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F2はモヤモヤ・イライラMAXの“モヤモヤフルネス”年代?!No.4

「コーピング価値」起点で、商品・サービスのアイデアを創造する

2017/08/02


 

これまでの連載では、F2の悩み多きモヤモヤフルネスな日常とその対処行動である「コーピング」、そして、そのために生まれる消費や消費の裏側にある「コーピング価値」について紹介をしてきました。

最終回の今回は、「コーピング価値」に関する事例を紹介しながら、理解を深めていただければと思います。

F2のヒット商品「大人の塗り絵本」のコーピング価値とは?

今回紹介する事例は、大人の塗り絵本です。中でも特に人気の「ひみつの花園」シリーズは2013年6月から累計で60万部を突破する大ヒットとなり、われわれがこれまで実施してきたグループインタビューなどの調査の中でもはまっている人もいて、F2での人気の高さを実感してきました。

その「大人の塗り絵本」を「価値」視点でその構造を分解してみます。一般的な塗り絵の価値は、見本を参考にしながら色を塗ることで、「塗る過程を楽しんだり、完成する喜びが得られたりする」という点でしょう。

一方、「大人の塗り絵本」は、絵のアート性が非常に高く、また細やかで繊細なため、きれいに塗ろうとすると、必然的に集中することになります。この集中や没頭するというプロセスが、日常的な雑念やモヤモヤを頭から追い出し、心が落ち着かせるという効果をもたらします。

つまり、塗る時間そのものが、モヤモヤから遮断された平和な時間となり、「安心・安定」の「コーピング価値」へとつながっているわけです。

大人の塗り絵本の価値構造

開発プロセスの行き詰まりを解決するためにも「コーピング」の視点を

近年は、多くの製品やサービスの市場が成熟化し、コモディティー化してしまっているため、新たな機能価値・情緒価値の創造や、商品の差別化が非常に難しくなっています。

そんな時代だからこそ、新しい価値の概念である「コーピング価値」に着目し、自社製品・サービスを通じて、どのような「コーピング価値」を提供できるのかを考えていくことで、新たな市場創造ができるのではないかと、われわれは考えます。

f2ラボでは、「コーピング価値」は、「機能価値」「情緒価値」に続く、第3の新しい価値となると考えています。次からは、この第3の価値である「コーピング価値」を実際のマーケティング活動へ具体的に活用するためのアイデア発想ツールについて、紹介をしたいと思います。

アイデア発想ツール「コーピングフレーム30」とは?

アイデアの発想ツールには、「コーピング価値」と「プロセスタイプ」という2軸を使用します。

「コーピング価値」については、前回コラムで具体的な6パターンを紹介しましたが、今回は新たに出てきた「プロセスタイプ」について説明します。「プロセスタイプ」とは、コーピング(対処行動)として挙げられた具体的な行動を、そのプロセスやメカニズムで類型化したもので、5タイプあります。

一つ目は、瞬間エスケープ型。短時間で関心を持てる対象に意識を向けて集中することで、モヤモヤやモヤモヤ源のことを頭の中から追い払う行動タイプです。具体例としては、パズルや塗り絵などがあります。

二つ目は、感性インスパイア型。自分の日常とは違う世界やストーリーに没頭し、エンターテインメントを通じて喜怒哀楽を味わうことで、日常のモヤモヤを忘れる行動タイプです。具体例としては、ライブや映画鑑賞などがあります。

三つ目は、日常サティスファイ型。日常生活の中で基本的な欲求を満たす際に、ささやかな充足感を味わい、元気を得る行動タイプになります。具体例は、買い物をする、食べるなどがあります。

四つ目は、空白リラックス型。自分を傷つけるモヤモヤ源から物理的に離れ、何者にも煩わされない一人の状態になって自分を回復する行動タイプです。具体例では、ぼーっとすることやお風呂に入ること、などがあります。

五つ目は、自分リトリート型。人にもてなされたり、大切に扱われたりすることで、自分が価値のある存在であるという自信や自尊心を再確認する行動タイプになります。具体例では、美容院や旅行系のサービスを受ける、などがあります。

プロセスタイプ5類型の具体的な行動

これに、前回コラムで紹介した6パターンの「コーピング価値」を掛け合わせて出来るフレームが、アイデア発想ツールである「コーピングフレーム30」です。この30個の視点で、商品・サービスやコミュニケーションプランの企画を発想・創造する事が可能になると考えます。

では、この「コーピングフレーム30」を活用して、どのように発想するのか。F2の日々のモヤモヤ源となる”掃除”をテーマにして、新たな「掃除機」のアイデアを考えてみました。

はじめに、6つの「コーピング価値」から一つを選びます。今回は、「成長・達成感」を選んでみます。「成長・達成感」を提供するには、掃除機で何ができるのかを考えてみます。

例えば、吸ったゴミの量が液晶画面で可視化される、さらにその量によってランク分けがされるといった機能を追加したらどうでしょうか。なんとなく掃除機をかけるよりは「達成感」が得られそうです。

とはいえ、「ゴミの吸収量は●●リットル。あなたはAランクです」と表示されるだけでは、「コーピング価値」という点では不十分かもしれません。

そこで、さらに「コーピング価値」を上げるために、「プロセスタイプ」の視点でも発想をしてみます。プロセスタイプの5タイプの中から、今回は”感性インスパイア型”を選んで、発想してみました。

「コーピング価値」×「プロセスタイプ」による発想ステップ

“感性インスパイア型”は前述の通り、「エンタテーメント」要素が鍵となります。そこで、ゴミを吸うこと自体が「達成感のあるエンタテーメントにならないか」という視点で考えてみます。すると掃除機でゴミを吸う量を起点とする「ゲーム化」というコンセプトが思い浮かびます。

具体的には、掃除機に「育成ゲーム」の機能を追加し、ゴミを吸った(食べた)分だけ、キャラクターが成長していくという仕組みにします。このように吸った量の見える化をゲームにまで結びつければ、達成感が感じられ、掃除機をかける時間にポジティブに向き合えそうですね。

コーピングフレーム30を活用した掃除機の新商品アイデア

さらに、育成ゲームにすることで、ご主人やお子さんも興味を持って能動的に掃除をやってくれるようになれば、F2のモヤモヤそのものが解消されるかもしれません。

最後に

私達f2ラボは、コーピング起点での商品・サービスやコンテンツが創出され、モヤレスな社会が実現するためのお手伝いができればと考えています。4回にわたってお伝えしてきた本連載ですが、今回を持って終了となります。これまでお読みいただき、本当にありがとうございました。