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ラジオもライブも
心のキャッチボールから

2016/07/21

メール時代だからラジオがもっと面白くなってきた

ラジオは古いメディアだと思われているかもしれませんが、今はメールの時代ですからそのスピード感はすごいんですよ。打てば響く感じがあります。毎週月曜に「オールナイトニッポン MUSIC10」(ニッポン放送、午後10時~11時50分)という番組でパーソナリティーを務めています。音楽ジャンルにこだわらず、フルコーラスでお届けする番組なのですが、生放送の冒頭に話題を振ると、10分後、20分後には次々とメールで返事がきます。リスナーと一緒に呼吸をしている感じがして、以前にはなかった面白い体験です。

1960~70年代の深夜放送全盛期のラジオも面白かったですね。出演者のことを芸能人とも有名人とも思わないで、彼らがばかばかしい話をし合っているのを、同年代の私たちが横で聞いて笑っている感じ。話を共有しながら一緒に楽しめる時間でした。でもその当時は、リクエストやメッセージをはがきで送っていましたから、今から思うと「時間差」があったんですよね。

ところが今は私がコンサートをやると、早速番組にいろいろなメールが届きます。今年は私のデビュー50周年なのですが、1月18日の誕生日にライブを行い、5時間半かけて60曲近くを歌ったんです。そのすぐ後に、ニッポン放送で生放送をしました。すると、ライブに来ていたお客さまから続々と番組にメールが届けられました。「今、広島へ帰るバスの中でラジオも聴いてますよ」「家に着きました」といったメッセージを、生放送のスタジオで受け取ることができた。これは、深夜放送が全盛のころにはなかった、ドキドキするような新しい経験でした。

番組には、「83歳の婆(ばあ)でございます」「僕、12歳です」など、幅広い方からメッセージを頂きます。こちら側も「ええっ、12歳って中学生?」と盛り上がったりしています。離婚した50代の男性から「僕の寂しい心を埋めてください」とメッセージが来たりもします。男の人は未練たっぷりなんです。それに対しては、「きっと相手の方は、別の人と幸せにやってますよっ」なんて、きっぱりとお返事をしました。

ラジオは、リスナー一人一人と気持ちのキャッチボールができる安心感のある場、信頼感が築ける場です。なので、言い過ぎないように注意しながらも、友達のようにおしゃべりさせてもらっています。

森山良子さん

技術を駆使して歌唱を保つ、1分でも1時間でも長く

私たちの世代は、ラジオというメディアが持っている「共有感」というのを誰より早く体験し、深く知っています。いわゆる団塊の世代で競争が激しかった時代を生きてきて、今なお元気で人生を謳歌(おうか)している人の数が多いのでは。「若い者には負けないぞ」という気張った考えはなく、普通に年を重ねている。年齢の捉え方が昔とは全く変わってきているように感じます。

とはいえ、もちろん疲れるときもあります。他に何も武器はないので、私が唯一続けてこられた歌を、1分でも1時間でも長く今を保ちたい。疲れてくるとビブラ-トが多くなったりするので、自分で「おお、いけない」と思うことがあるんですね。声の荒れを感じているとき、最後にフォルテでビーンときれいに収めたいところに差し掛かると、「今が勝負どころだぞ」。きれいに声を出すためにどんなテクニックを使うべきか、必死に考えます。歌っている間中、こうしたことが常に私の頭の中に、はびこっています。

これまでたくさんの曲を録音してきました。でも満足がいく「これならオッケー」といえるものはまだありません。納得はいかないけれど今日で録音を終わらせないといけない、今日の自分はこれ以上できない。でも、ここから「伸びしろ」がまだあると思っています。ですから、終わった自分の歌唱はあまり聴きたくないですね(笑)。100人が聴いて100人が気付かないような細かいことでも、自分が納得するまで突き詰めたいと思っています。

歌と個性が一体のエンターテインメント

9月、幕張メッセで開催される「オトナフェス 深夜放送まつり」に、深夜放送の黎明(れいめい)期を知っている、今も現役のさだまさしさんや南こうせつさん、泉谷しげるさんらと共演させていただきます。舞台のキャリアも長く、人格的にも音楽的にも自分のものを築いてきた人ばかり。それぞれが人間としても面白みがあります。個性があって音楽が始まっている感じ。そして、その中でまた個性や音楽が磨かれてきて、今になっている。本当に揺るぎのない自分の信念を、音楽という主軸に託してきている人たちです。

森山良子さん
 

歌はもちろん、それだけで大きなエンターテインメントですが、ライブは誰がどういう歌を歌うか、どういう話をするかということも含めて一つのエンターテインメントだと思っています。人柄、個性までも含めて全体像でのエンターテインメント。そこがライブの面白いところですね。
ライブでは、お客さまがそういう人となりをどんどん引っ張り出すこともできます。出演する皆さんのいろいろな個性を聴いてほしいし、感じてほしい。私たちも投げられたら返しますよ。そうして観客と出演者が一緒につくり上げていったライブは、きっとお互いにとって思い出深い一瞬一瞬になります。
まだまだ50周年。また新しい気持ちで頑張ります。


 

パックインミュージック×セイ!ヤング×オールナイトニッポン オトナフェス 深夜放送まつり
9月22日、幕張メッセ幕張イベントホール。深夜放送まつりが46年ぶりにコンサートとして開催される。