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中国人の消費インサイト

PR視点のインバウンド戦略 №2

  • 龍  雅綺

2017/01/17

中国人の消費インサイト

ひとまとめにできない中国人―常に変化する年代別インサイト

連載第1回でも紹介したように、訪日旅行者数が増加し、ニーズも多様化している現在、「中国人」とひとくくりにしたアプローチ方法は通用しません。

中国には14億もの人が34もの省でさまざまな生活を送っています。ここまで大規模な国になると、地域や収入、年齢によって価値観やライフスタイルは大きく変わってきます。特に年齢は、まず一つ目に考慮すべき大切なポイントです。

近年、目まぐるしいスピードで発展し続けている社会の背景の下、彼らの成長時の環境は年代で全く異なり、個々の考えに大きな差があるのです。日本でも団塊世代・バブル世代・ゆとり世代というように年代別でその特徴をまとめていますが、中国はより顕著です。

中国の各年代を表す70后/チーリンホウ(1970年代生まれ)、80后/バーリンホウ(80年代生まれ)、90后/ジューリンホウ(90年代生まれ)という言葉は、日本のメディアでも紹介されていますのでご存じかと思います。最近では00后/リンリンホウ(2000年以降生まれ)、80~90年代の間に85后/バーウーホウというように、さらに細分化される傾向もあり、ターゲットを考える上で欠かせない指標となっています。

代表的な70~90各年代の特徴として、まず70年代はコツコツ努力し、社会的地位を獲得してきた年代です。家族と健康を重視し、安定的な生活を好みます。物を選ぶときも一番に実用性を考慮します。

そして、一人っ子政策が始まった80年代生まれの中国人はきょうだいがいない分、友達を大切にします。そのため周りで流行しているトレンドに敏感で、海外のブランドやハイクオリティーな物を好みます。すでに結婚し家庭がある人も多く、事業と家庭に全力で没頭している状況です。しかし、不動産価格の上昇の中で、家庭も築かなくてはいけないため、人一倍プレッシャーを抱えているのもこの年代です。

また、インターネットの普及で豊富な情報に囲まれて育った90年代生まれの中国人は「個人主義」「自己中」「新人類」というタグがよく付けられ、理解し難い新しい価値観を持った層として注目を集めました。しかし、そんな90年代生まれも今や新社会人として企業に入社したり、事業を起こして自立し始めています。

われわれ電通公共関係顧問(北京)でも、90年代生まれのスタッフが年々増えています。社会人になった今は、以前のように好き嫌いだけで通す子どもではいられません。自分が好きかどうかはもちろん大切ですが、インターネットを自由に駆使し、価格や評価など総合的に判断する傾向にあります。90年代生まれの中国人は親が裕福な年代のため、金銭的なプレッシャーは比較的低く、低収入の割にはお金を大胆に使う人が多いのもこの世代の特徴です。

このように、各世代によって価値観やライフスタイルに大きな違いがある中国市場では、より具体的なターゲティングの確立がインバウンドというコミュニケーションを続けるための重要な第一歩です。

電通公共関係顧問(北京)でも、80、90年代生まれがメインとなり、常に変化する若年層の価値観について意見を交換

若年化する訪日中国人旅行者―彼らの求めるモノとは

日本政府観光局(JNTO)のデータによると、訪日中国人のうち、約8割を80、90年代の若者が占めています。この年代が多い理由としては、主に二つの理由があります。

一つ目の理由は日本が中国から近く、最短2泊3日で旅行ができるということです。費用についても1万元(約17万円)ほどあれば、十分に満足のいく旅行を楽しむことができます。まだそれほど収入のない若い人たちでも、友達同士での海外旅行を満喫できるというわけです。

そして、他人に写真を見せるのが好きな中国の若者のほとんどは、旅行中も旅行後もソーシャルメディアに写真を投稿します。そして友人や、注目しているインフルエンサーがソーシャルメディアに投稿した日本旅行の写真を見た人が「楽しそう!」だとか「私も行きたい!」と思うことによって、また新たな若者旅行客の訪日につながるのです。

二つ目の理由は、彼らの日本に対しての親近感です。この年代の中国人は日本のアニメを見て育った世代であり、アニメを見て日本語を勉強しようと志す人もいます。アニメが日本の好感度アップに果たしている役割は相当なものです。

最近では、日本のアニメーション映画「君の名は。」が中国での上映3日目で2.89億元(49億円)のチケット売り上げを記録しました。私の周りでも、映画を鑑賞したたくさんの80、90年代がソーシャルメディアで「とても良かった!」「皆におススメ!」とコメントしていました。

現代中国の若者は「いいものはいい」「好きな物は好き」と過去の歴史にとらわれず、自分の意見を尊重するスタンスをとっています。そして80、90年代生まれの若者たちの旅行に対する考えにも、そんな自分の意見を尊重するスタンスが見られます。

中国の若者向けのニュースメディア「好奇心日報」が今年9月に行った80、90年代生まれの若者たちへの調査によると、旅行のスポットを選択する際の要素として目立ったのは「リフレッシュできる所。仕事の毎日で、自分にご褒美をあげたいと思う」「誰もが知っている人気スポットには飽きた。新鮮感が得られる場所」「大好きな本や映画に出てきた場所」「旅行客ではなく、現地の人に人気な所」と、旅行に関しては有名スポットを巡るだけの普通の旅行ルートとは違う独自の「特別な体験」を期待していることが分かります。

そして80、90年代の中国人は個人旅行のメイン層でもあります。彼らは自由で、かつ特別な旅行体験を求めているのです。

     日本の居酒屋で現地の文化を楽しむ中国の若者

 

          日本でオリジナルレザーアクセサリーづくりを体験する中国の女性

 

「伝える」から「伝わる」メッセージの大切さ

日本と中国では、文化的な背景が異なるので、その意味において、コミュニケーションのギャップが発生する可能性は十分にあります。コミュニケーションのギャップについて考える場合、両者が交流する際に基準をどこに求めるかが鍵になります。自分たちの基準を標準的なものと考えて、他者を見てしまうケースは往々にして起こります。そうなると、結果としてコミュニケーションのギャップが生じることになります。これは、誰もが陥りやすい失敗です。

インバウンドにしても同様に、プロモーションのターゲット、つまりコミュニケーションをする相手が誰なのか、彼らは何が好きなのかをしっかり理解しないとギャップが生じることになります。

自分たちの魅力は何なのか、その中でターゲットにとって本当の魅力は何なのか。ターゲット視点の魅力探しからメッセージの切り口を探る必要があります。そうすることで、「伝える」メッセージではなく、「伝わる」メッセージになるのではないでしょうか。

さて、次回はそのメッセージをどう伝えるかについて、中国の最新メディア情報を北京から紹介したいと思います。