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OPEN TOKYO 〜東京のひらきかた〜

2017/06/02

「日経マガジン×タイムアウト東京」が提案する


OPEN TOKYO 〜2020年、その先へ〜

OPEN TOKYO

未来に向け、東京を「世界にひらく」「全ての人にひらく」ことを発信する「OPEN TOKYO」が始動した。日本経済新聞社クロスメディア営業局とタイムアウト東京がタッグを組み、2020年とその先に向けて展開していく。東京をひらく意義とは何なのか。企画に取り組むキーマンたちに話を聞いた。

左から、戸堀氏、白川氏、伏谷氏
左から、戸堀氏、白川氏、伏谷氏

東京大会に向けて「心のバリアフリー」を!

──3月末に発行された『日経マガジンFUTURECITY』で「OPEN TOKYO」というコンセプトが打ち出され、4月には創刊記念セミナーが開催されました。まず、背景を教えてください。

伏谷:タイムアウトは世界108都市39カ国でシティーガイドを展開しています。今回の発端は、タイムアウトロンドンが2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックの際に『OPEN LONDON』というガイドを出版したことでした。これって何だろうと取り寄せたら、車いすの方が街を楽しむ様子が表紙になっていて「この機会に全ての人がロンドンを楽しく体験できるように」と説明されていて。あ、2020年の東京大会でも、こういうガイドが必要だと思ったんです。同時に、2020年なら紙のガイド以外にもできることがあるはずだから、もう少しアイデアを広げて、レガシーとしてその先にも残せるムーブメントを起こしたいと考えました。そんな中で、日本経済新聞社と編集特集を組むことになりました。

伏谷氏
伏谷氏

──『日経マガジンFUTURECITY』や、その英語版を掲載した『タイムアウト東京マガジン』(APR−JUN 2017)を拝見すると、東京を“ひらく”相手は障がいのある方だけにとどまらないイメージですね。

伏谷:もちろん、もっと広く考えています。高齢者や子ども、その親御さん、LGBT、それから僕らがいつも情報を伝えている外国人も対象です。“ひらく”という言葉には、間口を広げて敷居を下げる意味合いがあると思うので、それを社会の中で推進したい。実は、ロンドンと比較すると、東京の方が地下鉄でもどこでも圧倒的にバリアフリー対応がされているんです。でも、冊子に登場いただいた谷真海さん(走り幅跳びで3大会連続パラリンピック出場)も話しているように、僕らには「心のバリアフリー」が少し足りない。街の中で不自由を感じている人に、ちょっと声を掛けて手伝うといったことが、日本人は苦手ですよね。既にさまざまなバリアフリー活動を進めているNPOなどとも協力しながら、ハード面よりソフト面、心のバリアフリーの大切さを伝えて、多くの人に実践してもらいたいと思います。

──日本経済新聞社クロスメディア営業局は、なぜこうした企画に取り組んだのでしょうか。

戸堀:来る2020年東京大会は、日本が世界に対する姿や今後の在り方を考える、大きな機会です。各新聞社が大会の支援を進める中、やはりわれわれが軸足を置くのは経済と技術だと。2020年に向けた企業の活動を伝え、東京大会への盛り上がりを支えると同時に、経済的な支援を必要とするNPOと企業とのマッチングにも取り組みたいと思っていた折に、OPEN TOKYOの話を頂きました。加えて、伏谷さんが今おっしゃった「心のバリアフリー」は、私が米国に駐在して帰国したときにまさに感じたことだったので、ぜひ一緒に取り組みたいと思ったのです。

戸堀氏
戸堀氏

企業による支援の形を自ら示したい

──日経としてどう啓発していけると考えていますか。

戸堀:例えば、何らかのバリアーを感じている方々の気持ちにもっと寄り添えば、企業として今まで気付かなかった支援策も見つかっていくでしょう。今回の『日経マガジンFUTURECITY』創刊記念セミナーでは、それをまず自社が示したいと考え、富士通の協力を得て会話をリアルタイムにテキスト表示する「FUJITSU Software LiveTalk」というツールを導入しました。多言語対応なので、聴覚障がいのある方だけでなく、外国人にも有効です。セミナーの場ではこうした技術が役立つのだと知ると、恥ずかしながらわれわれもまだ視野が狭いと感じます。日経が率先してバリアフリーを実践して、読者である企業の方々にも「企業の立場で“ひらく”とはこういうことなんだ」と知ってもらいたいですね。

──取り組みを通して、日経自身も既に気付きを得ているのですね。

戸堀:そうなんです。タイムアウト東京の皆さんと話していると、目線がグローバルであることに衝撃を受けます。外国人は全く違う視点で物事を見ているから、例えば日本語の記事を単に英訳しても、機能しないんですね。

