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マテリアル・イノベーション!No.1

「マテリアル・イノベーション」始めました!

2018/02/20

リリコトリコ

マテリアル(材料・素材)に着目して新たな価値を生み出す。それが電通の「マテリアル・イノベーション」プロジェクトです。新機能素材が持つイノベーティブな個性を、広告会社のクリエーティブの力で効果的かつ印象的にカットアップすることで、新たな用途やシーン開発を行います。マテリアル・イノベーションの魅力や特徴をお伝えします。


【目次】
埋もれていた「新機能素材」を魅力的な商品にするプロジェクト発足
着るだけでお肌を弱酸性に保つ新機能素材「ラフィナン」との出合い
試行錯誤の末にたどり着いた“ソックス”と“蝶々のワッペン”
小さく早く低コストでつくる「マイクロビジネス」、いかがですか?

埋もれていた「新機能素材」を魅力的な商品にするプロジェクト発足

私たちが「マテリアル・イノベーション」プロジェクトで実践するのは、これまでBtoBの用途にしか使用されていなかったり、開発はしたものの商品化されずに埋もれてしまっていた新機能素材を発掘し、BtoCの商品として発売することです。

単なる提案や企画だけにとどまらず、電通が実際に商品化、販売までを行い、実証していくアプローチをしているのが大きな特徴です。

同プロジェクトの商品化第1弾として、2017年12月に電通サイエンスジャムから、着るだけで肌を美しく整えるソックス型化粧品「リリコトリコ」を発売しました。

今回はこの商品の企画スタートから実際に発売するまでの流れをご紹介します。

リリコトリコ
ソックス型化粧品「リリコトリコ」
ECサイト

着るだけでお肌を弱酸性に保つ新機能素材「ラフィナン」との出会い

ソックス型化粧品「リリコトリコ」には、帝人フロンティアが開発した新機能素材「ラフィナン」を使用しています。

このラフィナン、身にまとうことで肌荒れを防ぎ、皮膚に潤いを与える日本初(※)の“着用する化粧品”なのです。

※インナーウエアタイプの化粧品として

 

ラフィナンに出合ったのは、もともと私がプロダクトデザイナーをしていたことと関係しています。

プロダクトデザインには、素材そのものやその色や質感、仕上げなどを専門的にデザインする「CMF」(カラー、マテリアル、フィニッシュ)という領域があります。プロダクトデザイナーの習慣として、日々新しいCMFの情報収集をしている私は、あるとき繊維の専門紙に掲載されていたラフィナンを見つけたのです。

【ラフィナンの特徴】

  • ・日本初の着用する化粧品(化粧品製造販売届出済)
  • ・肌荒れを防ぎ、皮膚に潤いを与える
  • ・一般の衣服と同様に洗濯が可能

素材としてのポイントは、リンゴ酸を配合していることです。リンゴ酸とはなんでしょうか?

一般的に人間の肌表面は、pH(水素イオン指数)が「弱酸性」(pH4.5〜6.0)に保たれていることが健康な状態とされています。汗をかいたり、乾燥が続くと肌表面が「アルカリ性」に傾きやすく、肌トラブルを引き起こすことがあります。

pH

逆にお肌が弱酸性に保たれると、細菌の繁殖を防ぎ、外部からの刺激や水分の蒸発を防ぐことができます。

そしてリンゴ酸は、人間の肌表面のpHを弱酸性に整える効果を持っています。ラフィナンはリンゴ酸の力で肌荒れを防ぎ、皮膚に潤いを与えてくれるのです。

試行錯誤の末にたどり着いた“ソックス型化粧品”と“蝶々のワッペン”

「繊維なのに化粧品?なんて画期的な素材!」

すぐに興味を持った私は、さっそく開発元である帝人フロンティアにコンタクトをとり、素材の紹介をしていただきました。2017年1月のことです。

その時点でのラフィナンは、素材としては画期的だったものの、商品化されたものはいずれもインナーウエアなど「機能価値」を前面に押し出したものばかり。

女性がおしゃれアイテムとして日常的に使用したり、誰かに自慢したりする「感性価値」が十分ではないように感じた私たちは、着る化粧品というユニークな機能価値は生かしつつ、さらに感性価値も兼ね備えた商品を企画することにしました。

