【定石10】マーケティング投資効率を高めるためにMROI分析から始める
2017/07/11
電通デジタル刊行の書籍『電通デジタルのトップマーケッターが教える デジタルマーケティング 成功に導く10の定石 簡単に分かる売れ続ける仕組みをつくるツボ』の発売を記念してお届けしているこの連載。
第10回は、定石10「マーケティング投資効率を高めるためにMROI分析から始める」の中から一部を抜粋して紹介します。
マーケティングROIとは何か?
マーケティングROIは、次の式によって表現されます。
マーケティングROI
= マーケティング活動からのリターン/マーケティング投資
この式から分かるように、マーケティング投資を1円行うことにより、どれくらいのマーケティング活動からのリターンが得られるかということになります。
このリターンは何なのかというと、多くの場合、マーケティング活動による売上げや利益の増分と定義しています。これを加味して、式に当てはめてしてみましょう。
マーケティングROI
=(マーケティング活動による売上げ・利益増分)/マーケティング費用
たとえば、1000万円でテレビ広告を行ったところ、3000万円売上げが上がった場合のマーケティングROIの数式はこうです。
3000万円/1000万円=3.0
もともと、マーケティングROIという考え方は、投資家への説明責任のために開発されたと言われています。配当として1000万円支払うよりも、マーケティングに1000万円投資したほうが、投資家の儲けになると説明するためです。
前例で言えば、売上げが3000万円上がりました。仮に原価率が30%だとすれば、利益が2100万円増えたことになります。増分の利益2100万円からマーケティング投資額の1000万円を引いても、1100万円の営業利益が残ります。配当で1000万円支払うよりも、投資家にとってメリットが大きいと説明できます。
つまり、マーケティングROIは「共通の分かりやすい評価指標」なのです。数値として算出するので、比較しやすく、共通理解しやすいものになります。
マーケティングROIでできること
マーケティングROIは誰からも分かりやすい評価指標ですが、主に3つの場面で利用されています。
①ROIを高めるためのPDCAサイクル
たとえば、同じテレビ広告であっても素材ごとにROIを測定することができます。どの素材のROIが高いのか明らかにすることにより、どの要素をいれていけばROIが上がりやすいのか解明することができます(図1)。
図1 TV広告素材別のマーケティングROI(例)
施策に対するマーケティングROIの測定を続け、蓄積していくことで、ROIの高い施策を立案実施できるようになります。
② 売上げや利益目標を達成するためのマーケティング予算設定(経営層との折衝)
各マーケティング活動のROIを把握することで、どれくらい投資を行えば、どれくらいの売上げや利益を増やせるかという関係性を明らかにすることができます。
示達された予算を達成するために必要なマーケティング予算額を算出できるので、経営層からの要求を科学的な根拠に基づき議論の俎上に上げ、建設的なディスカッションを行っていくことが可能になります。
たとえば、昨年に比べて現場の努力でROIを10%改善できた場合に、必要となるマーケティング予算額等をシミュレーションすることができます。
図2の場合、売上げ目標が255億円なら、必要なマーケティング予算は13.5億円ということになります。
図2:マーケティング予算と売上げの関係性イメージ
③ブランド間・エリア間・施策間の予算配分アロケーション
ブランド別のマーケティングROIを算出することにより、ブランド間の最適な予算配分を行うことができます。
たとえば、ブランドAとブランドBの合計売上げを最大にするためには、それぞれにいくらずつマーケティング予算を配分すべきか、という比率を算出することができます。また、施策間のROIが算出されていれば、施策ごとに最適な予算配分が可能です(図3)。
図3:ブランド間の予算配分と施策間の予算配分
さらに、エリア別のROIを算出することもあります。関東と関西でどちらの方がテレビ広告のROIが高いのかを算出できるので、エリア別に最適な予算配分が可能となります。このような予算配分は、グローバルでのマーケティング管理の際に最大の効力を発揮します。
たとえば、インドネシアで展開しているブランドAのROIが低くなっているので、アメリカのブランドCに予算を変更するなどと、グローバルで予算管理を行うことができます。多くの最先端企業はROIを利用して、グローバルでマーケティング管理を行っています。