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“超超”高齢社会ニッポン、シニアはどうなる?

いま改めて「シニア・マーケティング」を考える №6

  • 對馬 友美子

2018/08/20

“超超”高齢社会ニッポン、シニアはどうなる?

これまで5回にわたって連載してきた“いま改めて「シニア・マーケティング」を考える”ですが、最終回の今回は、世界にはるかに先駆けて高齢化が進んでいる日本において、シニアはこれからどうなっていくかを少し考えてみたいと思います。

5年後には、2人に1人が50歳以上に

図1は人口の推移を10年ごとに追ったもので、途中に入っている赤いラインは年齢の中央値、すなわち、ちょうど人口を半分に分けられる年齢に当たります。

約20年前には人口の半分が40歳未満でしたが、現在に一番近い2015年の国勢調査では人口の半分が47歳以上です。国立社会保障・人口問題研究所によると、この中央値、2023年に50歳を超えると推計されています。あと5年で2人に1人が50歳以上、本当に「大人の国」なんだなぁ…と改めて感じさせられます。

国連の定義では、人口に占める65歳以上の比率(高齢化率)が7%以上で「高齢化社会」、14%以上で「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれます。日本では7%を超えたのが1970年、今から48年前にすでに「高齢化社会」を迎えていました。14%を超え「高齢社会」となったのが1994年、21%を超えて「超高齢社会」となったのが2007年。

現在出ている統計の中で最新の2017年10月時点の人口推計では高齢化率は27.7%でした。「超高齢社会」を超える名称は定義されていないようですが、間もなく28%を超える勢いの日本を勝手に命名するならば「“超超”高齢社会」でしょうか。

とはいえ、「人生100年」ともいわれるこの時代、社会的には確かに「“超超”高齢社会」かもしれませんが、そこに生きる人々はステレオタイプな「高齢者」のイメージだけでは語れなくなってきています。日本老年学会などが「今の高齢者は昔の高齢者に比べ、体力・知力・健康状態などが5~10歳若返っている」という声明を発表していることを考え合わせると、「高齢者像」は今後もどんどん変化していくでしょう。

人生100年時代が実現すると仮定するならば、50歳ですらまだやっと人生の折り返し地点、60代・70代でもまだまだこれからの人たち、ともいえるのです。

かつての「新人類」がシニアに。懐メロはあのアーティスト!

1980年代に「新人類」と呼ばれた世代があります。語源や定義を調べてみると、当時の若者について「従来とは異なった感性や価値観、行動規範を持っている」として称された新語で、諸説ありますが1960年代に生まれた人たちを指すことが多いようです。

私見ですが、1980年代当時の「新人類」世代は上の世代からは自分たちには理解できない一風変わった世代としてある意味揶揄されることも多かったように記憶しています。彼らの背中を追っている世代である筆者は、それまでとは明らかに違う面白いカルチャーや流行をつくり出し、景気の良さも手伝って華やかな世界を生み出している彼ら彼女らを、「大人って楽しそう!」という憧れの目で見ていました。余談ですが、新人類と呼ばれた代表格の人気芸人コンビが、生放送の番組中にテレビカメラを壊したところを見て大笑いしたことも覚えています。

そんな「新人類」世代が今、私たちが定義した「シニア」の年齢(VRエイジング・ラボでは55~74歳と定義)にすでに一部突入しています。1960年生まれなら今年58歳です。彼ら彼女らはバブル景気真っ最中に20代を過ごしているため、「バブル世代」と呼ばれることもあります。他の世代との違いとして、旺盛な消費意欲をまだ維持している傾向があるといわれており、最近この世代に対して仕掛けられたと思われるプロモーションをよく見かけます。

例えば最近、50代以上向けの雑誌が、続々と創刊されています。昔は数えるほどしかなかった上に、あってもそれは健康情報に特化したものが多かったのですが、今はファッションやライフスタイル全般を提案するものが多くなっています。

直近では、ムックが好調で今年9月から月刊化を発表した宝島社の「モノマスター(MonoMaster)」が好例といえます。宝島社によると、「アイビーやトラッド、DCブランドの全盛期を体験し、“ポパイ”や“メンズクラブ”“宝島”などを愛読した“元シティボーイ”をターゲット」にしているそうです。(出典:宝島社プレスリリース)。

私たちVRエイジング・ラボでも先日、研究の一環として、若いころ好きだった音楽やファッション、テレビ番組などと同様に、今現在好きなものをアンケートで聴取しました。

生まれの年代別に特徴や差異が見いだせるよう、1950年代生まれから1990年代生まれを対象に実施し、計1700人以上から回答を得ました。アンケートは自由回答を中心に実施しており、現在分析に向けてデータを整理・集計中で全容はまだご紹介できないのですが、生のデータを一部抜粋し、そこから見て取れた傾向をお伝えします。

まず最初に気が付いたのは、1950年代生まれ(現在59~68歳)と60年代生まれ(現在49~58歳)のデータから「現在好きな音楽」を見ると、いわゆる“演歌”がほとんど出てこなかったことでした。

