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待っていても、はじまらない。―潔く前に進めNo.7

「見返してやる!」を、自分を突き動かす力へ。

2016/11/10

「やっぱりブログですかね。2007年位に書きはじめました。もう好きなことを好きに書こう、あとは就活しようと思ってました。でも、その時くらいから人気が出はじめて、『出版しませんか?』って声がかかるようになりました」

「もう好きなことを好きに書こう」。漫画家の清野とおるさんのブレークのきっかけは、自分が本当に好きなことを、誰に遠慮するのでもなくブログに書いたこと。清野さんの漫画の目が離せない面白さは、根底にある攻めの姿勢から来るのかもしれない。そんな第一印象から対談は始まりました。

(右から)漫画家の清野とおるさん、著者・阿部広太郎

清野さんは、1998年、ヤングマガジン増刊青BUTA掲載の『アニキの季節』で漫画家デビュー。代表作に『ウヒョッ!東京都北区赤羽』『ゴハンスキー』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』があります。清野さんとの対談から見えてきた潔く前に進むための3カ条はこちらです。

※書籍『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』第6章「生き方をつくる×漫画家 清野とおる」をもとに作成

 

見返してやる!を原動力にする。

皆さんにとっての原動力は何でしょうか? 相手を楽しませたい、喜んでもらいたい。そんなポジティブな気持ちをエネルギーにするときもあれば、一方で、ネガティブな気持ちが強いエネルギーになるときもあるのではないでしょうか。

清野さん自身も「見返してやる!」という強い気持ちが原動力になった経験があるそうです。それは、高校3年生の時。ある出版社の編集の方と馬が合わず、打ち合わせで2時間近く待たされるなんてことも…。まだ新人で、編集の方に物申す訳にもいかなかった清野さんは、そこで下を向くのではなく、「こんちくしょう!」という悔しさを漫画にぶつけ、ライバル誌に投稿し、そこで連載を勝ち取ったのです。

コピーライターの仕事をしている僕にも、「見返してやる!」という気持ちを前に進む強い力に変えた経験があります。それは、コピーライター2年目。なかなか成果を上げることができず、宣伝会議が主催しているコピーライター養成講座に通っていたときのことでした。成績の良い順から、前の席に座る。簡単に成果が出るわけもなく、苦戦している中、クラスメートに言われたひと言があります。

「電通だけどたいしたことないね」

心にじわっと汗をかいたことを今でもよく覚えています。実際その通りで、僕は何も言い返せませんでした。ただ、その悔しさと情けなさは、いつか、いつか、いつか見返したいと、自分の中の爆薬となって、自分を突き動かす原動力となり、働く姿勢がさらに前のめりになったことを今でもよく覚えています。

 

無欲と貪欲を使い分ける。

清野さんにどうしても伺いたいことがありました。皆さんは、『ウヒョッ!東京都北区赤羽』という漫画を読んだことはありますか? 清野さんは漫画の中で、必ずといってよいほど、魅力的な人と出会ったり、出来事と遭遇されたりしています。そういう出会いをどのように手繰り寄せているのか清野さんに尋ねたかったのです。

「町を歩いている時は特に何も考えていません。自然体でぼーっとしている方が、とんでもないものが視界に飛び込んでくる。無心でぼーっと、無欲で歩きつつ、ちょっと面白いことがあったら、全力でそこに行くのがいいんです」

「面白いことを!面白いことを!」。そう目をこらして気を張って、日常を過ごすことで見つかるものは確かにありそうですが、何よりそれを続けていたら、自分が疲れてしまいそうな気がします。それよりも、リラックスして自然体でいる。何かピンときたときに、貪欲に突っ込んでいく。そのメリハリをつけておくことで、良い出会いをつくることにつながるのかもしれません。

僕自身、今回の書籍『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』(弘文堂)で対談させてもらった6人の方たちは、対談しようという目的で貪欲に出会いに行ったわけではありません。まず、無欲で出会い、その偶然を大切にする。そして、「面白い!」と思ったら、偶然を偶然で終わらせずに、関係を育てていく。連絡する、手紙を書く、会いに行く。皆さんとこうして対談させてもらえたのも、出会いのわらしべ長者のように、無欲と貪欲を使い分けて、出会いを手繰り寄せられたからでした。

 

体質になるまでやり続ける。

対談も終盤。僕は意欲的に漫画を発表していく清野さんに、これからどんなことに挑戦したいですか? そう伺いました。

「旅行とか行きたいですね、ひとりで。毎日毎日…もう漫画は疲れました(笑)。でも半日描かないだけでそわそわしてくる」

旅行という意外な答えを意外に思いながらも、清野さんが続けておっしゃったことにはっとさせられました。

「面白いもの見たら、描きたくなっちゃいますもん。みんなに知らせたいと思いますからね。面白いことを見つけた時は嬉しいですし、読者から反応をもらえるのも嬉しいです」

ああ、そうかと。清野さんにとって漫画を描くという行為は、習慣を超えて、体質になっているのだなと。何かを成し遂げる一番の近道は、やるべきことを習慣化すること。自分の生活の中に習慣として組み込むことで、毎日少しずつでも前進していく。その習慣の先に、無意識に肉体に刷りこまれ、体質にさえなっていく。だからこそ、清野さんは、読者の方に伝えたいという思いを胸に、次々と漫画を描き、それが生き方になっている。
好きなことを、自分らしく突き詰める。やり続ける。いずれそれは、好きを越えて生き方になっていく。

自分の道は、自分でつくる。

これは著書『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』の帯に書いたコピーです。自分の中に芽生える意志を大切に、続けていくこと。それこそが、自分の道をつくるということなのだなと、これまでの対談者の方、そして清野さんとの話を通じて、僕は見いだすことができました。

いかがでしたでしょうか? 清野さんから教わったこと、それは何かネガティブなことが起こったとしても、見返したいという思いを前に進む力にすること、そして無欲に自然体でいながらも、ここぞというときは貪欲にいくこと、そして好きなことを習慣化する、体質になるまでやり続けること。それこそが、自分の道をつくる秘訣なのだと思います。

清野さんご本人の言葉による思いは、ぜひ本書で感じてもらえたらと思います。
清野さんをもって、書籍内で対談した6人の「潔く前に進むための3カ条」は終了です。

この書籍刊行記念コラム、もう少しお付き合いいただきます。これまでは作家の方を中心に話を伺ってきました。次回は、ビジネスに立ち向かっている人はどのように潔く前に進んできたのか?をお届けしたいと思います。

書籍の番外編ということで、引き続き、どうぞご期待ください。