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2020年には羽田空港で実際にロボットを活用したい

Haneda Robotics Lab羽田空港ターミナルビルロボット実証実験 №2

  • 志水 潤一
  • 中嶋 文彦

2017/04/25

2020年には羽田空港で実際にロボットを活用したい

前回に引き続き、電通の中嶋文彦氏が日本空港ビルデングの志水潤一氏に話を聞きます。「羽田空港ロボット実験プロジェクト」の第1期実証実験を行うことで、どのような成果が生まれ、どのような課題が見えてきたのでしょうか。また、今後のプロジェクトの方向性や、将来的な羽田空港でのロボット活用の可能性についても探っていきます。

「羽田空港ロボット実験プロジェクト」の第1期実証実験

実証実験で見えてきた課題と成果

中嶋:振り返ってみれば、実証実験を行うロボットを公募で集めたというのは、プロジェクトのハードルを上げた、非常にチャレンジングな取り組みでしたね。

志水:知っている会社に声掛けしても良かったのですが、全体を盛り上げるなら、公募形式にして良いロボットに集まってほしいと考えました。今回の第1期の実証実験では、「清掃」「移動支援」「案内」の三つのカテゴリーで17社(チーム)の事業者を採択していますが、今回採択されなかった事業者はこれで終わりではなく、継続的にコミュニケーションを取りながら、何を改良して追加すれば社会実装して役立つロボットになるのかを考えて裾野を広げていきたいですね。また、羽田が起爆剤となって、ここでベースとなった活動を日本全国の空港に広めていくことで、海外から日本のどこの空港に降り立ってもスゴイと思われることがクールジャパンになっていくと感じています。

中嶋:案内ロボットは応募数が多く、採択も8社になりましたね。「案内」は、従業員とお客さまの両方の課題が見えやすく、世界的にもコミュニケーションロボットが注目されていることから、われわれも取り組みたいと考えていました。今回この3カテゴリーのロボットを試してみて、どのように考えられていますか。

志水:案内ロボットは、お客さまの反応が分かりやすいですよね。清掃ロボットを見て触ってみたいというお客さまはあまりいないと思いますが、スタッフや事業者の興味は強いと思います。「移動支援」は、業務活用だけでなく、お客さまが乗ってみたいという希望もあり、実験もお客さまとスタッフの両方で行い、訴求効果があったと思います。実際に触ってみて、取り扱いが難しいと思っていたことが意外と簡単だったというように、イメージが変わるというケースも数多くありました。

案内ロボット

 

中嶋:体験できる空間がこれまでなかった、ということですね。今回は、従業員の負荷を軽減するということと、お客さまのエクスペリエンスを高めることの両面での実験ができたと思います。

志水:遠隔操作型の案内ロボットを採択したのですが、在宅勤務などの可能性を探れると感じました。育児休暇後に復帰が難しい人でも、家にいながら案内業務ができれば、子どもを預けられる短い時間でも働くことができます。企業目線でも大きな効率化になるし、人手が足りない時間帯に熟練したスタッフに働いてもらえるのは、ありがたいことです。ロボットや先端技術を使った案内を羽田空港で展開していることが既知の事実となってくれば、お客さまも案内を受けやすくなり、さまざまな企業の参考になるなどの可能性も出てくると思います。

中嶋:従業員にとっても有用で、旅客のエクスペリエンスも高まるといったところですね。まずはロボットを動かしたいと考えていたのが、ロボットを介してテレワークのアイデアまで広がったのは興味深いですし、テレプレゼンスで労働力の課題を解消することは想定していないことでした。その他、手応えがあったことはありますか。

志水:空港という空間にロボットがマッチするのか検証できたのは、非常に良かったですね。対応できなかったロボットはその課題が見つかったことが成果だと思いますし、清掃効率が上がりそうで業務に使えそうなロボットもありました。移動支援は、人を乗せるものと物を運ぶものがありましたが、物を運ぶ方は今まで倉庫や工場などのバックヤードを中心とした運用を想定されていたこともあり、もう少し改良が必要だと感じました。人を乗せるロボットは、すでに市販化されているものも多く、対象とする業務を限定すれば使えるという手応えは感じています。

中嶋:空港はユニバーサルな仕様にはなっていますが、やはり汎用のロボットは、それなりに業務や場所に合わせたチューニングや改良が必要ですよね。実証実験を基に、センサーや駆動系、通信環境、安全性のチェックを行っていく必要があると感じています。コミュニケーションロボットは、まだまだ日本語の言語認識が十分ではないことが課題ですし、空港で質問されるデータセットを整備していく必要があり、その区分けも分かってきました。今後、どの順番で効率性を高め、お客さまのエクスペリエンスを高めていくかが見えてきた段階だと思います。

(左)日本空港ビルデングの志水潤一氏、(右)電通の中嶋文彦氏
(左)日本空港ビルデングの志水潤一氏、(右)電通の中嶋文彦氏

ロボットによる効率化だけでなく楽しめるロボット活用を目指す

中嶋:今回の実証実験では、業務視点、使用感、安全性などで評価基準を作ってポイントを付けており、それを基に使用状況に合わせたチューニングをどのように行うかを考えました。今後、ロボットの導入を検討する段階かと思いますが、予定を聞かせてください。

志水:次のフェーズは、実導入を行う一歩手前だと考えています。実導入には、製品のレベルが上がって空港にマッチし、使える状態であることや、安全性、コストの問題をクリアにしなければなりません。われわれだけでなく、空港を支えるさまざまな事業者の方々が使ってみたいとなったときに、コスト的にこれまでと同等かコストダウンの必要があります。その一歩手前の段階を、この春から進めていきたいと考えています。実証実験では、公共空間の中でスタッフがロボットのある場所に来て使ってみるという段階でしたが、今後は、その中から使えそうなロボットを実際の業務の現場で使って、詳細なフィードバックを取っていきます。うまくいけば、2017年度中に実導入できるロボットが出てくることを期待していますし、導入に向けての具体的な検討を行っています。

中嶋:われわれのチームは、コミュニケーション領域とテクノロジー領域に強く、先端領域のイノベーション支援とプロダクト開発をやっていますが、今後AIの発達にともない、インタラクションの知見もさまざまな場所で蓄積していこうと考えています。よりお客さまが利便性を体感でき、業務の効率性に貢献できるようなイノベーション支援やロボット支援に積極的に取り組んでいきたいと思います。さまざまな開発支援の知見をもとにHaneda Robotics Labに取り組み、さらに羽田空港のイノベーティブな部分を強化したいと思いますし、ロボットに限らず、電通として価値ある先進的な取り組みを増やしていきたいと思います。

志水:実証実験と実証導入を繰り返して、2020年には羽田空港の見える場所でさまざまなロボットを実際に活用している状態にしていきたいですね。国内線でロボットの実証実験を行う一方で、国際線の方ではICTを中心とした実験を行っているので、今後は国内/国際関係なく、ICTからサービスロボットまで活用していきたいと考えています。ロボットによる効率化だけでなく、楽しいという視点でのロボット活用も目指し、従業員の方々に喜んでもらい、お客さまにも羽田に来ればこれまでにはなかった体験ができると感じていただきたいですね。