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「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2021」から見る、人びとの意識・価値観の現在地No.4

47都道府県の人びとの価値観を比べてみた「北海道・東北地方、関東地方編」

2022/06/27

電通総研と電通未来予測支援ラボは、東京経済大学・柴内康文教授の監修のもと、「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2021」を、2021年10月に全国の男女1万2000人を対象に実施しました。同調査は、社会に関する人びとの意識・価値観を把握することを目的として、2019年12月に第1回調査を開始し、今回で3回目となります。今後も定期的にデータを収集・蓄積していく計画です。

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これまでの連載では、日本全体としての、大きな社会変化や人びとの意識の現在地を紹介してきました。

今回からは、全国調査という規模ならではの視点で、都道府県単位での人びとの意識や価値観の中から特徴的なものにスポットを当てて、紹介します。まずは、「北海道・東北地方、関東地方編」です。なお、記事内の順位は全て47都道府県内での順位を表しています。

<目次>

北海道・東北地方編
「男性の育休取得」に積極的な福島・秋田
顔を合わせて仕事をしたい岩手・山形
健康面に不安を感じる青森、シェアハウスに肯定的な宮城
地域特性のわりに、特徴のない北海道

関東地方編
ボランティア参加は意欲にとどまる東京・茨城
メディアには多くを期待しない栃木・群馬
価値観の偏りが少ない埼玉・千葉・神奈川

北海道・東北地方編

まずは、北海道・東北地方から見ていきましょう。

「男性の育休取得」に積極的な福島・秋田

「男性の育休取得」について「受け入れられる」と答えた人の割合が、福島県が全国1位(86.0%)、秋田県が次いで2位(85.9%)という結果になりました。

男性の育休取得

男性の育休取得については、3回の調査で年々「受け入れられる」と回答される割合が増加傾向となっており、全国平均も80.7%と高い割合です。しかし、その中でもトップをいく福島県・秋田県には注目したいところです。

顔を合わせて仕事をしたい岩手・山形

連載の第1回で、リモートワークが定着すべきだと7割以上の人が思っていることを紹介しましたが、岩手県の人びとにとっては考え方が少し違うようです。

「感染症が落ち着いたら、オフィスなどに出勤し、顔を合わせる働き方に戻るべきだと思う」と答えた人の割合が、岩手県が全国1位(39.0%)でした。山形県も3位(36.6%)に入り、秋田県が4位(35.9%)にランクイン。東北地方では、対面して働くことを大切にする価値観が他の都道府県と比べて強い傾向があるとみられます。

感染症が落ち着いたら、オフィスなどに出勤し

 

健康面に不安を感じる青森、シェアハウスに肯定的な宮城

「自分のことを健康だと思うか」を聞いた調査結果では身体の健康について「健康だとは思わない」と答えた人の割合は、青森県が全国1位(30.6%)となりました。

厚生労働省が発表している都道府県別の平均寿命でも青森県は最下位となっており、「健康だと思わない」と答える人の多さにも、少なからず影響を与えているのかもしれません。

自分のことを健康だと思わない

暮らし方についてはどうでしょうか。シェアハウスなどの共同生活について、東北地方で一番肯定的だったのは宮城県でした。「受け入れられる」と答えた割合が全国でも3位(47.2%)となっており、親族ではなく結婚や事実婚でもない人との共同生活に対して抵抗があまりない傾向にあります。

シェアハウスなどの共同生活について
 

地域特性のわりに、特徴のない北海道

ここまで、北海道・東北地方で特徴的な項目を紹介してきましたが、北海道が出てこなかったことにお気づきになった方もいるかもしれません。「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2021」では、35項目355問を聴取したのですが、その中で北海道が10位以内に入る項目は、なんと1項目もありませんでした。広大な大地や厳しい冬の寒さ、独自の民族文化などの地域特性を持つ北海道ですが、北海道の人びとは、非常に全国平均に近い考えを持っているという結果。これは非常に興味深い点です。

ここまで北海道・東北地方について見てきましたが、最後に一つ、変わった調査結果を紹介します。自分の健康を守るためにしていることとして「定期的に歯科検診を受ける」と答えた人の割合が、福島県は全国最下位(23.0%)でした。

虫歯患者数の多い都道府県別順位では7位(厚生労働省)となっており、他のワースト3である佐賀県が23位、山形県が31位であることを考えても、患者数との相関というわけではなさそうです。

定期的に歯科検診を受ける

 

関東地方編

続いて、関東地方について紹介します。

ボランティア参加は意欲にとどまる東京・茨城

さまざまなボランティアへの参加経験や参加意向を聞いたところ、いずれかのボランティアに「1年以内に参加したことがある」と答えた割合が、全国で47位と一番低く、唯一の一桁だったのが東京(9.4%)で、46位が茨城(10.9%)でした。

一方で、「参加したい」と答えた割合との差を見ると、東京18.3ポイント(12位)、茨城20.8ポイント(6位)と比較的上位になっており、ボランティアに参加する意欲はあるが実際の行動につながっていない、ということが明らかになりました。

ボランティアへの参加経験や参加意向

 

メディアには多くを期待しない栃木・群馬

情報源やメディアに期待していることとして、「世の中にあるさまざまな意見や考え方を教えてくれること」と答えた人の割合は、栃木県が46位(60.6%)、群馬県が45位(61.3%)となりました。情報源やメディアに関する考え方の他の項目においても、全体的に関東の他県と比べて低く、この2県はメディアに対してあまり多くを期待していない傾向があるのかもしれません。

情報源やメディアに期待していること

 

価値観の偏りが少ない埼玉・千葉・神奈川

傾向の見えやすかった群馬・栃木とは対照的に、埼玉・千葉・神奈川の3県は全国平均と大きく差のある項目がほとんどなく、際立った特徴があまりないという結果になりました。

興味深いのは、東京を含めた「首都圏」としてひとくくりに語られることの多いこの3県が、必ずしも東京と同じ傾向ではないという点です。捉え方によっては、価値観について偏りが少なく、バランス感覚を持っていると考えることもできます。


本記事では、都道府県の特徴的な項目に絞って紹介しましたが、調査では他にもたくさんの項目を聴取しています。地域ごとのブランディングやプロモーション戦略などをお考えの方や、都道府県単位でもっと詳しく内容を知りたいという方は、ぜひお問い合わせください。次回は、「中部地方・近畿地方編」をお届けします。

※記事内のランキングは、小数点第2位まで参照し、順位付けをしています。
 

【調査概要】
タイトル:「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査」
調査時期:
第1回 2019年12月11日~18日
第2回 2020年11月11日~17日
第3回 2021年10月19日~28日
調査手法:インターネット調査
対象地域:全国
対象者:18~74歳の男女計1万2000人
調査会社:電通マクロミルインサイト
 
<本調査に関する問い合わせ先>
電通総研 担当:山﨑、日塔
E-mail:d-ii@dentsu.co.jp
URL:https://institute.dentsu.com
未来予測支援ラボ 担当:小椋、立木、小野、千葉
E-mail:future@dentsu.co.jp
URL:https://www.dentsu-fsl.jp
 
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