福島の環境回復を伝えたい。福島県在住の高校生3人が世界に発信
2017/11/09
2011年の震災で原発事故のあった福島県では、多くの誤解に基づく風評被害が問題となってきた。正しい情報を伝えてこの状況を改善すべく、福島県在住の高校生3人が放射線量に関する科学的な調査結果のレポートや、自分たちの福島での生活について広く伝える活動を国内外で行っている。
この活動は、物理学者である東京大学の早野龍五名誉教授のサポートを受けて行われているもの。発端となったのは、早野教授の協力のもとに福島高校の生徒らが著した論文「D-Shuttle Project : 福島県内外の高校生個人線量比較」。2015年に発表されたこの論文は、英国の学会専門誌にも掲載され、福島の高校生たちが積極的に情報発信を行う機運が高まった。
今年の9月23日には、早野教授と福島高校の生徒2人にふたば未来学園高校の生徒も加えたメンバーで、オンライン学習塾「アオイゼミ」の特別授業として「放射線教育特別授業:福島の高校生と語る大地震からの6年、そして未来」をライブ配信した。
アオイゼミは中高生を対象としたライブ学習サービス。この特別授業では、小学生のときに被災した福島の3人の高校生が、震災当時の体験と共に自身らが調査したさまざまな科学的データを紹介し、全国の受講者に対して福島の環境の回復状況や食の安全についての知識を伝えた。
そして10月30日には、早野教授をはじめ、アメリカ・バークレー国立研究所の村上治子博士、環境省の協力を得て、同研究所およびカリフォルニア大学バークレー校日本研究センターの主催によるイベント「The Future of Fukushima; A New Generation Rises to the Challenge」に3人の高校生が参加し、福島の現状を伝えるプレゼンテーションを行った。
同イベント会場には一般参加者、バークレー校の学生および大学関係者ら122人が参集。3人の声に耳を傾けた。
福島高校スーパーサイエンス部2年の沖野峻也さんは、自分たちで行っている外部被ばく線量の解析データを示して「今の福島の線量は低下している」と語り、国内の他の地域や他国と比べても線量が高くはないことを伝えた。
同じく同校2年の荒帆乃夏さんは、「福島にはおいしい食べ物がたくさんある。福島=美しいというイメージを持ってもらえるよう国内外に発信したい」との希望を述べた。
ふたば未来学園高校2年の遠藤瞭さんは、将来の目標として「福島第1原発の廃炉に携わること」を挙げ、故郷大熊町の復興への思いを語った。
イベントでは村上博士をはじめ、福島に滞在経験のあるジャーナリストや環境省の職員らからも福島の現状が語られ、終了後は福島に関する展示物や映像紹介が行われた。
また、今回の渡米では、トークイベントに先駆けて高校生3人が現地の放送局や新聞社へのメディアキャラバンを展開。アメリカでの「フクシマ」という言葉へのネガティブな風評を払拭すべく、英語と日本語で熱心にプレゼンテーションを行った。