ドラマ、どんな見方をしてますか?
2017/09/22
ビデオリサーチでは、「テレビ×ネット」の利用状況を機械式で測定し、企業のオフラインとオンライン、トータルでのコミュニケーション活動をサポートする「VR CUBIC」という調査を行っています(※1)。
この「VR CUBIC」調査で得られたデータを分析し、テレビドラマの視聴者をその見方ごとで分類した“ドラマクラスター”を開発したので紹介します。
六つに分類されるドラマクラスター
一口にドラマ好きといっても、ドラマを見るきっかけや求める要素はそれぞれ違うということは容易に想像できます。そこで、ドラマを全く見ない人は除外し、ドラマを実際に見る人たちについて分析したところ、六つのタイプに分類できることが分かりました。早速、一つずつ見ていきましょう。
①ドラマ大好きクラスター(11.0%)
注:()内はドラマ視聴者に占める当該クラスターのボリューム
文字通り、ドラマが大好きな層で、F3・F2(※2)を中心とした女性層で構成されます。ドラマに関する情報収集が盛んで、クールごとに各局の新ドラマのラインアップをチェックしています。
また、リアルタイム志向が強く、視聴率への強い影響力があるとともに、ドラマに関する口コミ発信力もあり、他者を視聴にいざなってくれる役割も担ってくれるため、この層を攻略することは、ドラマの成否を占う上で非常に重要になってきます。番宣スポットや番組内告知が有効に機能する層ですので、その活用が必須です。
②脚本重視クラスター(6.3%)
原作や脚本、演出を重視するコダワリ派。この層もF3・F2を中心とした女性層で構成されます。やはりドラマに関する情報収集も盛んで、“ドラマ大好きクラスター”に次ぐ、視聴率に影響力を持つ層です。
“ドラマ大好きクラスター”と同じく、番宣スポットや番組内告知が有効なのですが、加えてEPG(電子番組表)の利用頻度も高いため、それらのコミュニケーションツールを上手に活用することが求められます。
③雑食録画クラスター(19.2%)
ドラマは、とりあえず録画しておき、ジャンルよりも主にキャストで視聴の有無を選ぶ、雑食系の視聴スタイルを持っている層です。
男女比率は半々で、F2・M2がこの層の中心です。
作品に対する思い入れはあまり高くなく、なんとなく習慣で見続けるタイプで、ドラマに関する情報収集度合も上記2層ほど熱量は高くありません。録画視聴が中心のため、視聴率への影響力は低い層になります。
④厳選録画クラスター(14.1%)
自分の好みのものだけを録画視聴する層です。男性比率がやや高く、M3・M2が中心になります。ドラマに関して一通りの情報収集はするものの、視聴する番組を自分の好みに忠実に選定する層で、具体的には刑事モノ・サスペンス・ミステリーなどの定番ジャンルが好きな傾向があります。
“雑食録画クラスター”同様、録画視聴が中心のため、視聴率への影響力は低い層となります。
⑤付き添い視聴クラスター (18.3%)
家族の誰かが見ているドラマを一緒に見る共視聴型の層で、M3が中心になります。ドラマへのこだわりは希薄で、強いて挙げるなら刑事モノ・サスペンス・ミステリーが好きな傾向があります。ただ、リアルタイム志向が強いため、結果的に視聴率への影響力を発揮する層ではあります。
⑥低関与クラスター (31.0%)
ドラマ全般に対する関心が低く、1クールに1本見るか見ないかといった程度で、M3・M2を中心として男性比率が高い層です。盛り上がっているものに追随する傾向は強く、“流行”や“話題性”には敏感に
反応を示す層なので、ネット上で“はやってる感”が伝われば視聴に至るかもしれません。
これら六つのクラスターをドラマ感度(≒ドラマ好き)軸と、
情報感度(≒ドラマ情報収集力)軸で整理すると、【図表1】のような形のプロットになります。
「逃げ恥」は回を重ねるごとにどのクラスターも取り込んだ
では、各クラスターの視聴者が実際にどのようにドラマを見ているのかを、昨年末に大ヒットした「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)のケースで見てみましょう。
【図表2】の棒グラフで、放送回ごとのリアルタイム接触率(※3)推移を確認することができます。実際のテレビ視聴率同様、回を追うごとに右肩上がりに推移していることが分かります。
各クラスターの接触率は折れ線グラフで示しておりますが、まず初回放送で “ドラマ大好き”“脚本重視”などの「ドラマ好きグループ』が反応していたことが分かります。
過去にも話題作に度々出演してきた新垣結衣さんが主演であることやコミック原作作品であることなどが影響していたのかもしれません。
