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いま改めて「シニア・マーケティング」を考えるNo.1

夫婦は似たもの同士!? ~シニア夫婦に聞きました~

2018/06/04

現代シニアの研究を進めていくと、“シニアはひとくくりではなく価値観の違いによってタイプが分けられる”ということを実感する場面に出合います。その際に、タイプ別に見た夫婦の組み合わせを尋ねられることがしばしばあります。そこで、この疑問についてシニア夫婦に調査を実施、それを当社ひと研究所のシニア研究チーム「VRエイジング・ラボ」が開発した「シニア価値観セグメント」を使って検証しました。

シニア価値観セグメントとは、考え方も行動も多様化・複雑化しているシニア層を理解するための新たな切り口として、“価値観”で分類したセグメント。

価値観は6タイプに分類されます。下図はそれぞれを行動が積極的か控えめか、志向が伝統的・保守的な傾向か変化や刺激を好む傾向かという2軸4象限上にプロットしたものです。

アクティブトラッド:リタイアして悠々自適に暮らしている方が多く、お金あり時間あり。消費も行動も積極的だが、伝統的な家族観が強い。いわゆる「アクティブシニア」と言われてきたイメージに最も近い。

 

ラブ・マイライフ:若さや美への追求心、アンチエイジング意識が強く、新しい物好きで情報通、流行にも敏感。「新型」のアクティブシニアの一つ。

 

社会派インディペンデント:人とのつながりを大事にし、新しい人脈を築くことや世代を超えた交流にも意欲的。「新型アクティブシニア」のもう一つのパターン。

 

淡々コンサバ:現在の生活に十分満足していて、これ以上に多くを望まない。強い主張をももたず、日々淡々と平穏な暮らしを送っている。従来言われてきた「高齢者」イメージに最も近い。

 

身の丈リアリスト:何かとお金がない、お金がかかるからできないという諦め感を口にする。お金を本当に持っていないわけではないが、将来不安からか消費行動は消極的。

 

セカンドライフモラトリアム:社会に取り残される不安感や、人や社会とつながりたい思いは強い。が、その術がわからず、これからの人生をどう過ごしたらよいのか模索している。

 

【参考】シニア価値観セグメント 詳細はこちら↓

https://www.videor.co.jp/digestplus/title/2018/01/7717.html

【自分のシニア価置観セグメントが判定できます】

シニア価値観セグメント判定チェックはこちら↓

https://www.videor.co.jp/digestplus/title/2018/01/7722.html

 

夫婦は「似たもの同士」の組み合わせになりやすい!

シニア価値観セグメントは6タイプずつなので、「夫×妻」の組み合わせパターンは36通り存在します。その組み合わせパターンを見てみたところ、同じタイプ同士の夫婦は全体の55%。つまり、シニアの夫婦は半数以上が似たもの同士ということが分かりました(図1)。

細かく見ていくと、組み合わせで最も多いのは「淡々コンサバ」同士。次に「セカンドライフモラトリアム」同士、そして「身の丈リアリスト」「アクティブトラッド」同士と続きます。

実は、単純に夫婦それぞれのセグメントの構成比から推計すると、理論上は同じタイプ同士の組み合わせが発生する確率は2割強という数字でした(図2)。

なのに、実際には5割を超える組み合わせが発生するということは、「夫婦は似たもの同士の組み合わせになりやすい」ということが言えます。

この理由として考えられるのは、次の2点です。

①元々価値観が同じ人同士が夫婦になりやすい。

②元々は違う価値観だったが、長年連れ添っていくうちにお互いに影響し合って似たもの同士になった。

①の背景として、今のシニアは、恋愛結婚率がお見合い結婚率を上回った“結婚に至る過程の歴史的転換点”(※国立社会保障・人口問題研究所より引用)にいたことも影響として小さくないのでは、と推察できます。この“歴史的転換点”は1960年代後半にありました。今の70代前半の人たちがちょうど結婚する年齢にさしかかった頃に当たります。

今回は70代後半より上の年齢の人を調査対象としていないので、あくまで仮説となりますが、まだまだお見合い結婚が多かった世代の人々は、本人の希望以外の条件によるマッチングが主流だったため、結婚当初から相手と価値観が合致することは、かなり確率の低い偶然であったことでしょう。

一方、今のシニアは自分で相手を選んで結婚することができるようになってきた世代であり、一世代前の人々よりも、元々価値観が同じ人同士のカップルが誕生しやすい環境にあったのではないかと考えられるのです。

②については、今回の調査の中で「長年連れ添っているので全て受け入れている」(セカンドライフモラトリアム同士・妻64歳の回答)という声を見つけました。

これまでも、実際にシニアの方々にヒアリングしていると、なんだかんだ夫または妻について軽口や悪口を言いながらも、「まぁ、うちは似たもの夫婦だからね」とおっしゃる方も少なくありませんでした。中には、「最近、顔まで似てきた」と自覚(?)している方もいらっしゃいました。

「似たもの夫婦」や「夫婦は従兄弟ほど似る」といったことわざが存在することも、ある意味裏づけのようにも感じます。

 

違うタイプの組み合わせでは 「淡々コンサバ&セカンドライフモラトリアム」が多い

次に、夫婦で価値観タイプが異なる組み合わせについて見ていきます。

まず、組み合わせが多かったのは、「夫:淡々コンサバ/妻:セカンドライフモラトリアム」(6.3%)、「夫:セカンドライフモラトリアム/妻:淡々コンサバ」(4.7%)。夫婦どちらかが「淡々コンサバ&セカンドライフモラトリアム」の夫婦が1割超で最も多い組み合わせとなります。

その次が夫婦どちらかが「アクティブトラッド&セカンドライフモラトリアム」の組み合わせで約5%。以下、「ラブ・マイライフ&セカンドライフモラトリアム」「セカンドライフモラトリアム&身の丈リアリスト」「身の丈リアリスト&淡々コンサバ」が4%台で続きます。それ以外の組み合わせは3%以下です。(図3)

ちなみに、最も少なかったのは「ラブ・マイライフ&淡々コンサバ」の組み合わせ(0.9%)。どちらが夫であれ妻であれ、最もアグレッシブなタイプと最も平穏を愛するタイプは共存しにくいのかもしれません。

 

お問い合わせ先 hitoken@videor.co.jp

 

●調査概要

対象者:55~74歳の夫婦860組

調査手法:インターネット調査

調査時期:2016年11月

 ソリューション事業局 ひと研究所 エイジング・ラボ リーダー 對馬友美子

ビデオリサーチ「ひと研究所 VRエイジング・ラボ」

シニア市場の活性化を目指して立ち上げたシニア研究プロジェクト。リアルなシニアを捉えマーケティング活動に生かすべく、研究活動や情報発信、企業のシニアマーケティングへのコンサルティング業務を行っています。

ひと研究所 : http://www.videor.co.jp/hitoken/#anc2