中国最新メディア事情、細分化するソーシャルメディア

PR視点のインバウンド戦略 №3

  • 龍  雅綺

2017/01/31

中国最新メディア事情、細分化するソーシャルメディア

前回の「中国人の消費インサイト」では、変化し続ける中国の消費者をしっかり理解し、「伝える」メッセージではなく「伝わる」メッセージを確立する必要があると紹介しました。今回は、そのメッセージを伝える中国メディア事情を紹介します。

財布も要らない?
スマートフォンひとつで成り立つ中国の現代都市生活

中国人の生活には、インターネットが深く浸透しています。その浸透スピードは日本を上回るものです。China Internet Network Information Center(CNNIC)第38回「中国インターネット発展状況統計報告」(2016年8月3日発表)によれば、現在中国でのネットユーザーは7.1億人に達しています。中国におけるインターネット普及率は51.7%で、これは世界平均を3.1ポイント、アジア平均を8.1ポイント上回っています。

また、モバイルネットユーザーは6億5600万人に上り、全ネットユーザーにおける92.5%がモバイルからもインターネットを利用しています。この統計からも、モバイル通信の発展、スマートフォンの普及といった、モバイルネット環境が中国の人々の生活に深く浸透していることは明らかです。

例えば、「WeChat」(中国版LINEともいわれるコミュニケーションアプリ)は通信機能に限らず、さまざまなジャンルの記事を閲覧できる媒体機能、レストランやスーパーなどいろいろな場所で直接会計ができる支払い機能もあります。

さらに、映画チケットの予約、割り勘などもWeChatで済ませることができるのです。そのため、現金を持ち歩かず、スマートフォンだけをカバンに入れて外出する中国人も少なくありません。

中国でも常にスマートフォンを見つめる姿は、「低頭族」と呼ばれ、社会現象となっている。
 

北京の地下鉄では、車内のほぼ全員がスマートフォンをいじっているといっても誇張にはならないでしょう。スマートフォンでネットに接続できなければ、それこそ生活困難、情報難民になりかねないのです。ある意味では、現代の中国人は、インターネットに絡め取られ、翻弄されている人たちだといっても過言ではありません。

固定電話のインフラが整備される以前に、スマートフォンが爆発的に普及したことで、中国は日本とは違った形で情報通信が発展しているといえます。

モバイル化の進展で細分化されるソーシャルメディア

中国と日本では情報流通面で違う部分が多々ありますが、その中でも特徴的なのはソーシャルメディアの細分化ではないでしょうか。

2016年に中国のソーシャルビジネスコンサルティング会社Kantar Media CICによって発表された「2016年中国ソーシャルメディアランドスケープ」では、中国のGoogle的役割を果たす「百度(バイドゥ)」、中国最大のEコマースサイト「Tモール」やペイメント事業を展開する「アリババ」、中国最大のオンライン通信サービスWeChatを提供している「テンセント」、2.82億人(2016年第二季度財務報告から)のユーザーが利用する中国版TwitterであるWeiboを提供している「新浪(シナ)」を中心に、ありとあらゆるソーシャルメディアがその周りに広がっています。

Kantar Media CIC 2016年中国ソーシャルメディアランドスケープ(2016年中国社会化媒体格局図)

 

大量の情報、そして膨大なインターネットユーザーが存在する中国では、上記の大手に加え、さらに細分化されたソーシャルメディアを利用する傾向にあります。

例えば、1980年代生まれの若いママユーザー層を例にすると、彼女は「WeChat」を利用して友達と連絡し食事の約束をします。グルメ情報アプリ「Dianping」で口コミの評判が良いレストランを予約し、ついでにクーポンもダウンロード。

友達と食事を済ませ、帰りの電車で「WeChat」の新ママコラムを購読、暇になったので「Weibo」で最近流行のドラマ情報や人気アイドルがアップしたコンテンツを見たりします。

家に帰り、育児専用のプラットフォーム「宝宝樹」でエディターや他のママたちがおススメしている赤ちゃん用品をチェック、気になった赤ちゃん用ブランドがあったので「百度」を使ってサーチ、さらに「Tモール」で調べて購入。海外の商品の場合、海外にいる友達に買ってもらったり、自ら旅行に行ったときに買ったりします。

中国の80年代生まれのママユーザーは、育児中もスマートフォンを手放さない。美容、グルメとさまざまなアプリを駆使し情報収集に余念がない。

このようにほぼ全ての情報収集をスマートフォンで済ませてしまうのです。この例からもお気付きかもしれませんが、中国人はどれかのソーシャルメディアだけを利用するというのではなく、需要によってソーシャルメディアを使い分けます。

情報収集をする際も同じです。そのため、中国では広く早く情報が得られる大手に加え、ユーザーの年齢や立場、需要に着目し、何らかの領域に特化したソーシャルメディアが発展しているのです。

ライブ動画「直播」がもたらす一体感と、新しい情報の拡散

そんな細分化されたソーシャルメディア環境の下、2016年に爆発的な発展を見せたのが、オンライン上のライブ動画中継。中国では「直播(ジーボー)」と呼ばれています。

現在、「直播」を採用するネットメディアや、「直播」そのものをメインとしたアプリが存在し、自分のライブ発信アカウントを取得したユーザーたちは、フォロワーのコメントに随時応えながらさまざまな内容のライブ発信を行います。

ライブ動画の中でフォロワーたちはインフルエンサーや有名人をリアルタイムで見ることができ、さらにコミュニケーションがとれるため、より吸引力があるメディアの形式として注目されています。

日本のニコニコ動画などでもこうしたライブ動画は一部のコアなユーザーに人気があるようですが、中国は日本と状況が違います。第38回「中国インターネット発展状況統計報告」(2016年8月3日発表)によると、2016年6月までに中国の「直播」利用者は3.25億人に達し、インターネットユーザーの約45.8%を占めます。

中国では新商品の発表会でインフルエンサーに「直播」をしてもらったり、企業管理者が自ら「直播」で商品を紹介したりもします。「直播」はありとあらゆるイベントに利用され、ユーザーのイベントに対する注目を高めています。

中国のインフルエンサーや有名人はファンの定着化のため、日々「直播」を通じてファンとのコミュニケーションをとっている人も少なくありません。「直播」は、好きなインフルエンサーや有名人を身近に感じたい、最新情報をいち早くゲットしたい、参加できないイベントも楽しみたい、というユーザーの需要を満足させることができるのです。

膨大なネットユーザーと日々変化し多様化する中国のメディア環境で効果的なプロモーションを実施するには、ターゲットをしっかり理解し、その需要や習慣に合わせた適切なメディア選択としっかり伝わるメッセージを確立する必要があります。

伝わるメッセージに関しては第2回の「中国人の消費インサイト」をぜひ併せて読んでいただけたらと思います。次回は、「地域ブランディング」についてお届けします。お楽しみに!