その後、「恋ダンス」「ムズキュン」などがネット・SNS上で話題になったことも手伝ってか、2話以降は“付き添い”“低関与”などの「追随グループ」が反応しています。特に最終回の接触率上昇には、この二つの「追随グループ」が貢献していたことも分かります。
一方、“雑食録画”“厳選録画”は、他グループと比べてリアルタイム接触率自体は低い水準で推移しているものの、なだらかな上昇傾向は示しており、徐々にではありますが「なるべく早く見たい」という意識が芽生えて、リアルタイムで見るようになっていったようです。
録画グループが話題の火付け役に
各クラスターの接触率の反応タイミングからクラスター同士の情報拡散の様子を類推すると、初回視聴の牽引役“ドラマ大好き”“脚本重視”の「ドラマ好きグループ』が火付け役となって、“付き添い”“低関与”といった「追随グループ」へと拡散していった様子が見受けられます。
また、“雑食録画”“厳選録画”などの「録画グループ」は、リアルタイム視聴には直結しにくいターゲットではあるものの、ドラマの話題性を獲得する上では重要なターゲットであることが分かります。
特に「逃げ恥」においては「恋ダンス」「ムズキュン」といったネット上での話題喚起が「追随グループ』へ働き掛けた可能性も高く、「ドラマ好きグループ』「録画グループ』の視聴感・話題提供がブームの火付け役となったと推察されます。
ドラマは、一部のシリーズものを除けば、放送局にとって3カ月に一度新商品に一新されるという、“短期決戦”商材です。この商材の特性上、初回~3話の視聴率でおおよその数字的なベースラインが見えてきてしまうこともあり、初回放送前に番宣スポットや番組内告知などを駆使してどれだけ認知を獲得し、視聴喚起できるかが各局のコミュニケーション課題となっています。
このドラマクラスターは、ドラマをより盛り上げるための切り口になると考えております。そこで、ここからは放送局がこの6タイプの視聴者にどのようにアプローチしていくといいのかを、タイミング別に整理してみます。
各クラスターへのアプローチ法とは?
<タイミング1:前期>初回放送まで
初回の放送が開始するまでに重点的にアプローチすべき視聴者は、初回放送の視聴率を左右する“ドラマ大好き”“脚本重視”の2クラスター。この2層に刺さっていればいるほど、初回視聴率はより高くなると考えられます。
“ドラマ大好き”はキャスト志向が強く、“脚本重視”は原作・脚本・演出などの周辺情報が刺さりやすい傾向があります。いずれの層も番宣スポットや番組内告知が届きやすいターゲットであるため、それぞれのクラスターにとっての訴求ポイントを切り分けて、違う宣伝・告知を考えるといいでしょう。
<タイミング2:中期>初回放送~3話にかけて
放送開始から3話にかけての注力顧客は、ドラマ全体の“評価”の鍵を握る上位4クラスター“ドラマ大好き”“脚本重視”“雑食録画”“厳選録画”。
リアルタイム視聴の“ドラマ大好き”“脚本重視”と、録画視聴の“雑食録画”“厳選録画”では、反応タイミングにこそ差はあるものの、ドラマに関する情報収集力もあり、放送局の仕掛けた“仕掛け”には反応し、拡散してくれる層です。特に“厳選録画”は、刑事・サスペンス・ミステリーなどのドラマのマーケティングに際しては有効活用したいターゲットです。
<タイミング3:後期>中盤~終盤にかけて
注力“顧客”は、ドラマ全体の視聴率を左右する“付き添い”“低関与”の2クラスターで、この2層でドラマ視聴者の実に49.3%とボリュームゾーンになり、中盤以降でこの層をつかまえられるかで勝負が決まります。
この2層は、自発的にドラマの情報収集をするわけではないのですが、「ドラマ好きグループ」との共視聴や「録画グループ』がSNSで拡散してくれた話題には反応する層です。「今話題の○○」「××ブーム」といった取り上げ方が刺さりやすいターゲットです。リアルタイム志向も高いので、ドラマ中盤以降での“中押し”番組を選定する際のターゲットとして規定するとよいと考えられます。
以上の話を表にまとめたものが【図表3】になります。
今回は「ドラマクラスター」の詳細を、放送局向けの事例として紹介いたしましたが、当社ではこのようなコミュニケーション領域における分析結果を基に、“打ち手”につながるソリューションを多数用意しております。放送局の皆さまに限らず、CRM活動・DMP構築、精度の高い広告配信セグメントの開発など、皆さまが抱えるデジタル課題についてもお手伝いができればと考えております。
お読みいただき、本当にありがとうございました!