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いま改めて「シニア・マーケティング」を考えるNo.4

デジタル領域でのシニアの伸びしろに注目 ~音声検索機能を駆使!?~

2018/07/23

前回は価値観のタイプによって何が違うのかの例として、「買い物」意識の差をご紹介しました。

2回目はビデオリサーチの「Senior+/ex」※の最新データから、インターネットやスマートフォン(以下、スマホ)など、デジタル環境やデバイスに関する意識・行動の違いを見ていきます。

昨今、日常生活へのデジタルの浸透が急速に進んでおり、パソコンはもちろんスマホを使うシニアも珍しくなくなりつつあります。ただ、シニアのデジタルとの関係性については、まだ若い年代に比べると個人差が大きいのも現状です。その一端も、価値観のタイプによって読み解ける部分があります。

「シニア価値観セグメント」とは・・・ 考え方も行動も多様化・複雑化しているシニア層を理解するための新たな切り口として、"価値観"で分類したセグメント。価値観は6タイプに分類され、それぞれを「行動が積極的か控えめか」、「志向が伝統的・保守的な傾向か、変化や刺激を好む傾向か」という2軸4象限上にプロットしたもの。

アクティブトラッド:リタイアして悠々自適に暮らしている方が多く、お金あり時間あり。消費も行動も積極的だが、伝統的な家族観が強い。いわゆる「アクティブシニア」と言われてきたイメージに最も近い。

ラブ・マイライフ:若さや美への追求心、アンチエイジング意識が強く、新しい物好きで情報通、流行にも敏感。「新型」のアクティブシニアの一つ。

社会派インディペンデント:人とのつながりを大事にし、新しい人脈を築くことや世代を超えた交流にも意欲的。「新型アクティブシニア」のもう一つのパターン。

淡々コンサバ:現在の生活に十分満足していて、これ以上に多くを望まない。強い主張をももたず、日々淡々と平穏な暮らしを送っている。従来言われてきた「高齢者」イメージに最も近い。

身の丈リアリスト:何かとお金がない、お金がかかるからできないという諦め感を口にする。お金を本当に持っていないわけではないが、将来不安からか消費行動は消極的。

セカンドライフモラトリアム:社会に取り残される不安感や、人や社会とつながりたい思いは強い。が、その術がわからず、これからの人生をどう過ごしたらよいのか模索している。

シニア全体に広がりつつあるスマホ

スマホの所有率は若い年代ではすでに9割超と飽和状態にありますが、シニアはまだ伸びしろがあります。見やすさ、操作性の良さからタブレットもじわじわと伸びています。(図1)

 
図1-買い物の仕方・意識①

また、スマホの音声検索機能は若い人たちよりもシニアの方が利用率が高いことも分かりました(図2)。

図2 音声検索機能利用率

老眼や指先の動きの鈍化など身体能力の衰えにより、モバイル端末での入力操作のしにくさを訴えるシニアは少なくありません。こうした加齢からくる不自由さを、音声による操作で補完していると考えられます。

昨年来、日本ではAIスピーカーが続々と市場に登場しています。その機能を利用した見守りサービスなどもすでにいくつか実現化していますが、AIが学習機能の向上で普通の人間同士のように自然な会話ができるようになれば、シニアの買い物や情報接触など普段の生活行動も変えていく可能性は十分あります。

スマホとフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)の所有率を価値観セグメント別に見ると、6セグメント中五つでスマホがガラケーを上回っていました。残る一つは最も保守的な淡々コンサバですが、このタイプでも所有率はほぼ拮抗ともいえる数値です。推移を見ると、ラブ・マイライフは2016年時点、その他のタイプは2017年時点でガラケーユーザーとスマホユーザーが逆転したことが分かりました。最も保守的な淡々コンサバでも、近々スマホ所有者の方が多くなるかもしれません(図3)。

図3 スマホとガラケーの所有率推移

ネットが欠かせないラブ・マイライフと身の丈リアリスト、ネットへの意識が低い淡々コンサバ

所有デバイスとしてスマホがあらゆるシニアに浸透しつつあることは分かりましたが、デジタル情報に関する感度や親和性はどうでしょうか。

図4 インターネットに関する意識

シニア全体で見ると、インターネットで情報を収集するシニアは約7割、生活必需品と考えているシニアは過半数に上っていました。(図4)

そのうち特にネットで情報収集するラブ・マイライフと社会派インディペンデントで見ると、ラブ・マイライフの4人に3人が「ネットは生活に欠かせない」と考え、LINEやFacebookなどSNSの利用率も高く、インターネット全般に親和性が高いのに対し、社会派インディペンデントはそこまでネットへの依存度は高くありません。SNSをコミュニケーションツールとして利用している人は多いものの、彼ら彼女らにとってネットはあくまで情報源のひとつであり、新聞やラジオなど他のメディアからも幅広く情報を収集している様子が見られました(図5・図6)。

図5 SNS利用率
図6 自分にとって身近な情報源だと思うメディア

また、消費行動において通販の利用が多かった身の丈リアリストは、ネットを欠かせないとする割合もネットの利用時間量も、ラブ・マイライフに次いで高くなっていました(図7)。口コミを見て商品を調べたり、ネット広告を見る割合も高く、主に買い物でネットをよく利用している姿が浮かび上がります。

図7 インターネット利用時間量

一方で、インターネット全般に意識が低めなのは、やはり最も保守的な淡々コンサバでした。

淡々コンサバは、年齢構成が他のセグメントに比べてやや高めであり、その影響が若干表れていると想定されます。デジタルへの意識や親和性は年齢効果の影響で解釈できることももちろんありますが、それだけではなく、個人の経験や価値観による違いも大きいといえます。

スマホが浸透してきていても使いこなせているシニアはまだ少数派ですが、今後はAIやIoTなどを通じて、生活の中で自然にデジタルに触れる機会が増えると考えられます。

シニア特有のインサイトやニーズを理解することで、それぞれのシニアに適したコンテンツ、インターフェースやアプリ、フォローのためのサービスメニューの開発や提供など、デジタル領域におけるビジネスチャンスはまだまだあるのではないでしょうか。

お問い合わせ先はこちら。
hitoken@videor.co.jp


「Senior+/ex」とは 

ビデオリサーチの大規模シングルソースデータ「ACR/ex」の年齢拡張版。
2017年4~6月調査 東京50キロ圏 55~74歳男女 N=1611
調査手法:人口構成比に基づく無作為抽出の対象者家庭に訪問により調査協力を依頼。
回答形式は電子調査票(専用タブレット端末を貸与)。


ビデオリサーチ ひと研究所「VRエイジング・ラボ」

ビデオリサーチのシンクタンク「ひと研究所」が、シニア市場の活性化を目指して立ち上げたシニア研究チーム。リアルなシニアを捉えマーケティング活動に生かすべく、研究活動や情報発信、企業のシニアマーケティングへのコンサルティング業務を行っています。

ひと研究所:
http://www.videor.co.jp/hitoken/#anc2