春先に、ふと2016年のテレビを振り返ってみた
2017/03/02
2017年の幕開けからふた月がたちました。昨年は国内外で歴史に残る出来事がいくつも起こりました。海外からは英国のEU離脱決定(6月)、米国大統領選でのドナルド・トランプ氏勝利(11月)のニュースが大きく報じられました。そして国内では、初の女性都知事に当選(7月)した小池百合子氏に注目が集まり、天皇陛下の生前退位のご意向表明(8月)は日本中に驚きをもたらしました。一方、エンタメ業界では年始早々のSMAP解散報道&謝罪騒動に始まり、年末をもってのグループ解散へと至りました。そんな「まさか」が多発した一年を、テレビを取り巻く話題、そして視聴率と共にあらためて振り返ってみました。
はじめに2016年の高視聴率番組をおさらいしましょう【図表1】。
1位はNHKの「紅白歌合戦」でした。出演歌手の世代交代が話題となりましたが、第2部が2年ぶりに40%を超えるなど今回も強さを見せつけました。「紅白」の次には、惜しまれつつ終了したフジテレビ「SMAP×SMAP」、春風亭昇太さんが初司会を務めた日本テレビ「笑点」と、いずれも節目を迎えた長寿番組がランクイン。さらには毎年高位の「箱根駅伝」に加えて、上位30位内には「FIFAクラブワールドカップ」「プロ野球日本シリーズ」「リオデジャネイロオリンピック」が並ぶなど、スポーツにも沸いた一年でした。
ここからは、スポーツ、ドラマ、バラエティーのジャンルごとに2016年のテレビをにぎわせたトピックをたどっていきたいと思います。
TOPIC1
スポーツ 〜 広島地区では視聴率50%超えの大フィーバー 〜
2016年に話題を呼んだスポーツイベントとして思い出されるもののひとつに、10月に行われた「プロ野球日本シリーズ」があります【図表2】。
2016年の流行語大賞にも選ばれた「神ってる」広島東洋カープが25年ぶりにリーグ優勝を果たし、メディアでも大きく取り上げられました。惜しくも日本一を北海道日本ハムファイターズに譲った日本シリーズ最終第6戦は関東地区でも25.1%を記録しました。
この大会は、カープのお膝元・広島県の熱狂ぶりが特に注目されました。楽天が東日本大震災を乗り越えての初優勝を飾り、やはり地元の盛り上がりが話題となった2013年大会と比べてもその熱の入りようは明らかで、広島地区の大会平均視聴率は52.4%と過半数に達します。このように、関東地区の視聴率ランキングからだけではうかがい知れない局地的な大フィーバーをもたらしたのが2016年の日本シリーズでした【図表3】。
スポーツ中継ではさらに、年末にも高視聴率が飛び出しました。「FIFAクラブワールドカップ(FCWC)決勝」(26.8%)です。世界的スーパースターばかりを擁する強豪レアル・マドリードに鹿島アントラーズが善戦。夢のような対戦カードにワクワクしながらテレビの前に座っていた方も多いのではないでしょうか。後半7分に柴崎岳選手が勝ち越し点を挙げると、毎分視聴率もうなぎ上りに上昇しました。
直後にC・ロナウド選手によって同点に追い付かれた後も延長戦にかけて毎分視聴率は上昇傾向を続け、最高で36.8%を記録。終盤まで視聴者が鹿島の奇跡の勝利を信じていたことがうかがえた一戦でした。
TOPIC2
ドラマ 〜 逃げ恥は「タイムシフト視聴率」が視聴率を上回る放送回も 〜
続いてドラマはというと、2016年は10月クールが活況でした【図表4】。
安定した人気のテレビ朝日「ドクターX」「相棒」に、恋ダンスがテレビを超えてYouTubeでも盛り上がり社会現象となったTBS「逃げるは恥だが役に立つ」、日本テレビ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」と話題作がめじろ押しでした。
そんな中、NHK総合の大河ドラマ「真田丸」も過去5年間で最高の期間平均視聴率(16.6%)を記録。主役以外の登場人物にも視聴者の共感を呼ぶ魅力的なキャラクターが多く、各キャラクターの出番が終了するごとにネットでは「◯◯ロス」が度々話題に。また最終回放送後には、ちょうど裏で放送していた先述のFCWC決勝の様子を真田(赤=鹿島)と徳川(白=レアル)の戦いに重ねたツイートも続発し、これには「うまい!」とうならされました。高齢層中心の印象を持たれがちな大河ドラマですが、「真田丸」は若者中心のSNSでも盛り上がれる作品となったようです。