伏谷:今回の号は、ロンドンの制作チームとも連携しているのですが、彼らの心にはマイノリティーの方々をサポートすることが当たり前のように根付いているので、「東京をひらく10のこと」という記事には「なぜ今さら東京でそれを訴えるの?」という反応でした。そうした外の目線を皆さんにシェアすることも、意義があるのではないでしょうか。

──白川さんは、日経のオリンピック・パラリンピック推進室長として、今回の取り組みをどう捉えていますか。

白川:OPEN TOKYOは多様性を受け入れる社会をどう実現するかという点に重きを置いているので、パラリンピックに大きく関わりがあると考えています。特に今度の大会は、世界に先駆けて超高齢化社会を迎える日本での開催で、この先に役立つさまざまなソリューションを見いだせるだろうと注目されています。OPEN TOKYOはそうした期待に応える後押しにもなるでしょうし、推進室としてオリンピック・パラリンピックの両輪で情報発信をする上でも、重要な取り組みだと思っています。

白川氏
白川氏

2020年の東京を技術や知見の見本市に

──両社で掲げている「FUTURECITY」というテーマには、どんな思いが込められているのでしょうか。

伏谷:OPEN TOKYOでは、どんな人でも楽しめる東京にしていくと同時に、2020年をその先の日本を元気にする機会と捉えて、世界に未来の街をプレゼンする「大見本市」にもできればと考えています。白川さんが指摘されたように、日本は超高齢化をはじめ課題先進国ともいわれています。日本が考える未来の街を2020年の東京で実現し、ショーケースとして世界の皆さんに体験してもらえれば、それ以降は「日本のあの技術が欲しい、知見が欲しい」ときっと思ってもらえるはずです。そうなれば、企業も新しい市場を見つけられ、経済が活性化して、街が元気になる。OPEN TOKYOは、そんな未来も目指しています。

戸堀:2020年までは、黙っていても熱狂と興奮の大きな波が来るのでしょう。大事なのは、その波に乗れる準備を整えて、未来へつなげることです。やはり技術立国ニッポン、2020年は新しい街を世界に示す大きなチャンスです。われわれとしては日本国内の動きをつぶさに捉えて、日本経済を強くする支援をしたいですね。

──最後に今後の予定や展望を聞かせてください。

戸堀:OPEN TOKYOは何も東京だけに限った話ではなくて、地方に広げ、ひいては日本全体をひらくことが大事だと思っています。地方創生もしかり、これを機会にさまざまな社会課題を見詰め直して、『日経マガジンFUTURECITY』や秋以降に予定しているイベントなどでも伝えていきます。また、活動自体も大きくひらいて、他の企業やNPOなどとも積極的に組んで推進したいですね。

白川:オリンピック・パラリンピック推進室では別途、有識者の方々とより良い東京大会を目指すフォーラムを開催していきます。そこでも、ダイバーシティー対応を整備する予定です。また、今は現状の形の新聞を読むのが難しいマイノリティーの方々にも、技術の力を借りれば情報をお届けできるかもしれない。そんな新聞の新しい形も、模索していきたいと思います。

伏谷:僕らも、活動をオープンにして、もっと多くの方に加わってほしいと思っています。そして紙にとどまらない、最新の技術を駆使した『OPEN TOKYO』ガイドをつくりたいですね。実際に新しい技術を街で体験できる、OPEN TOKYOショーケースとも呼べるようなイベントもできたら面白い。いろんな方の知見を持ち寄れば、きっと実現できるでしょう。

(聞き手=電通出版ビジネス・プロデュース局 豊田哲朗氏)

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OPEN TOKYOは、世界に東京をひらくムーブメント

ひらくは、開く。披く。啓く。拓く。世界中の人々に向けて、東京を、ひらく。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を契機として、世界中の全ての人々に、東京をひらくことで街の未来もひらいていくムーブメント。東京に潜む言葉、文化、社会制度などに及ぶ心理的・物理的・社会的な障壁を取り除くことで、障がい者、高齢者、子ども、子どもを育てる親、LGBT、外国人、マイノリティーを含む全ての人々が楽しめる都市・東京を実現していこうという取り組みだ。さまざまなバリアーを取り払う企業、組織、個人による活動を取り上げ、喚起し、国内外に発信していく。

 