自由回答のため表現の振れ幅もありますが、50年代生まれの300人強のうち、現在明らかに“演歌”と分かるジャンルを回答した人はわずか7人ほど。60年代生まれでは500人弱の回答者のうちたった2人でした。“昭和歌謡”まで広げるともう少し増えそうではありますが、少数派といえます。

「昔聴いていた曲を今も聴いている」という回答が多かったので、ルーツとして彼ら彼女らが「10代のころに好きだった音楽」をたどってみると、ビートルズをはじめ、カーペンターズ、サイモン&ガーファンクルなど洋楽や、フォークソング、グループサウンズが目立ちました。それに加えて60年代生まれはニューミュージックと呼ばれたジャンルを挙げる人が増えてくるのも特徴です。

その一方、50年代生まれも60年代生まれも10代のころ“昭和歌謡”に分類されるものを挙げた人はそこそこ見られましたが、 “演歌”を聴いていたと答えている人がやはり少ないことが分かりました。

このことから、将来的に「懐メロ」といわれるものが時代に合わせて変わっていくだろうことが想像できます。今聴いている音楽に“演歌”を挙げた人の中に一部、「年を取ったら演歌が心にしみるようになった」と答えている人はいましたが、こういう心境になる人は本当に一握りで、「懐メロ」とは、その人たちが多感なころよく聴いた・好きだった音楽であり、今の50代60代にとってそれは演歌ではなく、ビートルズでありカーペンターズでありザ・タイガースであり山口百恵であり吉田拓郎でありユーミンであり佐野元春でありサザンオールスターズである、といえます。

この後、他年代との比較や、ファッションなど他のカテゴリーについても分析を進める予定です。傾向が見えましたらまた何らかの形で発表させていただきます。

シニア価値観セグメントはどうなっていくか?

ではシニア価値観セグメントで見た場合、将来的にどうなっていくでしょうか?

「シニア価値観セグメント」各セグメントの説明はこちら

VRエイジング・ラボでは、政治・経済など社会的環境と、育ってきた時代背景などを加味し、仮説を立てています。

まず、先述の「バブル世代」がシニアに差し掛かってきており、旺盛な消費意欲とアグレッシブな行動を好む人が増えることが予想されることから、ラブ・マイライフがこれからしばらく拡大していくと考えられます。

一方で、大きなお金を使えない身の丈リアリストもしばらく増えていくと予想されます。大きな要因は年金支給年齢の引き上げです。雇用延長が企業に義務付けられ、人手不足もあり、70歳くらいまで働く人は増えていますが、一度定年すると現役時代の収入が大幅に減る、希望の職種が見つかりにくいなど、シニア雇用に関する問題はまだまだ残っています。

また、男女雇用機会均等法の1期生が今年55歳前後になります。結果的にはずっと総合職として勤め上げた人は少ないとも聞きますが、現代に通じる女性の社会進出の礎をつくった人たちには違いなく、仕事中心の生活をしてきた人も多いと思われます。

そうすると会社と家との往復で、プライベートなコミュニティーをつくる機会のなかった「モラトリアムおばさん」たちが一時的に増えることも予想されます。

社会派インディペンデントは、今の40歳前後、ロストジェネレーションといわれる就職氷河期世代がシニアになる15~20年後に増えていくかもしれません。この世代の人たちは、社会人として経済の成長期を体験することなく、日本的雇用制度が崩壊していく様を見ており、会社に依存しない考え方が育まれています。社会起業家が多く生まれている世代であることも、それを物語っています。

反対に、縮小が予想されるのはアクティブトラッドです。相続税法改正で負担が重くなっており、遺産による生活の余裕が出なくなる人が増えていくと考えられます。

ただ、考え方としてみんながみんな新しいものを求めるわけではなく、比較的伝統・保守的な人はこれからも一定数を維持すると考えられますので、アクティブトラッドは考え方の近い淡々コンサバと近づいて一緒になるかもしれません。

以上はあくまで今の6セグメントが将来的に続いたら、という前提での仮説です。

もしかしたら5年後10年後には、今までいなかったシニアのタイプが発見されるかもしれませんし、6分類自体が全く新しいものに刷新されるかもしれません。
“超超”高齢社会に向かって突き進む中、次世代のシニアがどう変わっていくのか、社会はどうなっていくのか、それを踏まえてどんなマーケティングやコミュニケーションができるのか、自分自身も近い将来「シニア」と呼ばれる年齢が近づきつつある中、自分ゴトとしてもしっかり追い続けていきたいと考えています。

ビデオリサーチ ひと研究所「VRエイジング・ラボ」

ビデオリサーチのシンクタンク「ひと研究所」が、シニア市場の活性化を目指して立ち上げたシニア研究チーム。リアルなシニアを捉えマーケティング活動に生かすべく、研究活動や情報発信、企業のシニアマーケティングへのコンサルティング業務を行っています。

ひと研究所 : http://www.videor.co.jp/hitoken/#anc2