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「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2021」から見る、人びとの意識・価値観の現在地No.5

47都道府県の人びとの価値観を比べてみた「中部地方、近畿地方編」

2022/09/30

電通総研と電通未来予測支援ラボは、東京経済大学・柴内康文教授の監修のもと、「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2021」を、2021年10月に全国の男女1万2000人を対象に実施しました。同調査は、社会に関する人びとの意識・価値観を把握することを目的として、2019年12月に第1回調査を開始し、今回で3回目となります。今後も定期的にデータを収集・蓄積していく計画です。

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全国調査という規模ならではの視点で、都道府県単位での人びとの意識や価値観の中から特徴的なものにスポットを当てて紹介する本連載。第2弾は、「中部地方、近畿地方編」です。なお、記事内の順位は全て47都道府県内での順位を表しています。

<目次>

中部地方編
「子育て支援」の満足度が高い福井、「防災体制」に関する満足度が低い新潟
階層意識も“真ん中”の愛知、自動化・AIは生活を良くすると考える三重
家族や親せきの近くで暮らすことを重視する静岡、居住地のステータスを重視しない岐阜
シェアハウスに前向きな山梨、健康のためにバランスの良い食事をする長野
ドラマ好きな石川、テレビも本も必要とする富山

近畿地方編
近畿地方には本・書籍・雑誌を必要だと思う人が多い
興味がある・好きな仕事がしたい奈良、人口密度が低いことを望む和歌山
子どもたちに先端技術に触れてほしい滋賀、京都
突出した特徴が見られない大阪

中部地方編

今回は、中部地方から見ていきましょう。

「子育て支援」の満足度が高い福井、「防災体制」に関する満足度が低い新潟

地域社会における暮らしを支えるしくみや体制について聞いたところ、「行政やコミュニティの子育て支援のしくみ」に対して「満足できる、十分であると思う」と答えた人の割合は、福井が全国1位(48.6%)という結果になりました。全国平均が36.3%であることを踏まえると、満足度の高さがうかがえます。

行政やコミュニティの子育て支援のしくみ

一方で、「防災体制や災害時の避難・復旧の体制」に対して「満足できる、十分であると思う」と答えた人の割合は、新潟が全国46位(34.1%)でした。新潟は豪雪地帯でもあり、災害に対する危機意識が高いという見方もできます。

防災体制や災害時の避難・復旧の体制
 

階層意識も“真ん中”の愛知、自動化・AIは生活を良くすると考える三重

現在の日本の社会全体の中で自分が入ると思う階層(上・中・下)について聞いたところ、「中だと思う」と答えた人の割合が全国1位(73.6%)だったのは、愛知でした。地理的に日本の真ん中、東阪どちらからもアクセスが良い、といったことを自治体としても発信していますが、住んでいる人びとの意識も「中」が多い、というのは興味深い結果ではないでしょうか。

階層意識

愛知の隣の三重は、自動化やAI(人工知能)への期待が高いようです。「自動化・AI(人工知能)の導入によって、人々の生活は良い影響を受ける」と考えているのは、三重が全国で最多(78.6%)。福井(45位)や山梨(44位)は数値が低かったこともあり、同じ中部地方でも意識の差が大きいことが分かりました。

自動化・AI(人工知能)の導入によって、人々の生活は良い影響を受ける
 

家族や親せきの近くで暮らすことを重視する静岡、居住地のステータスを重視しない岐阜

続いて「今後住みたいと思う場所」の重視点を聞いた設問です。「家族や親族の住まいに近い」ことを重視する人の割合は、静岡が全国2位(72.5%)となりました。全国平均でも63.2%が「重視する」と回答しており、核家族や単身世帯の増える昨今、家族や親せきの近くで暮らすことへの願望が見て取れます。

家族や親族の住まいに近い

また、同じ設問で「住むことがステータスになる」ことを重視するかを尋ねた質問では、「重視しない」と答えた人の割合が、岐阜は全国2位(78.3%)という結果でした。岐阜といえば飛騨高山など歴史を感じる古い街並みが残っており、戦国時代は織田信長が拠点としていた地でもあるため、少し意外な印象を受ける方もいるかもしれません。

住むことがステータスになることを重視するか
 

シェアハウスに前向きな山梨、健康のためにバランスの良い食事をする長野

次に、暮らし方について見てみましょう。「親族ではなく、結婚や事実婚でもない単身成人との共同生活」いわゆるシェアハウスを「受け入れられる」と答えた人の割合は、山梨が全国2位(48.1%)でした。全国平均(40.8%)と比べて7.3ポイント高く、生活の形への柔軟性が見受けられます。

