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リーダーシップとは公益のために奉仕すること

  • カート ボルカー

2016/12/22

リーダーシップとは公益のために奉仕すること

変化の激しいグローバル社会に対応するため、さまざまな企業や団体にとって、次世代リーダーの育成は大きな課題の一つです。今回は、意欲的なリーダー育成プログラムを運営する米アリゾナ州立大マケイン・インスティテュートのエグゼクティブディレクターであるカート・ボルカー大使に話を伺いました。

地位に関係なく人は誰しも優れたリーダーになれる

 

“リーダー”と聞くとどんなイメージが浮かびますか。多くの国や文化では、高い地位にいる権力者と同一視され、人々は彼らに従うのだとされています。しかし、私たちマケイン・インスティテュートでは「どんな地位の人でもリーダーになれる」と考えています。組織のトップに立つ人であっても、全く何の地位に就いていない人であっても責任を引き受けることはできるのです。

マケイン・インスティテュートは2013年、グローバルリーダーとの協働や育成を目的に、現場を重視する「ドゥ・タンク」(行動するシンクタンク)として設立されました。リーダーシップ育成のプログラムはもちろんのこと、人道支援、人権、安全保障、法治など次々と活動の幅を広げ、実行可能なプログラムの開発や実施に取り組んでいます。例えばコンゴの北キブ州では民主的選挙の実施条件を整えるプロジェクトを展開しています。また、人身売買については人身売買禁止法の強化を提唱しています。法案を成立させ、一般の人々の意識向上を図り、司法機関が迅速に被害者を見つけ出すために役立つソフトウエアを開発し、被害者の救出に貢献するなど、行動重視の立場でさまざまな取り組みを行っています。

機関名は、発案者のマケイン上院議員にちなんで命名されました。私自身は旧知のマケイン氏から声を掛けられて構想段階の12年2月から参画し、現在はエグゼクティブディレクターを務めています。

さて、リーダーにとって一番大切なことは何でしょう。それは、“奉仕”です。自分自身の利益より公に共通の目的のために奉仕すること。リーダーは、公益のために行動しなければなりません。そしてそれを最も必要としている人のために奉仕することが大切だと考えています。難しい問題を難しいからという理由で回避することは簡単ですが、幾多の困難がある中で人々に奉仕し、リーダーシップを発揮することこそが重要です。それに本気で取り組むのであれば、大きな違いを生み出すことができます。これが私たちのリーダーシップ哲学です。

グローバルを視野に独自のプログラムを展開

 

リーダー育成で大切なことは、まずリーダーシップのコンセプトを正しく教えること。それは直観的に分かるものではないので、初めに正しいコンセプトを示さなければなりません。二つ目は、実際に起きたことの中から良い実例と悪い実例を教えること。そして三つ目はアクティブラーニング(能動的学習)です。問題を与え、自分で解決させる。その過程で多少のコーチングやディスカッション、アドバイスはしますが、その際も学生たちに常に当事者意識を持続させることが重要です。こうしたリーダー育成の考え方を基に開始したのが、マケイン・インスティテュートならではの「次世代リーダーシッププログラム」です。毎年、世界中から多様な経歴や特性、ポテンシャルを持つ次世代リーダー約10人を選抜し、各人のキャリア、今後の目標や計画に沿って全米中から選んだ企業・機関で勤務しながら、各自のリーダーとしてのアクションプランを精緻化してもらいます。同時に、プログラムに参加したメンバー合同でのトレーニングがあります。例えば、年4回行われる価値観やリーダーシップ、メディアやコミュニケーションのトレーニングなどです。

また、米国の政財界や市民社会の傑出したリーダーたちに直接話を聞く機会やフォーラムへの参加を通じ、ネットワーキングをサポートしています。15年9月からのプログラムでは、スターバックスの実質的創業者の一人ハワード・シュルツ氏、ジュリアーニ元ニューヨーク市長、グローバルメディアの会長らとの面談を実施しました。最後に、各人がリーダーシップ・アクションプランをインスティテュートのスタッフや専門家ら関係者の前でプレゼンして1年間のプログラムを終了し、自国へと戻っていきます。

次世代リーダーシッププログラム参加者と共に(2016年8月)
次世代リーダーシッププログラム参加者と共に(2016年8月)
 

人類共通のコアバリューが尊重される社会の実現へ

 

この次世代リーダーシッププログラムのコンセプトは、人への投資です。人は誰しも世の中に変化をもたらし、優れたリーダーになることができるのだという信念に基づいています。重要なのは、参加者の能力開発に1年間だけ投資するのではなく、その後もグループとしてのつながりを保てるようにすること。経歴や専門はさまざまだけれど、人類共通のコアバリュー(中心となる価値観)に対する責任や、変化の担い手としての役割を共通して持つ、優れた人格のリーダーたちによるグローバールネットワークを確立することです。これがさらなる未来への投資になります。このネットワークは長期的に見たとき、良い変化をもたらすための非常にパワフルな手段になるはずです。

このプログラムを通じて実現したい社会とは、リーダーシップが発揮される社会、人権や自由、民主主義などといった人類共通のコアバリューが尊重される社会、奉仕のコンセプトが行動で示される社会です。このプログラムに参加したリーダーたちがこれらの価値観をそれぞれの社会に浸透させ、支えていってくれることを願っています。