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アムネット日本上陸 グローバルプレジデントに聞くプログラマティック事情

2016/06/27

電通イージス・ネットワーク(DAN)の運用型広告(プログラマティックバイイング)のトレーディングデスクとしてグローバル展開するアムネット。その日本における拠点が、5月27日、スタートした。アムネットのグローバルプレジデント、アシュウィニ・カランディカール氏に、電通 デジタルプラットフォームセンターの大戸耕平氏が話を聞いた。

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大戸:アシュウィニさんは非常に早い時期からプログラマティックバイイングに取り組まれてきていますね。

カランディカール:アムネットの前身である広告会社で、プログラマティックバイイングが出始めたときから試行錯誤を繰り返してきました。電通と提携する前のイージス・ネットワークに買収されたとき、ナイジェル・モリス(DAN Americas & EMEA CEO)にトレーディングデスクを設立するべきだと提案して、2011年10月にアムネットがスタートしました。以来、日本が42カ国目のサービス拠点となります。私は、大学での専攻はコンピューターサイエンスでその後MBAを取得しましたし、キャリアからも、物事をテクノロジーとビジネス、あるいはクライアントと広告会社の両面から見ることができます。この5年間、新しいプロダクトを開発することが目的ではなく、クライアントのためにいかに結果を出すかという視点でやってきました。

大戸:競合のトレーディングデスクとの差別化ポイントは?

カランディカール:大手広告会社グループ傘下のトレーディングデスクは、ホールディングカンパニーの下請け的な形で仕事を進めます。クライアントにとっては他の選択肢はありません。でも、私自身がクライアントの立場だったら強い抵抗を感じるでしょう。アムネットを設立したとき、われわれは断固としてその形をとらない決意をしました。

この5年間、イージス、そして電通との統合を進めてきましたが、この在り方は非常にユニークです。某大手クライアントの扱いを競合のトレーディングデスクから奪取したとき、クライアント担当者は実際に作業を担っていたトレーディングデスクの担当者とは会ったことがなかったそうです。われわれアムネットは、大手クライアントに提案する際、DAN傘下でメディア領域のサービスを担うカラやビジウムなどと相互に補完しながら連携し、共にクライアントと直接向き合う。このポイントこそが、私たちの最大の優位点です。

規模に関係なく、クライアントに新たな価値を提供することが、われわれの存在意義の全てです。どれほど高機能なデータプラットフォームを持っていたとしても、クライアントにとって有益な形でデータを扱い、業績を上げるアクションにつなげられなければ意味がありません。すごくシンプルですが、でも非常に重要なことです。

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大戸:トレーディングデスクに関して今、透明性についての議論が活発化しています。

カランディカール:われわれはフィーでのビジネスモデルを維持できていますが、それはわれわれが常にクライアントに焦点を置いてきたからだと思います。重要なのは、クライアントに収益をもたらしているかどうか。フィーの透明性が問題になるのは、その対価として提供している価値への理解を得られていないことが原因です。

メディアはすさまじい勢いで変化し続けています。大手グローバルクライアントでさえ、試行錯誤を繰り返している状況です。さらに、プログラマティックバイイングの領域にはメディアやテクノロジー企業などさまざまなプレーヤーが参入し、さまざまなことを語り、物事をどんどん複雑にしているという側面もあります。

われわれの仕事はクライアントにとっての価値をなるべく分かりやすく、シンプルに提示すること。自分たちを賢そうに見せることに腐心するのではなく、何が提供されているのかを正しく理解してもらえるように努力することです。そして、疑問点があれば直接話合えばよいのです。

大戸:スクリーンが増え、ユーザーのメディア接触行動がますます複雑化する中で、プログラマティック取引は更に重要になってきます。アトリビューション分析については、どのように考えていますか。

カランディカール:アトリビューション・リポートは、10年ほど前からほとんどバズワード化していますね。もちろんDANや電通も対応していますが、そもそもその目的は、誰が広告予算を出すか、どこに落とすかを決めることにあります。

アトリビューション・リポート自体はセールスを上げてくれる魔法でも何でもないですし、お金もかかります。例えばテレビへの出稿を打ち切るつもりがなければ、テレビの効率が悪いと分かったところで意味がない。予算をいかに有効に使うか、という視点に立ち返ることが大切です。

例えば、車を売りたければディーラーの強化が何より重要ですし、化粧品であればなるべく大勢の人に試してもらう。焦点を当てるべきポイントが明らかであれば、まずは優先し、逆算して考えるべきです。「分析のための分析」にならないように、コミュニケーションの目的、これを明確に数値として追及することが何よりも重要です。

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大戸:グローバル・プラットフォームプレーヤーについては、どのように向き合っていますか。

カランディカール:グローバル展開するプラットフォームプレーヤーは、今や巨大な壁でユーザーを囲い込み、そのエコシステムの中で全てを提供しようとしています。ユーザーはその壁の外へ自分のデータを持ち出すことはできない。かつて一つの大手ポータルサイトが全ての入り口だった状況に回帰しつつあるともいえます。

今、全ての情報がモバイルデバイスに集約されつつあります。私も常にスマートフォンでグーグルとつながっているので、グーグルは私の予定や子どもや学校のことなど、私に関するありとあらゆることを把握しています。近い将来には、腕にチップが埋め込まれるようになり、スマホを持ち歩く必要さえなくなるでしょう。

2020年、東京をコネクテッドシティーに進化させることができるのは、電通グループに加え、上記のグローバル・プラットフォームプレーヤー、おそらく3、4つの企業に限られるでしょう。電通グループは彼らと競い合うのではなく、より壮大なスケールで物事を実現するために協働していく姿勢が大切です。

大戸:日本にも拠点ができました。今後のアムネットの抱負を聞かせてください。

カランディカール:日本でもメディア環境は、クライアントやメディアが追い付くことのできないスピードで変化しています。わずか2年前に、放送局の方々にこれからプログラマティックバイイングの時代が来ると言っても、一笑に付されただけで終わっていたでしょう。

アムネットのテクノロジーやデータにおける実績と、電通の組織力や機能を統合させることで、スケールの面でも優位性のあるサービスをクライアントに提供できます。モバイル時代に対応し生活者と緊密な関係を築くこと。われわれ電通グループはすでにそのケーパビリティーを十分持っていますし、同じ方向を見ています。私の仕事は、それをいかに成し遂げるかを共に考えていくことだと思っています。