【開く】  世界中の人々に、東京をひらく。言葉や文化、制度の壁を、心理的・物理的・社会的なバリアーを取り払い、ひらかれた東京を目指す。【披く】  バリアーを取り払うべく活動する企業、組織、個人の姿を取り上げ、喚起し、ひらかれた街・東京の姿を世界中の人々に発信していく。【啓く】  マイノリティーを含む全ての人々が楽しめる東京を実現するために、われわれは何をすべきなのか、何に気付くべきなのかを啓発する。【拓く】  開き、披き、啓くことで、東京の街を、人々の意識を変え、世界の中で東京が果たす役割を、東京という存在の未来を開拓していく。

  

日経マガジン FUTURECITY

日経別刷りとして、3月30日に発行。
小池百合子東京都知事をはじめとした著名人へのインタビュー記事に加え、2012年ロンドンオリンピック・パラリンピックにおけるシティー・イノベーションの考察、東京のオープン化をけん引する最新ニュースなどで構成。「東京をひらく10のこと」も提示した。

OPEN TOKYO 日経マガジン FUTURECITY

 

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東京をひらく10のこと

東京をひらくために、何をすべきか。
日経マガジンFUTURECITYでタイムアウト東京が示した
誰でも今日から実践できる「10のこと」とは。

01
会話を楽しむ

都市より前に、人のバリアフリー化を。慣れない東京で道に迷っている人、助けを求めている人を見かけたら、積極的に声を掛けよう。会話は最大の安心になる。

02
自分の態度を省みる

障がい者や高齢者を阻むものは、階段や段差だけではない。ちょっとした心遣い、相手の立場を尊重し特別視しない気遣いがなければ、そこにバリアーが生まれる。

03
視点を変えて街に出る

いつもの自分には見えないものがあることを知ろう。ベビーカーを押し、車いすに乗り、つえを突いて、見慣れた街に繰り出せば、狭い通路や不便な段差に気付ける。そこに改善と手助けのヒントがある。

ベビーカーを押す女性

04
デザインの力を活用する

文化も歴史も異なる人々にとって、日本の常識は異世界の常識だ。全ての人に役立つ「デザイン」の力を活用し、より便利で分かりやすく互いの理解も深まる、包括的なソリューションを創造しよう。

交通標識

05
言語の壁を越える

多言語サポートは、今や当たり前。しかし、言葉が通じればいいわけではない。言葉が通じない部分までも楽しむ気にさせるコミュニケーションを大切に。

06
偏見を克服する

東京は今、少しずつ、LGBTの旅行者が快適だと感じる都市になりつつある。心の性別や趣味嗜好(しこう)、誰を好きになるのかは、誰にも侵されないものだと知ろう。

07
パラリンピックの準備を始める

障がいのあるアスリートたちが活躍する場は、パラリンピックだけではない。一年を通して各地で開催されるスポーツイベントを観戦し、満員の観客で2020年を迎えられるよう、今から準備をしておこう。

車いすバスケットボール

08
境界線をなくす

東京には、「新豊洲 Brilliaランニングスタジアム」のような、ユニバーサルデザインの力で健常者と障がい者のスポーツを結び合わせている施設がある。境界線は思いひとつで乗り越えられるのだ。

新豊洲 Brilliaランニングスタジアムの施設

09
子どもたちにチャンスを与える

東京をもっと子どもにやさしい場所に。街の未来を確かなものに。子どもが飛行機やレストランでぐずるとき、子どもとその親に温かいほほ笑みを送ってみよう。

10
すべての人の食を敬う

ごちそうは、おいしいだけでは未完成だ。宗教的理由で特定の食事を選択する人々に、東京はどれだけ対応できるだろうか。さあ、全ての人に食事の楽しみを。

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EVENT REPORT

日経マガジン FUTURECITY セミナー
「OPEN TOKYO Talk」
in Tokyo Midtown 2017.4.21

4月21日、東京のひらきかたを探るセミナーイベントが開催された。総合司会を務める平井理央氏から紹介を受け登壇した講師は、A.T.カーニー日本法人会長・梅澤高明氏、スローレーベルディレクター・栗栖良依氏、三井不動産広報部長・徳田誠氏、タイムアウト東京代表取締役・伏谷博之氏、日本経済新聞社オリンピック・パラリンピック推進室長・白川美紀氏。会場では、発話内容を音声認識・転送し多言語で翻訳表示する、富士通のコミュニケーションツール「LiveTalk」が導入され、言語や障がいの有無に左右されないリアルタイムコミュニケーションが現実のものとなっていた。

「OPEN TOKYO Talk」の会場のようす
「OPEN TOKYO Talk」の会場のようす

今後の予定

10月の日経マガジンFUTURECITY第2号発刊とウェブコンテンツ展開に合わせ、秋のイベント開催も予定されている。