シェアハウスを「受け入れられる」

また、自分の健康を守るために行っていることを聞いたところ、「バランスの良い食生活を心掛ける」人の割合は、長野が全国で一番多い(55.8%)ことが分かりました。長野県のホームページを見ると、野菜や果物など複数の農産物が収穫量1位です。このことが、食に対する長野の人びとの意識にも影響を与えているのかもしれません。

バランスの良い食生活を心掛ける
 

ドラマ好きな石川、テレビも本も必要とする富山

情報源やメディアについて、生活にどれだけ必要かを聞いた設問では、「民放の地上波テレビ」を「必要である」と答えた人の割合は、富山(80.4%)、石川(79.4%)が全国1位と2位になりました。

「民放の地上波テレビ」を「必要である」

2位の石川は、コンテンツへの興味を聞いた設問で「ドラマ」と答えた人の割合が全国1位(43.0%)でした。富山は、「本・書籍・雑誌」でも全国1位(81.4%)となっており、テレビ鑑賞も読書も、生活に必要なものだと感じている人が多いことがうかがえます。

ドラマに興味がある
「本・書籍・雑誌」は必要である
 

近畿地方編

続いて、近畿地方について紹介します。

近畿地方には本・書籍・雑誌を必要だと思う人が多い

メディアや情報源がどれだけ生活に必要かを聞いたところ、「本・書籍・雑誌」について地方別で近畿地方が1位でした。都道府県別に見ても、和歌山(2位)、京都(3位)、兵庫(4位)、奈良(5位)とランクインしており、1位こそ前述の富山に譲ったものの、本を必要だと考えている人が多いのは大変興味深い結果ではないでしょうか。

「本・書籍・雑誌」は必要である

 

興味がある・好きな仕事がしたい奈良、人口密度が低いことを望む和歌山

「仕事や働き方」として、奈良の人は「自分にとって興味がある・好きな仕事ができる」ことを理想だと思っている人が多いようです。64.1%と全国で1位となっており、仕事に対して自己実現できることを求めていると考えることもできます。

「自分にとって興味がある・好きな仕事ができる」

続いて、「今後住みたいと思う場所」の重視点です。「人口密度が低い」ことを重視すると答えた人の割合が全国1位(54.5%)だったのは、和歌山でした。国勢調査によれば、実際の人口密度では和歌山は29位となっており、人口(40位)の割に、人口密度が高いと感じている気持ちの表れなのかもしれません。

「人口密度が低い」ことを重視する
 

子どもたちに先端技術に触れてほしい滋賀、京都

子どもたちに必要だと思う場として、科学館、ARや映像体験など「先端技術に触れる場」と答えた人の割合では、滋賀が全国1位タイ、京都が3位に入りました。同じ設問で「歴史に触れる場」と答えた割合も、滋賀3位、京都4位でした。過去と未来、どちらも子どもたちに必要だという考えは、なかなか興味深い結果です。

「先端技術に触れる場」

「歴史に触れる場」
 

突出した特徴が見られない大阪

大阪の人、と聞くとみなさんはどんな方を思い浮かべるでしょうか。本調査では、大阪は大きく差のある項目がほとんどなく、際立った特徴があまりない結果になりました。得てして都道府県民性というものは、自分の知り合いや著名人の特徴をもとに自分の中で作り上げてしまっているもので、実態とは少し異なるのかもしれません。

本記事では、都道府県の特徴的な項目に絞って紹介しましたが、調査では他にもたくさんの項目を聴取しています。地域ごとのブランディングやプロモーション戦略などをお考えの方や、都道府県単位でもっと詳しく内容を知りたいという方は、ぜひお問い合わせください。次回は、「中国・四国地方・九州地方編」をお届けします。

※記事内のランキングは、小数点第2位まで参照し、順位付けをしています。
 

【調査概要】
タイトル:「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査」
調査時期:
第1回 2019年12月11日~18日
第2回 2020年11月11日~17日
第3回 2021年10月19日~28日
調査手法:インターネット調査
対象地域:全国
対象者:18~74歳の男女計1万2000人
調査会社:電通マクロミルインサイト
 
<本調査に関する問い合わせ先>
電通総研 担当:山﨑、日塔
E-mail:d-ii@dentsu.co.jp
URL:https://institute.dentsu.com
未来予測支援ラボ 担当:小椋、立木、小野、千葉
E-mail:future@dentsu.co.jp
URL:https://www.dentsu-fsl.jp
 
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