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OOHの未来No.3

東京メトロ事例に見る
日本のダイナミックDOOH最前線

2017/10/18

デジタルテクノロジーの進化により、OOH(屋外広告・交通広告)も変革の時を迎えようとしています。この連載では電通アウト・オブ・ホーム・メディア局(OOH局)のメンバーが、主にデジタルサイネージを中心とした屋外広告・交通広告の進化と可能性をお伝えします。
第3回は電通OOH局・浜田桂氏とメトロアドエージェンシーの浜田恭子氏による「日本のダイナミックDOOH最前線」です。

OOHの未来 第3回 カバー画像
(左から)メトロアドエージェンシー 浜田恭子氏、電通 浜田桂氏


「私もサイネージ付けました」

※以下、電通の浜田=浜田(電)、メトロアドエージェンシーの浜田=浜田(メ)です。

浜田(電):電通の浜田です。

浜田(メ):メトロアドの浜田です(照)。

浜田(電):浜田さんもサイネージ付けたんですよね? 同じ業界に同じ名前で私と同じ苦しみを味わった人がいると思うと、うれしいです(笑)。

浜田(メ):付けました、付けました。浜田さんが付けたサイネージと同じサイネージシステムです。

浜田(電):電源とか回線とか、下準備が結構大変じゃなかったですか。

浜田(メ):そうなんですよ。普段生活してたら、電源とかWi-Fiなんて当たり前にあるじゃないですか。でもサイネージを付けるとなると、まず“その場所”に十分な電源や回線があるかを確認しなくちゃいけない。さらに地下鉄の駅の場合は“道路下”にあるので、道路管理者、つまり国とか都の許可が必要なんですよ。そういったことを考慮しながら場所を決めなくちゃいけないので大変でした。

浜田(電):そうですよねぇ。浜田さんの大変さ、ほんとよーく分かります(笑)。でも、メトロさんはすでにサイネージをたくさん持っていますよね。どうして今回新しいサイネージの実証実験をしようと思ったのですか?

浜田(メ):まず、なんといってもDOOH媒体の売り上げの伸びです。今までは、メトロの媒体も、中吊りを中心に車両や駅の紙媒体が売り上げの核でしたが、グラフを見ていただいても分かる通り、この5年間でDOOH媒体の売り上げが440%となりました。

東京メトロDOOH売り上げシェア
東京メトロ交通媒体売り上げ実績から(出典:メトロアドエージェンシー)

浜田(電):このグラフを見たとき、なんとなく分かっていたことが、ぱっと頭に焼き付いた感じで、衝撃でした。デジタルが伸びている感覚はありますが、440%という数字をグラフで見るとやっぱりすごいですね!

浜田(メ):そうなんです。なので、メトロとしてもこれからの稼ぎ頭であるDOOH媒体に今、力を入れる必要があって。さらにこれからは、外部データと連動してクリエーティブを変える「ダイナミックDOOH」(前回参照)を可能にしていくことがポイントと感じています。やはりOOHの媒体社としては、価値のある場所を持っている、ということがアドバンテージになります。「今、この瞬間、この場所」だからこそできることを提供するのが、私たちだ、と言いたいです。


日本人の春に寄り添った「金麦」キャンペーン

浜田(電):そうですね。まさにその通りだと思います。同じメトロのサイネージでも、場所や日時によって見ている人の属性も態度も違ってきますもんね。私も、会社のある新橋のサイネージはなんとなく「このクライアントはこんな素材出してるんだ」と仕事モードで見ていますが、休みの日の表参道では、単純に買い物好き女子の態度でサイネージを見てますもん。今日は、バッグを買いにきたのに、このブランドのコート欲しくなっちゃったな、みたいなね(笑)。

浜田(メ):分かります、分かります。そういう意味では、サントリー「金麦」のキャンペーンで桜の開花情報と連動したサイネージ広告を出したことは、私たちの中でとってもエキサイティングでした。初めて本格的に外部データと連動して、毎日、しかも駅によって刻々と変わるサイネージキャンペーンを展開できてうれしかったです。

 

浜田(電):桜の開花って本当に一大イベントですよね。日本人にとって春が来るということは特別なことで、希望に満ちている感じがします。「桜咲く春の季節、新しい1年が始まる」という瞬間に金麦が寄り添うことで、金麦を飲むと一層いい気分になれそうな感じがする。

