デジタルときどきグローバルNo.16
MITで徹夜しながら指輪をつくる。
(MIRAIハッカソン・後編)
2013/12/05
さてさて前回から、MIT Media Labでのお話がつづいております。いよいよ、ハッカソンの始まりです。初めて出会う仲間たちと、3日間でなんかひとつ作ってみよう!というイベントです。ワクワクします。
ひとつのグループには、それぞれ異なる能力を持ったMITの学生・研究者、日本のMITメンバー会社の方々、合計で6〜8名くらいがアサインされ、グループごとで異なるテーマにチャレンジします。前回ご紹介したように、各グループのリーダーは(僕以外は)そうそうたる皆さまで、明和電機の土佐社長のチームは「楽器」がテーマ、東大の暦本先生は「Human Augmentation(人間の拡張)」、ライゾマティクスの真鍋さんと石橋さんは「未来のエンタテインメント」、そして佐々木チームのテーマは、「New Connection」です。
いま、デジタルやらソーシャルやら、いろんな「つながり」の道具は増えたけれども、僕はどうも、今ある道具は同じ趣味や同じコミュニティの人を狭い範囲でつなげているだけのような気がして。言葉の違う人、世代や考えの違う人が出会えてつながれる、もっと新しい方法はないかなあと思い、このNew Connectionというテーマを設定してみました。
ハッカソンですから、3日で企画を考えるだけじゃなくて、プロトタイプまで完成させないといけません。スキルと時間の配分が難しい。企画案出しも、僕は日本ではやり慣れている作業ですが、今日会ったばかりの、バックグラウンドも違うみんなですから、迷走します。アイデアの粒度がバラバラです。グローバルなファシリテーション力がいる。リーダーとはいえ、あまり自分がやりたい方向に引っ張ってきても、せっかくのMITらしさが活きないので、ちょっと放任して様子を見たり。しかし英語での議論は疲れますのう。
そして丸一日かけて、アイデアがまとまってきました。意見をぶつけあいながら、みんなの距離が縮まっていきます。僕らが作ることに決めたのは、EmotionaRingという、位置情報とツイート等の言語情報をもとに、キモチが近い状態の人たちを結びつける「指輪」。ここからは分担作業の開始です。指輪のデザインとハードウェア設計は、UK出身の女性ピッパさんの担当。言葉からエモーションを取り出す部分はダイスケが。そしてバックエンドおよび指輪制御のプログラム部分を、インド出身のディーパックと日本のトモの共同作業で。そして佐々木が、プレゼンストーリーと映像づくり。
2日目は、それぞれの担当部分をガシガシ進めていきます。理想のゴールと、あと1日という時間に間に合わせるための妥協とが交錯して、だんだんハイになってくる感じ。いろいろ積み残したまま日が暮れていきます。しかしこういう集中作業をやると、なんかちょっとだけ英語が上達するような錯覚もあります。なんだかんだと時間は過ぎ、最後に、徹夜で作業していたディーパックから「できた!」というメールが届いたのは、最終プレゼン日の朝6時でした。
翌日は校舎のまわりで、みんなで演技しながらプレゼンビデオの最終仕上げ。時差ボケと徹夜明けで太陽の光がしみましたが、みんなが一体になって、ほどよい疲れのまま最終プレゼンのゴールへ。楽しかった…。他のグループも、歌あり、カツラあり、三輪車あり、電気ショックあり、で、とっても面白い発表になっておりました。いつかまた、ここにいるような人たちとハッカソンをやりたいなあ、と後ろ髪ひかれつつ、MITの興奮をたっぷりカバンにつめて、東京行きのフライトに乗りこんだのでした。