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海外のサイネージはこんなに面白い! ダイナミックDOOH事例集

OOHの未来 №2

  • 浜田 桂

2017/09/22

海外のサイネージはこんなに面白い!
ダイナミックDOOH事例集

デジタルテクノロジーの進化により、OOH(屋外広告・交通広告)も、変革の時を迎えようとしています。この連載では電通アウト・オブ・ホーム・メディア局(OOH局)のメンバーが、主にデジタルサイネージを中心とした屋外広告・交通広告の進化と可能性をお伝えします。

第2回はOOH局・浜田桂氏による「海外のダイナミックDOOH事例集」です。

日本でもダイナミックDOOHをやりたい!と思った2年前

前回、デジタルサイネージ事業の担当をしています、とお伝えしましたが、その一方で、2015年から電通イージス・ネットワークのOOH専門エージェンシーPosterscope(本社・英国)の日本でのサービス立ち上げにも携わりました。

ロンドンのPosterscopeから黒船としてやってきたベン(いつも黒い服を着ていて、大きい)にロンドンでのダイナミックDOOH事例を聞かされたとき、OOHってこんなこともできるのか! 日本でもやってみたい!と思ったことを今でも覚えています。

(※ダイナミックDOOHとは何か、については第1回を参照ください。)

あれから2年、日本でも少しずつダイナミックDOOH事例は増えてきていますが、今回は海外の事例をご紹介します。

ちなみにベンは、今も私の斜め向かいに座っていて、2年前は全く話せなかった日本語で「オハヨウゴザイマス」と毎朝言ってくれて、今や日本語の打ち合わせにも普通に出ています! 日本のダイナミックDOOHの普及率も、ベンの日本語の上達率並みに推移してくれればいいのに…と心から思っている毎日です。

思わず見てしまう

British Airways「 Look Up キャンペーン」

では、下記の事例をご覧ください。

British Airways「 Look Up キャンペーン」

British Airwaysの事例動画はYouTubeで覧いただけます。 

私の中で「これぞダイナミックDOOH!」と思うのがこの事例です。

ロンドンのビルの上にある大きなデジタルサイネージ。あれ、男の子がいるなと思ったら、彼が何かを指さして歩き始めます。なんと、指さしている先には、飛行機が飛んでいるではありませんか。

そして最後に、今まさに飛んで行った飛行機の便名、発着の都市名と共に、「More flight to more destination」というコピーが出ます。

さて、これを見終わって皆さん何を思いましたか?

私はまず「どっか行きたいなぁ…」と思いました。不思議ですね。飛行機というのは、多くの方にとっては、いつもと違う楽しいどこかに連れて行ってくれるもの。そんな飛行機と、そしてその飛行機がどこから来たかを見てしまったら、もう旅への欲求が抑えきれなくなる人もいるのではないでしょうか?

ちょっとBritish Airwaysのサイトで次の休みの飛行機でも調べてみるか、となるわけですね。

ではこのキャンペーン、どういう仕組みになっているのでしょうか?

British Airwaysの「フライトデータ」が使われていることはもちろんですが、単純に発着のデータを利用しているわけではなく、ビーコンで正確にどのタイミングで飛行機がサイネージの上空を通るかを把握しています。このタイミングだ! というトリガーで、子どもが立ち上がるようにプログラムされています。

そして、もう一つ使われているデータが、「天気」。つまり、いくらサイネージの上空を飛行機が飛んでいても、天気が悪ければ、子供が何を指さしているのかが分かかりませんよね。「今、この瞬間に飛行機がサイネージの上空を通り」かつ「必ず見えるタイミング」を複数のデータから確実に割り出しているのです。

このキャンペーンは、カンヌライオンズ2014のダイレクト部門でグランプリに輝きました。複数のデータが絶妙にナチュラルにクリエーティブ表現に結びついているのです。

この事例は、日本でも結構有名なのではないでしょうか。ダイナミックDOOHの話をすると、「あぁ、あの飛行機のやつね」とよく話題に上がります。英国でダイナミックDOOHの配信プラットフォームが構築され始める前の、先駆け的事例でした。

雨だって気持ちよさそうな

Dove「Just One Shower キャンペーン」

次もとってもナチュラルです。

Doveの事例動画はYouTubeでご覧いただけます。

これは、米ニューヨークのタイムズスクエアのサイネージで展開されたもので、「雨」にクリエーティブが連動する広告です。

雨、と聞いてみなさんどんな気持ちがしますか?