浜田(メ):私も、仕事としてサイネージを見ていましたが、期間中、金麦が飲みたくなって飲んじゃいました(笑)。それと、Dynamicにクリエーティブが生成されることでこんなにたくさんのパターンを表示できるなんて、これは交通媒体の仕組みの歴史からすると本当にすごいことだ!と思いました。事前に入稿してもらうスタイルだと、こんなに何億通りもさばききれません。


ボクシング村田諒太選手の世界戦チケット連動キャンペーン

浜田(電):サントリーのキャンペーンのほかにも、メトロではダイナミックDOOHに関連して、今年はチャレンジの年だったんじゃないですか?

浜田(メ):そうですね。ボクシングの村田諒太選手の世界戦の際に、こんなキャンペーンで協力をさせていただきました。
 

 

浜田(電):チケットの情報がリアルタイムに更新されるのは、ウェブ上では当たり前のことですが、ここでやっぱりOOHの“強制視認性”が生きてくるなと思いました。ウェブでチケット情報を更新していても、「見ようと思って見た人」にしか伝わらないけれども、通りすがりにサイネージで見ることで「まだチケットあるんじゃん! 行ってみようかな!」と思わせることができる。まさに、通りすがりの人たちに語りかけるように訴求できる、OOHの強制視認性がなせる技だな、と。その後電車に乗っている移動時間に、すぐチケットを買うこともできますもんね。

浜田(メ):ウェブ上では当たり前の情報をサイネージに流すことで、態度変容を促せる、とってもいい事例だと思います。ある媒体での「当たり前」が、媒体を変えることで新鮮になるな、と実感しました。

浜田(電):こういうキャンペーンがどんどん増えてくることで、ダイナミックDOOHの良さがどんどん広がるといいですよね。


ダイナミックDOOHからプログラマティックOOHへ!

浜田(電):この二つの事例でもダイナミックDOOHの可能性を感じますが、メトロの既存の配信システムだと、まだまだできないことも多いのでは…。

浜田(メ):そうですね。それが、私たちの今年のもう一つのチャレンジです。冒頭のサイネージ付けました話ですが(笑)、こんな実証実験をやっています。

東京メトロ 新宿駅、赤坂駅、虎ノ門駅で クラウド型デジタルサイネージシステムの実証実験を開始します

OOHの未来 第3回 対談画像

浜田(電):ここでサイネージ設置の苦労話にもうひと花咲かせたいところですが(笑)、それは置いといて、この実証実験は、ダイナミックDOOHをもっと進めていきたいという考えがあってのものですか?

浜田(メ):その通りです。実は、現状のサイネージシステムでもDynamicな展開は可能なのですが、都度設定が必要だし、フレキシビリティーがもっとあったら!という課題があります。それを解決するために、システム自体もよりDynamicなコンテンツ展開に適したものを、と模索しているところです。

浜田(電):テクノロジーが、どんどんOOHマーケットを変えていきますね。本当は、DOOHへのコンテンツ配信部分だけでなく、現状の膨大な広告枠の管理や、入稿などのワークフローの部分もなんかもっと効率良くできないかなぁ、と思うところありますよね。

浜田(メ):本当にそうです!! それから、日本のOOHには、視聴率データに代わるようなオーディエンスデータがありません。「自社が持っている媒体は、本当はどれくらい、どんな人に見られているのか」というデータも取っていきたいと思っています。

浜田(電):まさに、そこまでいくと、高付加価値化と取引の自動化が進んだ「プログラマティックOOH」の領域に進化しますね。「配信の共通基盤」「共通指標」そして「取引の自動化」という三拍子がそろって初めてProgrammaticになることを考えると、メトロにとって、2017年は最初の一歩、チャレンジの年だ、という感じがしますね。後で振り返ったときに、2017年がまさにターニングポイントだった!といつか言える日がくるように、当社もどんどんとダイナミックDOOHからのプログラマティックOOHを加速させたいと思っています。

浜田(メ):当社の媒体をぜひとも積極的にプランにいれてくださいね(笑)。

浜田(電):もちろんです(笑)。今日は、浜田つながりでサイネージトークができてよかったです! どうもありがとうございました!

浜田(メ):こちらこそ、どうもありがとうございました!!