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コンテンツマーケティングの現場からNo.31

コンテンツは、リピーターを育てる

2016/05/31

新しいお客さまを増やすよりも、今までのお客さまに繰り返し買っていただくことに力を入れる。例えば、何度もお店に来ていただくとか、自社所有のさまざまなブランドを購入していただくとか、リピーターを増やすためのマーケティングに重点をシフトしていく。そんなマーケティング戦略が、最近しばしば聞こえてくるようになりました。

顧客維持戦略といわれたり、リレーションシップマーケティングといわれたり、広い意味でCRMという言葉が使われたりする領域です。
コンテンツマーケティングは、この領域でも機能する手法です。
その理由を少しご紹介したいと思います。


1)コンテンツは、「ネタ」である

何度も来ていただく、買っていただくためには当たり前ですが、ユーザーに「そのブランドと繰り返し接触しても構わない、むしろ歓迎」と思われるような友好的な関係が必要になります。関係をつくるのは日ごろの互いの「やりとり」であるわけですが、ここは長年連れ添った夫婦の会話と同じで「ネタ」がなければ、やりとりが発生しません。
もちろん、ネタとして最も適しているのは新商品です。しかし、企業が、毎日の何げない会話のネタのためにその都度新商品を提供していくことは不可能です。そこでコンテンツの出番となります。

コンテンツは、「ブランドにまつわる」(結果としてその商品を買いたくなることにつながる)情報の中で、相手にとって有益で説得力があることが必要となります。これこそが、生活者とのつながりを続けるためのポイントとなります。
逆に言えば、コンテンツの供給が減ったり、魅力度が下がったりすれば、せっかく関係のつながった生活者もどんどん離れていきます。


2)コンテンツは、顧客を知るヒントをくれる

情報というものは、発信すると集まってくるという性質があります。コンテンツを発信する際にそのコンテンツを見た人からのコメントを受け止める場をつくっておけば、そしてそこに積極的に書き込んでもらえるような仕掛けを企画の段階で入れ込んでおけば、多くのリアルな声を獲得することができます。もちろん、そのコンテンツを見た人=顧客というほど図式は簡単ではありません。

けれど、アノニマスの行動データと違って、「声」は定性データなので、とり方次第で顧客かどうか判別することは可能です。これも私たちの経験上分かっていることですが、ブランドに思い入れがある人ほど多くのことを語ってくれます。

商品や企業に対して、一般の生活者がそこまで語ってくれるものなのか。私たちも数年前までは半ば懐疑的でしたが、実際にやってみると驚くほど多様な言葉で意見を述べてくれることがわかりました。これを分析し(それだけでも生半可な作業ではないのですが)、さらに行動データを掛け合わせていけば、思いがけないような顧客のニーズや商品の使われ方、使われるシーン、使い続けている理由などのインサイトを見つけ出すことが期待できるでしょう。

大事なのは、データから発見があった後に次のソリューションを生み出せるかどうか。ですが、これも分析チームの傍らにコンテンツの企画チームがいればこそ、可能になります。


3)広告は、新規客向けになりがちである

もともと広告の戦略、企画においても、新規客を獲得したいのか、リピーターを獲得したいのかは、しばしば議論されるポイントでした。けれど、デジタルが生活のインフラとなり、企業が24時間365日Always Onの状態で顧客とつながり続けることが物理的に可能になった今、限られたキャンペーン期間に一気に告知する広告の手法は、どちらかというと普段おつきあいのない方々、つまり新規のお客さまに気付いてもらうことが、メインの目的になりつつあります。もちろん、昔一度おつきあいがあったのに、その後関係が途切れている方に再び思い出していただく役割もありますが、これもデジタル上の日ごろのつながりをベンチマークとすれば、新規客の一種といえると思います。

海外では、コンテンツマーケティングは、ブランドエンゲージメントのためのもの。
コンテンツマーケティングは、まずコンテンツの読者を育てて、その後にマネタイズのフェーズになる、といったことがよく語られています。

顧客維持という新たなマーケティング戦略を考えるとき、コンテンツマーケティングはまた違った側面を見せてくれるはずです。