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海外目線で断言する、日本は今、この先の新たな食文化を創造するとき

食ラボの視点 ~「食と○○」を考える №13

  • ジャスティン ・ポッツ
  • 勘場 永子

2018/07/26

海外目線で断言する、日本は今、この先の新たな食文化を創造するとき

海外との比較の中で往々にして浮かび上がる、私たちの「無意識」や「当たり前」の中に隠れてしまった、大切なこと。鋭いアンテナを備えた海外目線からは、「日本の食」はどのように見えるのでしょうか。日本に居を構え、各種の食のプロデュース活動に携わるジャスティン・ポッツさんに、電通「食生活ラボ」リーダー、勘場永子氏が迫りました。

左から、勘場永子氏(電通)、ジャスティン・ポッツ氏(ポッツ家プロダクションズ代表)
左から、勘場永子氏(電通)、ジャスティン・ポッツ氏(ポッツ家プロダクションズ代表)

日本食に魅せられた理由は「発酵」

勘場 :近年、訪日外国人が増える中で、海外目線で日本の良さを認識する機会が増えました。ジャスティンさんは旅行で日本を訪れたとき、すっかり日本食にハマってしまったんですよね。今は、食や観光を中心とした日本各地のプロジェクトデザインを手掛けていますが、最初にハマったきっかけは何だったのですか。

ジャスティン :大きかったのは、日本の発酵文化です。発酵食品は世界中にありますが、日本はひときわオリジナリティーあふれる発酵文化が培われていることを“体感”しました。きっかけは、あるとき農家の食卓で出していただいた漬物やおみそ汁です。一般に流通するものとは全く違いました。地域で伝承された、昔ながらの製法でつくられた発酵食品と出合って、すっかり魅了されたのです。

勘場 :その後、発酵への興味はどんどん高まって、今では“唎酒師(ききざけし)”の資格を持ち、酒蔵で日本酒造りもしているとか。

「木戸泉酒造」で蔵人として働くジャスティン氏
「木戸泉酒造」で蔵人として働くジャスティン氏


ジャスティン: 発酵は本当に奥が深いです。いろいろな微生物がいる中で、どれが良い悪いではなく、全てが同じ環境に生きているからこそ発酵が生まれる。そこから学べることはたくさんありますし、微生物の関係を見ると、社会の構築やコミュニティーの在り方のヒントにさえなると思ってます。ずっと追い掛けたい大きなテーマです。

日本の食は、「枠」にとらわれている

勘場: ジャスティンさんは海外目線を持ち、かつ日本の食文化にも深く入り込んでいる。だからこそ聞きたいことがあります。日本の食文化の課題は何ですか。

ジャスティン :「枠」を気にし過ぎていることではないでしょうか。日本酒を飲む席をイメージすると、多くの人は似た風景を描くはずです。夜に室内で飲む…など。昼から外で飲むというと、驚く人も多いでしょう。でも、きっと昼にしか味わえないおいしさ、ぜいたくもあるはず。もっと自由に楽しんでよいのではないでしょうか。

勘場: いつの間にか「こうでなければいけない」という枠を持っていて、それを超えるケースが減っているのかもしれません。枠を超えることで、食に新しい価値が生まれる可能性もありますよね。

ジャスティン: 文化とは、これまでの形を継承しつつ変化していくものだと思います。現代のすしは明治時代と全く同じではないでしょうし、日本のラーメンや和食も、海外に行けば地域ごとローカライズされます。今の時代の人、地域の人が何を求めるのか、それに合わせて変化するのが本来の姿だと感じます。

勘場 :そうやって、本当の意味で味や文化が人々に根付いていくと。

ジャスティン: 現在の日本人のアルコール消費量から見れば、日本酒を飲んでいる人は決して多くありません。その中で、今の人々が求める新たな価値をどうつくるか。長く培った技術がベースにあるからできることで、そこに今の技術やノウハウを組み合わせていく。日本にはレトルト食品に見られるように最先端の技術もあるので、伝統との融合が可能です。今まさに、新たな食文化を創造できる時代なのです。

伝統と最先端の融合。それを可能にする日本

勘場: 伝統と最先端を掛け合わせて食文化を創造する。そのためにどうすればよいと思いますか。

ジャスティン: まずは伝統的な食文化をつなぐこと。日本は「おいしい」が当たり前になっています。それは食の最先端にいる証しですが、「食の大切さ・ありがたみ」を感じにくいので、伝統的な食文化を次世代に伝える力が弱まっていく。であれば、いかにそれを伝承できるかが鍵ではないでしょうか。

勘場 :インバウンドが盛り上がり、外国人に日本の食文化を説明する機会が増えました。すると、日本人が改めてその素晴らしさに気付くこともある。そんなコミュニケーションが食文化をつないでいくと。

ジャスティン: コミュニケーションの相手は、外国人だけでなく子どもでもよいのです。しかも昔に比べて、情報の見せ方は多様になっています。使えるメディアも豊かになっていますし、言葉で伝えず、一緒に食べる方が効果的なこともあるはずです。

勘場 :そうやって、日本の伝統的な食文化を共有していくということですね。

ジャスティン :そう、そしてそこに最先端のテクノロジーを掛け合わせることができるんです。先ほど言ったように、日本の食の技術は間違いなく最先端です。伝統文化と最先端が共存しているのはすごいことなんです。それらをどう融合させるか、その判断で日本の食の未来が決まる。これからの食文化の創造こそが私たちの役割なのです。


人が生きていくための源であるからこそ、生活のあらゆる面と影響し合い、社会構造の変化や文化の潮流までも映し出す「食」。電通「食生活ラボ」は、そんな食にまつわるソリューションを提供することで、食を通じて世の中を良くしていくことを目指すプロジェクト。各種の得意分野と知見を持つメンバーで社内横断的に構成され、その社外にまで広がるネットワークを生かしたラウンドテーブル型のイノベーション創出に取り組んでいる。現在、社内構成メンバーは約20人。プロジェクトの源流は1980年代前半にまでさかのぼり、以来各種の知見の蓄積とアップデートを続けている。