なお、このラフィナンのプロジェクトでは、私がプロジェクトリーダーとなってプロジェクトマネージメントを担当し、プランニングをマーケティング・ソリューション局の木幡容子さん、アートディレクションを第4CRプランニング局の遠藤生萌さんが担当。女性社員が3人で取り組んでいます。

さて、身に着けることで効果を発揮するラフィナンの特性を生かし、「長時間広い範囲に密着する商品」ということで私たちが最初に企画したのが女性向けの「タイツ」です。しかし、素材特性上の理由でタイツの形成が難しいことが分かり、途中で「ソックス」に企画変更することに。

とはいえ、これまた素材特性上の理由でソックスの色選択には制約があり、柄を入れることさえ難しいことが課題でした。

さらに化粧品ということで、法的にもさまざまな制約があります。例えば、「化粧品」として扱われるソックス本体は、プリントなど、化粧品成分に影響を及ぼす可能性がある装飾加工を施すことができないのです。

通常ソックスのデザインでポイントになる「色」「柄」「プリント」でバリエーションが付けられないことで、「あ、これ欲しい」と思わせる感性価値の付加がとても難しい状況でした。

そんな制限の中、感性に訴える仕組みとして私たちがたどり着いたのが、購入者の好みのものにパーソナライズできる「別売のマウントワッペンを用意し、ソックスにワッペン用のアタッチメントを付ける」というアイデアです。

リリコトリコ
ソックスは2色展開。アタッチメントにより蝶々のマウントワッペンを取り付けられる

ワッペンのモチーフは足にとまっていてかわいらしい「蝶々」で、日常にちょっとしたイノベーションを起こすバタフライエフェクトという意味も込めました。

ソックスは、誰でも日常的に使用するアナログなアイテムです。そんなソックスにラフィナンを使用することで、どんなイノベーションがあるのでしょうか?

■ケース1「最近忙しくてお肌の手入れをする時間がない」という方
→履いているだけで肌が美しく整う“ながらスキンケア”ができます。

■ケース2「寝る前には必ずクリームを付けてからソックスを履く」という方
→クリームを付けるその一手間を省くことができます。

コンセプトは「楽して楽しいケア」。本当にちょっとした小さなイノベーションを日常に起こすことを、今回は目指したのでした。

小さく早く低コストでつくる「マイクロビジネス」、いかがですか?

商品としてのリリコトリコは以上のような経緯で生まれましたが、今回のプロジェクトにはもうひとつお伝えしたいユニークな側面があります。

リリコトリコのプロジェクトは、クライアントワークではありません。電通サイエンスジャムの事業として、商品の企画からPR、ECサイトでの販売、ポップアップショップ、梱包、出荷、在庫管理まで、一貫して私たち自身が手掛けています。

もちろん、ただつくって販売するだけではなく、きちんと黒字化できるプロジェクトペイラインを想定し、販売価格設定をしています。

今回は、特に新機能素材に着目したこともあり、プロダクトは「金型を使わず」「通信せず」「通電しない」ことで、少量低コストとアフターサービスの負担低減を実現できました。

ECサイトや在庫管理、ポップアップショップの出店などについては、既存のさまざまなオープンかつ低コストのサービスを組み合わせて活用していく方針を取りました。

プロダクトを小さく、早く、できるだけ低コストでつくる。プロトタイピングではなくリアルに販売して、ユーザーの生の声をフィードバックに生かしていく。この仕組みと仕掛け自体が新しい取り組みになっています。いわば「マイクロビジネス」というスキームをつくったのです。

マイクロビジネス

このマイクロビジネスは、メーカー以外の場所でのものづくりと、ビジネスのひとつの実験ケースになるとともに、大企業で「新規事業をできるだけ小さく素早く実施したい」というニーズにもマッチすると思います。

「マテリアル・イノベーション」プロジェクトは、これからも引き続き新たな新機能素材の商品化を進めていきます。

最後に「リリコトリコ」では、「ソックスとワッペンをセットで販売してほしい」というお客様の声にお応えして、ホワイトデー向けのギフトセットを2月19日から発売しています。詳しくはECサイトをご確認ください!

ポップアップショップ
ポップアップショップ
2018年1月18〜20日、清澄白河「Laundry&Cafe ワールドネイバーズ清澄白河」で展開したポップアップショップの光景