満足度が高いのは、同じタイプ同士より違うタイプの夫婦!~シニア夫婦に聞きました~
2018/06/18
「シニア価値観セグメント」とは・・・ 考え方も行動も多様化・複雑化しているシニア層を理解するための新たな切り口として、"価値観"で分類したセグメント。価値観は6タイプに分類され、それぞれを「行動が積極的か控えめか」、「志向が伝統的・保守的な傾向か、変化や刺激を好む傾向か」という2軸4象限上にプロットしたもの。
アクティブトラッド:リタイアして悠々自適に暮らしている方が多く、お金あり時間あり。消費も行動も積極的だが、伝統的な家族観が強い。いわゆる「アクティブシニア」と言われてきたイメージに最も近い。
ラブ・マイライフ:若さや美への追求心、アンチエイジング意識が強く、新しい物好きで情報通、流行にも敏感。「新型」のアクティブシニアの一つ。
社会派インディペンデント:人とのつながりを大事にし、新しい人脈を築くことや世代を超えた交流にも意欲的。「新型アクティブシニア」のもう一つのパターン。
淡々コンサバ:現在の生活に十分満足していて、これ以上に多くを望まない。強い主張をももたず、日々淡々と平穏な暮らしを送っている。従来言われてきた「高齢者」イメージに最も近い。
身の丈リアリスト:何かとお金がない、お金がかかるからできないという諦め感を口にする。お金を本当に持っていないわけではないが、将来不安からか消費行動は消極的。
セカンドライフモラトリアム:社会に取り残される不安感や、人や社会とつながりたい思いは強い。が、その術がわからず、これからの人生をどう過ごしたらよいのか模索している。
前回は夫婦の組み合わせタイプの数の傾向をご紹介しましたが、では、組み合わせタイプによる夫婦の満足度はどうなっているでしょうか。 夫婦の関係性にどの程度満足しているかをそれぞれ0~100点で評価してもらい、夫婦の平均点を見てみました(図1)。
その結果、最も満足度が高かったのは「夫:ラブ・マイライフ/妻:社会派インディペンデント」夫婦でした。全体の平均点が73.9点のところ、87.5点とかなりの高得点です。
また、ランキング上位の組み合わせを見てみると、1位から4位までを違うタイプ同士の組み合わせが占めていました。
同じタイプ同士は5位にやっと「アクティブトラッド」夫婦が出てきます。それ以外の同じタイプ同士のランキングを見ると、「身の丈リアリスト同士」が18位、「淡々コンサバ同士」21位、「セカンドライフモラトリアム同士」25位、「社会派インディペンデント同士」28位、「ラブ・マイライフ同士」35位と、軒並みランキングの下位でした。
同じタイプ同士の夫婦は数が多いのですが、満足度がいまひとつ。似た者同士だからこそ衝突しやすいという一面もあるのでしょうか。それを端的に表しているのが、「シニア価値観セグメント」の4象限で同じ右上(第1象限)の“新型アクティブゾーン”に位置する「ラブ・マイライフ」と「社会派インディペンデント」の組み合わせです。前述の通り、最も満足度の高いカップルは「夫:ラブ・マイライフ/妻:社会派インディペンデント」ですが、逆に「妻:ラブ・マイライフ/夫:社会派インディペンデント」カップルも、双方の満足度は高いようです。
一方で、「ラブ・マイライフ同士」「社会派インディペンデント同士」の夫婦はお互いに満足度が低め。どちらも共通の“新型アクティブシニア”の要素を持つこの2タイプは、向いているベクトルがまったく同じだと個性が強すぎてぶつかり合い、お互いが少し違う方向に向いていることでうまくいっている可能性が考えられます(図2)。
社会派の妻を持つ「モラトリアムおじさん」の悲哀
また、夫婦のどちらか一方が人付き合いがあまり得意でなく、これといった趣味も見つけられていない「セカンドライフモラトリアム」の場合、配偶者がどのタイプであろうと、満足度が双方低めとなっていることが特徴的です。唯一、双方の満足度が高いのは「夫:モラトリアム/妻:アクティブトラッド」の夫婦のみでした。
また、「夫:モラトリアム/妻:社会派インディペンデント」は、夫の満足度は低く妻は高い傾向にありました。“自由にさせてくれる夫に感謝しつつイキイキと社会に出ている妻”と“何も言えず置いていかれて寂しい夫”というイメージでしょうか。自分も何かやりたい、という気持ちは湧いているのに、出掛けていくのは妻ばかり…何をしていいのか分からなかったり迷ったりしてくすぶっている「モラトリアムおじさん」たちの声が聞こえるようです。
シニア夫婦には、「入り口と出口は一緒に、中では別行動」がいい?!
ここまで見てきたことをまとめると、
◎シニア夫婦の価値観の組み合わせは、同じタイプ同士になりやすい
◎まるっきり同じタイプ同士は、夫婦の関係性への満足度が低め
となります。
シニア夫婦をターゲットにした商品やサービスは現在も多々ありますが、どれも夫婦が仲良く一緒に過ごしたり楽しんだりすることを前提にしているものが多いように感じます。視点を変えて、長年連れ添った夫婦だからこそ、同じ価値観同士だとぶつかりやすかったり、少し違うタイプの方がうまくいっている傾向を考慮した新しい方向性があるかもしれません。
例えば、旅行プランなら、行き帰りは夫婦一緒でも旅先ではあえて別行動の提案も意外と受けるのではないでしょうか。
実際にエイジング・ラボメンバーのお母さん(50代後半)は、お父さんと買い物に行くのがかなりのストレスらしく、IKEAのキッズルームを見て、「買い物に興味ないおじさんを預かって、遊ばせてくれるスペースがあればいいのに」とつぶやいたそうです。デパートやショッピングモール、GMSなどには座って休憩できるスペースもあるのですが、それだけだとどうしても“待たせている”という意識にさいなまれ、買い物に集中できない、とのこと。確かにそういうスペースがあれば、お父さん本人も楽しめますし、お母さんもお父さんに気兼ねすることなく買い物ができて、お互いメリットがありそうです。
特に「モラトリアムおじさん」は、これまでのインタビューなども総合してみていると、夫婦の満足度は低いものの、妻に対する依存度は高いことが分かっています。ひとりではなかなか踏み出せない行動も、妻と一緒ならできるかもしれません。でも、べったり一緒だとそれはそれでお互い疲れてしまうので、行動のキッカケは一緒に、でもその先は別々に、お互い違う刺激を受けて、会話の糸口も増え、さらに生活が楽しくなる…夫婦消費の新しい形として、そんな提案があってもいいのではないでしょうか。
また、夫婦のこの傾向は、最近活性化しているシニアの婚活市場において、マッチングなどに生かすことができるのではないかとも考えます。人生経験を重ねたシニアだからこそ、配偶者に求めるものは若い世代とはまったく違うはず。当研究結果やこのセグメントを活用いただくことで、シニアのニーズに応えるサービス開発ができるかもしれません。
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●調査概要
対象者:55~74歳の夫婦860組
調査手法:インターネット調査
調査時期:2016年11月
ソリューション事業局 ひと研究所 エイジング・ラボ リーダー 對馬友美子
ビデオリサーチ「ひと研究所 VRエイジング・ラボ」
シニア市場の活性化を目指して立ち上げたシニア研究プロジェクト。リアルなシニアを捉えマーケティング活動に生かすべく、研究活動や情報発信、企業のシニアマーケティングへのコンサルティング業務を行っています。