令和のテレビパワーNo.5
“人”基点のテレビプランニングで、広告効果を最大化する
2020/07/20
企業のマーケティング活動の重要な指標となる「テレビ視聴率」。その歴史は長く、1961年のACニールセンの測定機械による世帯視聴率調査開始から間もなく60年になります。この間、視聴率の調査方法は進化してきました。
電通は、高度化するテレビ視聴率データから、広告主のマーケティングターゲットを詳細に抽出・可視化し、そのターゲットがどれだけ視聴しているかという視点でテレビ広告枠を評価する新サービス「People Driven TV Planning」をリリースしました。本稿では、その内容をお伝えします。
「新しいテレビ視聴率データ」が続々登場
1961年に「世帯視聴率調査」が始まり、1997年には関東地区でのビデオリサーチによる「機械式個人視聴率調査」もスタート。この間、企業のマーケティング活動は、生活者の「性・年代」はもちろんのこと、さまざまな「意識」「価値観」「趣味」「嗜好」に着目し、モノづくりや広告計画が実行されました。
また、デジタルマーケティングが深化するにつれ、「購買」に至るまで生活者の多様な「意識変化」や「行動」が把握できる、さまざまなデータが活用可能になってきました。
そんな時代背景を踏まえ、2020年、ビデオリサーチの機械式個人視聴率調査は、測定地区とサンプル数を大幅に拡大し、全国の「個人」の視聴状況を把握できるリニューアルを実施しました。それはもはや広告主や広告会社のテレビ広告計画の立案だけでなく、放送局の番組制作や番組編成において欠かすことのできない標準データとなっています。
また、ビデオリサーチの機械式個人視聴率調査以外にも、インテージによる「Media Gauge TV」「i-SSP」、スイッチ・メディア・ラボの「SMART」など、新しいテレビ視聴率データが登場してきました。ビデオリサーチも「CUBIC」によるテレビ視聴データを提供し始めました。これら「新しいテレビ視聴率データ」の多くは、視聴者の「性・年代」だけではなく、「意識」「価値観」「趣味」「嗜好」など、さまざまなデータを含み、さらにPCやスマートデバイスからのネット利用状況やアプリの起動状況も、テレビ視聴データとともに集計が可能です。
このように、単純な視聴率以外のデータを取得できると、どんなメリットがあるのでしょうか。
例えば、平日夜のニュース番組は、35~69歳の男性視聴者が中心という印象が強いですが、それぞれの番組視聴者にどういう特徴があるかが見えてきます。
テレビ視聴以外に取得したデータを「有意差検定」という統計分析にかけると、さまざまなことが分かってきます。価値観や興味関心事、好きなタレント、閲読している新聞や雑誌、ネットの利用スタイル、消費行動。これらすべてに有意差(=統計的に意味のある差)が現れるのです。
つまり、番組によって視聴者の顔つきや暮らしぶり、趣味嗜好がまったく違うことが分かるのです。一見同じような視聴者がいると考えられていた平日夜のニュース番組にも個性があり、作り手の工夫が反映された、その番組を好んで視聴している生活者が、それぞれについていることが分かってきます。
人を基点とするマーケティング「People Driven Marketing」を進めている電通では、これまでもテレビの実視聴ログに基づくデジタル広告配信・効果検証の統合マーケティングプラットフォーム「STADIA」などで、同様のデータ収集・分析をしてきました。加えて、今回紹介した「新しいテレビ視聴率データ」も積極的に活用することで、テレビが持つ真のチカラを生活者視点で評価、活用していく「People Driven TV Planning」を推進していきます。
マーケティング階層視聴率で目利き力を高め、テレビのチカラを引き出す
「People Driven TV Planning」の事例として、金融関連の広告主が向き合っているであろう「株式購入意向層」「FX購入意向層」「カードローン資金利用層」の三つのマーケティング階層をデータから抽出してみました。番組視聴者のペルソナ同様に、有意差を一つ一つ検証することでさまざまなインサイトが把握できます。
また、それぞれの階層のテレビ視聴率も、従来の機械式個人視聴率と同様に、毎分刻みでの視聴率集計ができます。これは、地上波に加えBS番組でも計測されます。
他にも、アプリの起動ログで生活者を抽出しテレビ視聴率を集計することも可能です。このコロナ禍の始まりと緊急事態宣言期間を含む2月10日~5月10日に、「楽天市場ショッピングアプリ」「Amazonショッピングアプリ」「Yahoo!ショッピング」「メルカリ(メルペイ)」それぞれのアプリを起動された方のテレビ視聴率をいくつか見てみましょう。
サタデーステーションをはじめ、いくつかの報道番組では「Yahoo!ショッピング」アプリ起動者の視聴率が高めに出る傾向があるようです。また、「ダウンタウンなう」では、いずれのアプリ起動者も高い視聴傾向を示しており、ECサービスの広告接点としては非常に魅力的な番組です。
アニメ番組も特徴的で、「しまじろうのわお!」では、「メルカリ」「楽天」「amazon」の起動者に高い視聴傾向、「ノイタミナ」では「Yahoo!ショッピング」「楽天」「amazon」起動者に高めの視聴傾向がうかがわれます。
このように”生活者“の視聴率、すなわち「マーケティング階層視聴率」は、報道番組やアニメ番組間でさえ、階層ごとの違いが出ることが分かります。バラエティー番組やドラマは言うまでもなく、大型スポーツ中継や特番などでも、従来の性年齢区分による個人視聴率では見えなかった広告主のお客さまの発見を容易にします。電通では、こうした階層ごとの違いを踏まえた、さまざまなマーケティング階層視聴率を「People Driven TV Rating」として日々集計できる環境を整え、広告主へ提案していきます。
Netflix、Amazonプライムビデオなどの動画配信プラットフォームでは、各コンテンツのエンゲージメント指標のみでなく、その他膨大な興味関心データの徹底的な分析で一人の生活者の暮らしや価値観をコンテンツの制作や編成に活用しているといわれています。他方、放送局もその重要性に気づき、同様の取り組みが加速しており、視聴者分析の依頼を受けることも多くなりました。
視聴者=テレビにとってのお客さまは、デバイスについているのでなく、あくまでコンテンツについているもの。「People Driven TV Planning」は、この点をデータとして明らかにし、テレビが本来持っているチカラをさらに引き出していきます。