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デザインのない金融のイノベーションが失敗する理由とは?

frogが手掛けるデザインとイノベーションの現在・未来 №8

  • frog

2017/12/04

デザインのない金融のイノベーションが失敗する理由とは?

デザインのない金融のイノベーションが失敗する理由とは?
この記事は、frogが運営するデザインジャーナル「DesignMind」に掲載されたコンテンツを、電通CDCエクスペリエンスデザイン部岡田憲明氏の監修の下、トランスメディア・デジタルによる翻訳でお届けします。

 

今、金融サービス業では、デザインの基本であるユーザーを中心とした考え方が重視されています。デジタル化が進展し、ビジネスの変革が迫られている金融業界の中で、一人一人のニーズに寄り添う商品やサービスの提供に、不可欠な要素とはなんでしょうか?

今、金融サービスに求められる変革とは

金融サービス会社は、ユーザーを起点とするソリューションのデザインに力を注ぎ、ビジネスを変革する必要があります。ユーザー行動の変化、そして新しいテクノロジーやビジネスモデルの登場が、金融サービス業界を揺さぶっているのです。

最近(※)のゴールドマン・サックス調査報告書は、従来型の金融サービスが、最新技術を駆使した新しい企業に4.7兆ドルの収益を奪われかねないことを示しています。銀行は多大なIT投資でこれに対抗していますが、技術予算だけでビジネスを変革することはできません。金融サービス会社が競争力を維持するには、人を中心に据えたサービスの開発を重視する必要があります。

※本記事の英語版は2015年に公開されています。

 

frogは、クライアントやパートナーとのコラボレーションのなかで、金融サービスの変革に取り組みながら、古い企業も新興の企業も未来への道を歩んでいるのを目の当たりにしています。私たちは、クライアントと関係者を含め、数人の専門家と顔を合わせ、この業界がどのように進化しているか、誰が変化を推進しているか、各社がどのように変革を実現しているかを話し合いました。

これによって分かったのは、この業界のイノベーションには、顧客とのエンゲージメント、顧客のニーズを発展させた商品やサービス、部署間のコラボレーションが活発な文化の確立が必要だということです。次章から、それぞれを解説します。

ENGAGE──エンゲージメント

最近まで財務管理は個人的な体験でした。顧客は信頼する窓口担当者と向き合って椅子に座り、担当者は顧客ごとに個別の対応をしました。ATM、オンラインバンキングや投資サービス、自動アドバイザリーツールが普及すると、窓口担当者と顧客の距離が広がり、特定のプラットフォーム(銀行の支店など)の役割も変化しました。今日の顧客には、かつてなく多くの財務管理オプションがあります。しかし、それらのオプションが個人のニーズや希望に合わない場合もあります。

画面の数字が増えるのをただ見るためだけに金融サービスを利用する人はいません。誰しも、大きな目標のために貯金や、投資、財務管理をします。子どものために貯蓄することも、個人的、職業的な夢に投資することもあります。安全、自由、生活のクオリティーのためにお金を管理するのです。

金融サービス会社は、そのようなニーズや期待を念頭に置き、対面およびデジタル顧客接点の双方で、時代遅れになってしまっているか、あるいは効果の薄いカスタマーエクスペリエンスをデザインし直し、顧客とのエンゲージメントを見直す必要があります。

frogは何十年も、金融サービス業界の企業が顧客ニーズに応えるお手伝いをしています。市場調査とユーザーインタビューにより、既存の顧客の行動と傾向を明らかにし、人間がより良い体験を得られる未来のビジョン化と構築に役立てています。

また、さまざまなタイプの顧客を定義する原型をつくることにより、具体的な目標を持った実在の人々の視点で、信頼や安心感といった感情的ニーズを調査することができます。この人間中心のアプローチでは、具体的なソリューションに向かう前に、まず個人のニーズと目標に注目します。

香港の保険会社AIAのリージョナルディレクターのスティーブ・モナハン氏は、次のように述べています。「ユーザーを中心としたデザインは、どんなオムニチャネル開発にとっても重要です。成長を飛躍させるには、カスタマージャーニーの三つのレベルに注目することが欠かせません。人間が心を動かされて物を購入し、論理で正当化し、簡単なものと理解した時に行動を起こすことは良く知られています。人間中心デザインの用語ではESEフレームワークと呼びます。体験(Experience)が感情を生み、シンプルさ(Simplicity)が論理的な意思決定を導き、労力(Effort)の最小化は取引の成立に必須です」

カスタマーエクスペリエンスの向上は、顧客の流出を防ぎ、新しい収益ストリームの発見につながります。これらのチャンスを生かし、競争において有利な差別化を確保するには、金融サービス会社が、成長を実現させるべく、既存のカスタマーエクスペリエンス以上のことを考える必要があります。

ENABLE──採り入れる

金融サービス会社にとって、市場の破壊的な力学に対応するためにテクノロジーを利用することは避けられません。金融情報がウェアラブルデバイスでアクセスされ、管理されるようになると、モビリティー(個人の移動性・機動性)は新しい意味を持ちます。消費者はプライバシーとセキュリティを重視し、クレジットの監視と仮想通貨に向かうでしょう。マシンインテリジェンスは、業界に新しい可能性を提供すると同時に、人間の体験より効率的な体験を優先する恐れがあります。

改革を進める金融機関が新しい機能性のニーズに応えている一例がAPI(※)です。APIをサードパーティアプリケーションの開発者に提供することにより、企業は、大きなテクノロジーエコシステムにおける親しみやすい存在として自社を位置づけることができます。

※API(Application Programming Interface)は、ソフトウェアの機能を公開し、他のソフトウェアと機能を共有できるようにする仕組み

 

この関係により、銀行はテクノロジープロバイダーではなくテクノロジーインテグレーターとして確立され、フィンテック(ファイナンステクノロジー)のスタートアップ企業はライバルではなくパートナーとなります。

米大手銀行BNY Mellonのコーポレート・デジタル・マーケティング担当世界責任者であるビル・バレット氏は、次のように述べています。「BNY Mellonでは、API経由で独自の製品を他の製品と接続できるよう、レガシーシステムの再構築に取り組んでいます。これにより適応力を向上させ、お客さまのニーズに対して、より敏速に反応できるようになります。毎回ゼロから始めるのではなく、異なるテクノロジーを組み合わせて新しい製品を効率的に作り出すのは、コンシューマー業界をお手本にしています」

新しいパートナシップと外部の革新に注目するのは有益ですが、多くの革新的なアイデアと同様、金融サービス会社が組織内に新しい考え方を導入することも必要となるでしょう。

EVOLVE──進化する

社外の革新は、社内の革新的な思考がなければ持続できません。すばらしいアイデアを長続きするソリューションに変えるには、強力なリーダーシップと部署間のコラボレーションを活発にする文化が必要です。

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