さて、初回から一度も視聴率を下げずに推移し一大ブームとなった「逃げ恥」。ここで、気になる「タイムシフト視聴率」を紹介しましょう。12月6日放送回のタイムシフト視聴率は17.5%をマークし、リアルタイム視聴の数値である視聴率の16.9%を上回りました【図表5】。
また、同クールの人気ドラマ「ドクターX」と比較をしてみると、「ドクターX」の視聴率(期間平均21.5%)に及ばなかった「逃げ恥」(同14.6%)ですが、タイムシフト視聴率は全ての回で「ドクターX」より高く、録画してでも追い付きたいという話題性の高さを物語っています。このように、視聴率にタイムシフト視聴率の動向も併せて押さえることで、番組ごとの見られ方の違いをさらに立体的に捉えることができます。
TOPIC3
バラエティ 〜 国民的アイドルの代表番組、その視聴率TOP5は? 〜
最後にバラエティーからは、冒頭でも紹介した2016年ベストの中でも特に昨年を象徴する番組、フジテレビ「SMAP×SMAP」について触れたいと思います。1996年4月15日の放送開始から実に20年間・ 920回にわたって放送されてきましたが、2016年12月26日をもってその歴史に幕を閉じました。
2016年を振り返ると、1月中旬の解散報道に始まり、8月の正式解散発表を経て、年末のグループ解散を迎えるまで、メンバー全員が集う場として常に注目されてきたのが「SMAP×SMAP」でした。今一度、日本のエンタメ界を常にリードしてきた国民的アイドルの代表番組の足跡を視聴率と共に振り返ってみます【図表6】。
記念すべき初回放送の視聴率は22.4%。ちなみに同じ日の前枠の「月9」では木村拓哉さん主演の大ヒットドラマ「ロングバケーション」がスタートしています。
全放送回で最も高い視聴率を記録したのは2002年1月14日の34.2%で、稲垣吾郎さんが7カ月ぶりに番組復帰し5人が生放送に臨んだ回でした。そして、昨年「紅白」に次ぐ高視聴率(31.2%)を獲得した2016年1月18日は、年初の解散報道を受けメンバーによる謝罪メッセージが放送された回で、番組歴代4位を記録しました。12月26日に放送された最終回は23.1%(第3部)で、番組史上最長となる288分の拡大版で幕を下ろしました。
メンバーの手料理を食べたような気分になれるBISTRO SMAPや大物芸能人とコラボしたパフォーマンスなど、「SMAP×SMAP」ならではの企画をもう見ることができないと思うと寂しい限りですが、元メンバー一人一人がこれからも日本のテレビ界をけん引し活躍し続けてくれることを期待しています。
いかがでしたでしょうか。こうして2016年のテレビを取りまく話題を振り返ってみると、テレビコンテンツがSNS上でも話題になったり、逆にネット上での盛り上がりをきっかけにテレビ視聴につながったり、タイムシフトやウェブ動画配信などテレビコンテンツが多様な見られ方をするといったことが、すっかり当たり前の世の中になっているのだと実感します。さらには、民放公式テレビポータル「TVer」や「Hulu」「Netflix」といったVODサービスの普及が進んだのに加え、インターネットテレビ「AbemaTV」が4月の開局から半年余りの間に視聴アプリのダウンロード数を飛躍的に伸ばしたのも2016年のことでした。
今年、こうした動きがさらに加速する1年となることは間違いなさそうです。動画コンテンツの広がりは、しばしばテレビ視聴を目減りさせるものだと指摘されますが、これは裏を返せばテレビコンテンツに触れる機会の広がりでもあります。こうして振り返ることで、1年を盛り上げたといえるスポーツ、エンタメコンテンツが“テレビをハブに”拡散しているということをあらためて感じました。
少しずつ春の訪れを感じ始めた2017年。今年は、テレビから一体どんな話題が生まれるでしょうか。人々の背中を押してくれるような、明るい話題が尽きないことを祈ってやみません。