頂き反響がありました。

OPEN MEALS①

OPEN MEALS②
OPEN MEALS

この手法に可能性を感じ、企業アクションなどに拡張できないかと、FVSが立ち上がりました。具体的には、独自のフレームワークを活用した「未来事業開発プログラム」や、未来事業のコンサルティング&プロトタイピング、そして飛躍的な未来ヴィジョンを発信するオウンドメディアの運営を考えています。さらにパートナーとして、アスタミューゼとピクシブにお声掛けしました。

永井:私たちアスタミューゼは、世界中の知財や技術情報をデータベース化し、新規事業開発や技術活用のコンサルティングを行っています。そのデータを活用し、未来の可能性を分析する「未来データアナリスト」としての役割ができればと考えています。

ただし、私たちの分析した未来の可能性をより魅力的に、ワクワクして共感できるストーリーに編集することが重要です。なぜなら、いくら未来の可能性を整理しても、その未来を多くの人が「実現したい」と思わなければ、そうなる可能性は極めて低いからです。そこで、私たちの分析結果を基に、電通が未来を構想・編集するという流れになっています。

榊:われわれ電通は「未来クリエイター」の役割ですね。

東根:pixivはイラストを投稿するプラットフォームとして2007年にサービス開始し、これまで多くのクリエイターによって9000万点以上の作品が投稿されています。イラストレーターは単に画力が高いだけなく、彼らの独創力や想像力も非常に魅力的です。そこで、そのイラストレーターの力を借りて、予測されたクリアな未来を可視化する「未来ビジュアライザー」という役割はポテンシャルがあり、世の中に貢献できると考えました。 

榊:具体的な3社の連携としては、まず、アスタミューゼの俯瞰したデータを軸に未来の可能性を分析し、それを電通のクリエイターの飛躍的なアイデアで拡張し、ヴィジョンをつくる。最後に、ピクシブがその未来をビジュアルに落とす。この関係性がうまく回れば、良い化学反応が起きると思います。さらに、モノとして実際に手に取れる形にできるよう「未来プロトタイピスト」のKonelというクリエイティブカンパニーも参加しています。この4社連携で、超高解像度な未来を可視化するのが目的です。

ビジュアライズが共通言語となり、多くの人の共感を得る

榊:ここからは、FVSの意義について。アスタミューゼは、技術のデータベース化を通して、企業コンサルティングをしていますよね。僕がすごいと思ったのは、世界中の技術・知財情報を、成長市場の最新ニーズや社会課題から検索できるサービスです。いわば「技術の逆引き」ができる。

永井:そうですね。技術情報が780万件、特許情報が1億1000万件ほど蓄積されていて、ユーザーは目的に合った技術・知財情報を見つけることができます。

逆引きの機能を考えたのは、今は技術が進化・成熟したことで、例えば、ある特定業界のためにつくられた技術が全くの異分野に転用できるケースが増えています。逆に言うと、異分野の技術を自分の産業に持ち込むだけで、飛躍的に進歩するケースがあるのです。

さらにここ10年は、技術・知財情報だけでなく世界中の「課題」に関する情報も集めています。その中で重要視しているのは、資金の流れがありながらも、まだ解決できていない課題。例えば、「グラントデータ」と呼ばれるような、大学や研究機関が外部の資金で行う研究テーマや、ベンチャー企業の新事業の内容など、さらには、世界中のクラウドファンディングのプロジェクトの情報も集めています。

榊:FVSに参加した理由は何ですか?

永井:「ビジュアルでの可視化」に可能性を感じたからです。未来を分析し、そのイメージを伝える中で、テキスト・言葉の限界を感じていました。言葉は相手の想像力に委ねるので、同じ言葉でも一人一人が抱くイメージは異なります。結果、共感やコンセンサスが取りづらい。特に日本企業は、意思決定に多くのコンセンサスを必要とします。たくさんの人が共通の未来イメージを抱かないと進みにくい。そこに課題を持っていました。ビジュアルならその点を突破できるかもしれない。同じイメージを共有しやすいですから。

榊:それは僕が進めてきたOPEN MEALSでも感じたことであり、FVSを立ち上げた大きな理由です。このとき、大学研究者や3Dプリンターのエンジニアなど、さまざまな分野の専門家と話し合ったのですが、違う分野の専門家が集まり、見たことのない未来のヴィジョンを話すと、日本人同士でも、全く議論がかみ合わないことがよくありました。そこで、僕の頭にあるヴィジョンを絵に描いてミーティングに持っていくようにしたのです。すると、劇的に議論が進んだんですね。「それならこの部品はここに持ってくるべき」「この技術はこうすれば実現できる」と。

誰も見たことのない未来をつくる、しかも多種多様な専門家が集まってつくる上では、ビジュアライズが共通言語にも羅針盤にもなります。それは、今回のプロジェクトに通じる大きな発見です。

「未来は一人の妄想からから生まれ、社会の選択が育てる」

永井:何より、いくら未来の可能性を分析しても、その未来に多くの人が共感し、「実現したい」と思わなければ意味がありません。その点でも、ビジュアライズには価値があると。

榊:僕がよく言うのは「未来は一人の妄想からから生まれ、社会の選択が育てる」ということです。最初は一人の妄想ですが、それを多くの人が共感することで実現に向かうのだと思います。