私の場合は、生々しい感想ですが、「カッパ着て自転車乗るのか…」です。息子の保育園は少し遠いので、自転車で行くしかないんですね、そして雨降ったらカッパ着るしかないんですよ…あー、面倒くさい(笑)。

でも、息子は違います。明日は雨だねぇ、と言うと「ふふふ、長靴とパンダさんの傘だね」と、うれしさをこらえきれない、という顔をします。余談ですが、息子は長靴が好き過ぎて、2歳のとき、1年の8割を長靴をはいて過ごしていました。晴天の真夏でも(笑)。

つまり、人によって、気持ちによって、「雨」への態度は変わるのです。いつから雨が嫌なものになってしまったんでしょうか…。

「濡れると困るから」「車が混むから」「自転車が滑りそう」、これは全部大人の事情です。本当は、濡れたっていいなら、急いで行かなくちゃいけない所がないなら、雨に濡れながら、水たまりに思いっきりジャンプしながら、るんるんと街を歩きたいな、と。このキャンペーンを見たときになぜか思ってしまいました。

まさしく、「今」雨が降っているときに、雨降るタイムズスクエアをバスルームに見立て、気持ちよさそうにシャワーを浴びる女性が、雨の印象を「何だか気持ちいいもの」にしてくれています。

雨が何だか気持ちいいものに思えた→あれ、使ってるこの商品も気持ちよさそう→これ使ったらいい気分になれるんじゃ? という想像をかき立てます。スタートがマイナスだったからこその、ギャップ萌えですね。

そしてもしこれをきっかけにDoveを使うようになったら、1日嫌なことがあっても夜にDoveを使ってシャワーを浴びると、何だかいい気分になれそうな気がしませんか?

このキャンペーンは、今そこにいる人の気持ちに寄り添うことを通り越して、今そこにいる人の気持ちをいい方向に変えてしまう、すてきなダイナミックDOOHだと思います。

そりゃ飲みに行っちゃうよね

ディアジオ「Grab a seat, It's Pimm's o'clock キャンペーン」

こちらをご覧ください。

ディアジオ「Grab a seat, It's Pimms o'clock キャンペーン」

ディアジオの事例動画はAdForumのサイトでご覧いただけます。

どうでしょうか? Pimm’sという商品は、日本ではあまりなじみがないのですが、さっぱりとしたリキュールで、暑い夏に英国では最初の1杯目のアルコール飲料として親しまれています。「とりあえず、生ビール」みたいな感じですね。

Pimm’sが展開したキャンペーンは、実に手が込んでいます。使っているデータは、その日の気温と天気、そしてパブの混み具合です。混み具合は、対象のパブに設置したビーコンを使って測定しています。

今日は飲みたい!!! という日、今近くでちょっと入りたいんだよ…でもこの辺のお店知らないなあ、知ってる所あるけど、空いてるかしら? という時は、皆さんにもありますよね?

そんなとき、パブから最も近くのデジタルサイネージに、その日の天候や気温に合わせた最適な「空き席情報」を表示してくれるのです。

これはまさしく、今のその気持ちに場所まで示して、寄り添った事例ですね。

ディアジオによるとこのキャンペーンにより、パブでのPimm’sの売り上げは、前年比13%増加。店舗によっては、94%もの売り上げ増になったところもあったそうです。

新しいおねだりの方法

Currys PC World「Spare the Act クリスマスキャンペーン」

こちらをご覧ください。

Currys PC World「Spare the Act クリスマスキャンペーン」

Currys PC Worldの事例動画はYouTubeでご覧いただけます。

皆さん、必ずや経験があると思います。家族、彼氏彼女、旦那さま、奥さまからのクリスマスプレゼント、きっと私の欲しいものは分かってくれているはず! ふふふ、楽しみ楽しみ♪と思ってクリスマス当日、「は?」欲しいのこれじゃないんですけど…。

要らないものをもらうと困りますよね…ちなみに余談ですが、私がもらった中で一番要らないプレゼントは、熊だか豚だか分からないブラジル土産の白い置物です。夫は、熊だ、と言い張りますが、私は豚だと思っています(笑)。こんなふうに、皆さんも何かしら「要らないもの」をもらった経験があると思います。

実は、このキャンペーン前の同社の調査では66%の人は、要らないプレゼントをもらったことがあり、なんとその総額は8億9000万ポンド(1ポンド=140円とすると、1246億円)にも及ぶそうです。衝撃。

でも、ダイレクトに欲しいものを指定するのはちょっと気が引ける…そんな方は多いと思います。そこで新しいおねだりキャンペーンを展開したわけです。

キャンペーン参加者は、「自分が本当に欲しいもの」と「おねだりする相手の普段の行動パターン」を登録。すると、おねだり相手がよく行きそうな場所でバスシェルターや道路沿いサイネージに「ジョニー、見て! レイラは、今年のクリスマスにボディーウオッシュが欲しいわけじゃないんだよ!」とレイラが本当に欲しいノートパソコンの商品画像と共に表示。しかも表示するために生成された画像は、参加者にメールでも届くので、SNSでシェアすることもできるわけです。

ダイレクトにこれが欲しい!と言われるよりも、もし街角で彼女からのおねだりを見たら、ちょっと心くすぐられませんか? キャンペーンに参加するときに必ずこの量販店で売っている商品を指定するので、おねだりされた人は簡単。そのお店に行けばいいわけです。

私も今年のクリスマスには、「豚の置き物が欲しいわけじゃないんだよ」というコピーとアクセサリーの画像でポスターを作って、家中に掲出するクリスマスキャンペーンを展開しようと思っています。

どうでしょうか? 気象データ、フライトデータ、ビーコン、参加者の投稿、商品情報…、いろいろなデータが見事なアイデアとクリエーティブに結び付いて、“たまたま”そのOOHを見た人の心をくすぐるすてきなキャンペーンばかりですね。

そして次回(最終回)は、皆さんが一番気になる日本のダイナミックDOOHの今について、お話ししたいと思います!