そして、このビジュアライズを担うのがピクシブです。日本最大、世界でも珍しい規模のイラストレータープラットフォーマーだと思いますが、今回FVSに参加した理由はどんなものですか。

東根:昨年、FVSの手法を使った宇宙食産業共創コンソーシアム「SPACE FOODSPHERE」にお声がけいただいたのがきっかけです。2040年以降の月面宇宙食産業を考えるもので、多くの機関や専門家が考えた未来を、イラストレーターのJNTHED氏にビジュアライズしていただきました。

ビジュアルで表現することで共感を得やすくなる、逆にいうと言葉だけだとなかなか伝わないというのは、多くの場面で私も痛感します。未来というテーマは、創作意欲を刺激されるし、見る側も斬新で見ていて楽しいということを改めて感じました。また、一人でアイデアを考えるのではなく、視点が違うさまざまな業種の専門家が集まることによって、アイデアがより膨らんでいきます。その結果、一人ではできないアウトプット(作品)になるはずだと確信しました。 

「SPACE FOODSPHERE」

SPACE FOODSPHERE

榊:ピクシブのイラストというと、アニメや漫画など、特定ジャンルのイメージが強いかもしれません。でも実際は、建築や自然物など多様なジャンルを描けるイラストレーターがいます。日本のイラストレーターのクオリティーは世界と比べても非常に高いので、もっとさまざまな分野に活躍の場が広がればいいし、うまく僕らのプロジェクトとマッチングできればと思いました。

東根:イラストレーターはそもそも何かをクリエイトする人なので、創造的な思考に秀でた方がたくさんいます。今後、FVSで未来のヴィジョンを発信していくことで、その発信に刺激を受けて「プロジェクトに参加したい」というイラストレーターが増えるなら、プロジェクトとしてより良いサイクルになると思います。

以前、京都で神社仏閣の内装や襖絵を手掛けている方が「40年後や50年後に評価される絵を考えている。今は評価されなくてもよいので挑戦的な作品をつくりたい」とおっしゃっていました。宗教画は何十年、何百年とたってから注目されることがありますし、当時異端とされていたものが世の中に受け入れられていたりします。イラストでもそういった歴史に残る仕事、さらには歴史を開拓していきたいですし、FVSにはその可能性があると思っています。

異分野の技術を入れられるかが、イノベーションが生まれるカギ

榊:永井さんは先ほど話した通り、既に多くの企業の未来事業開発のお手伝いをされていますが、進めていくコツはどこにあると思いますか。

永井:先ほどの「技術の逆引き」ではないですが、いかに異分野の知見や技術を取り込めるかではないでしょうか。オープンイノベーションを見ていると、異分野同士の方が成功につながると感じます。近い分野の企業は、どこかで縄張り争いに陥りやすいですから。

一方、遠い分野では言語が違うのでコミュニケーションしにくい。そこをビジュアライズで補えれば、一気に動くのではないでしょうか。

榊:その意味では、FVSのプログラムは、基本的には一つの企業内で行いますが、未来を可視化する際にアスタミューゼのデータベースなどから他の産業の技術もうまく取り入れて絵にすると、新規事業として回り出しやすいかもしれませんね。

永井:榊さんはOPEN MEALSの体験談で話していたように、カルチャーの違う異分野の専門家たちの意見を粘り強く聞きながら、時には我慢しながら、きちんとアウトプットまで持っていった。さまざまな分野のトップの研究者・技術者とこうやってコミュニケーションできる方は少ないと思いますし、だからこそ今回の連携も生まれたと思っています。

榊:ありがとうございます(笑)。それは自分の特徴かもしれません。大学の時から異分野の研究者の話を聞きにいって、作品をつくることが好きだったので。

最後に、FVSは未来のヴィジョンを描くプロジェクトですが、皆さんが個人的に実現してほしい未来はありますか。

東根:僕は、このプロジェクトをキッカケにイラストの価値が上がる世界になってほしいですね。マンガやオタク文化が学問やアートとして扱われることがあるように、イラストの価値も今以上に上げていきたい。未来のヴィジョンを描くことでイラストそのものの可能性や魅力をもっと広げて、想像することや創造することの魅力を多くの人に伝えていきたいです。

永井:私は未来を分析する企業にいますが、最終的には未来を予測する人がいなくなり、自分がそうあってほしい未来を実現する側に、皆が回ればと思っています。誰もが「つくりたい未来」を能動的に選び、実現するために動く。そんな世界になればいいですね。

榊:僕は、「遊ぶ」と「働く」に垣根のない世界をつくりたいですね。例えば2050年、世界人口100億人、人生100年の時代。新興国が台頭し、リテラシーは底上げされ、女性活躍も加速し、定年という概念もなくなり、働ける人と時間は爆発的に増えるはずです。一方で、AIやロボットも劇的に進化し、人間と協働しているはずです。その時、世界中の人々は、自分の「得意」「好き」なことを社会に提供し、感謝され、それだけで世界が好循環に回っていく。「いきがいドリブン」で回る世界が実現できたらいいなと妄想しています。このヴィジョンも、いずれビジュアライズしてオウンドメディアで発信していきます。ぜひ楽しみにしていてください。 

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