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スマホは単なるデバイスではなく、環境である

スマホの「次」の世界はどうなる? №1

  • 吉田 健太郎

2018/11/05

スマホは単なるデバイスではなく、環境である

タイトルの「スマホは単なるデバイスではなく、環境である」の通り、ここ数年のスマホと生活者の関係を見てみると、スマホはデバイスの域を超えて、環境の一種と捉えられると思います。あって当たり前であり、ないととても困る。スマホがない生活は考えられない状況になりました。

何か気になったことがあればスマホで写真を撮り、触れれば気になる情報が視界に入ります。日常行動の多くがスマホありきの行動にシフトしました。私、吉田健太郎の著書『スマホマーケティング』では、このような変化と実態を生活者インサイトとともにまとめています。

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この連載では、モバイルデバイスの利用実態調査や新たに登場したデジタル機器の調査から生活者の心理を探り、ポストスマホについて考えたいと思います。

スマホがいつも手にある環境が与えた影響とは?

ガラケー成熟期の2008年と、2018年の現在では、モバイルデバイスの利用機能は大きく異なっています。

モバイルデバイスにおける利用機能の変化【2008年→2018年】

2008から2018グラフ

ガラケー時代は動画にさまざまな制限があり、ほぼ進化が完了した時点でも動画を閲覧する人は20%にも満たない状況でした。

しかし、今ではスマホで動画を閲覧する人は7割近くとなり、スマホを持つほとんどの人がスマホで動画を見ていることになります。静止画はガラケー時代から流通しており、そこに動画の一般化で、コミュケーションも情報伝達もビジュアルが中心となる環境になりました。

取得可能な情報量が膨大になっていることもあり、生活者は効率的に情報を収集したいと思っています。特に理解が必要なことはテキストを読み込んで理解するよりも、受動的に動画を見るだけで理解する方が楽な上、分かった実感が得られます。ある意味、現時点で動画が「最も効率的な情報理解手段」になっているともいえるでしょう。

ケータイではほとんど利用している人が確認できなかったSNSとインターネットショッピングもスマホでは利用率が50%を超えていて、スマホで開花した領域であることが分かります。

SNSはリアルな友達とつながることはもちろん、趣味など領域別のネットワーク構築が容易で、アクセスするたびに気になる情報が目に留まるようになっています。

インターネットショッピングはどこでも買い物ができる環境を提供し、音楽をはじめとするマンガやアニメなどのコンテンツも場所に依存せずどこでも楽しめる環境が当たり前になっています。

デバイスとしてのスマホが普及し、生活に浸透したことで、このようにどこでも好きなことができる環境が構築されました。生活者は自然と動画を見るようになり、インターネットショッピングで買い物をし、さまざまなコンテンツを楽しむようになったのです。

“ついつい”身を委ねる「沼メディア」と「川メディア」

なんでもできることから“ついつい”使ってしまうスマホは、人々を誘導していくようになりました。

ちょっと気になるコンテンツが無料であればすぐに試してしまい“ついつい”ハマってしまう「沼メディア」の側面。加えて、欲しい商品があったにもかかわらず、その目的があっと言う間に忘却され“ついつい”違う商品の売り場(ネットショッピングのページ)に流されてしまう「川メディア」という二つの側面をスマホは持っています。

沼メディア川メディア

実は生活者は、労せずにハマっていくことや流されていくことをポジティブに捉えています。なぜなら楽に楽しめ、欲しいものが見つかり、買えるからです。

例えば、気になるコンテンツはレビューやSNSなどで、楽しんでいる人が可視化されます。気が付いた時には「面白そう」と感じることも増えています。さらに多くのコンテンツは無料である程度体験でき、もっと楽しみたいと思った時に課金が待ち受ける構造になっています。

もちろん無駄な時間になることもあります。しかし「沼メディア」構造は、何が自分にとってベストなコンテンツなのかを探す労力や、面白いか分からないものにお金を払うリスクを考えると、圧倒的に効率的な環境です。

「川メディア」も、どんなものを買うべきかの判断に時間をかけるより、なんとなく良い評価が多い、ランキングが上位である、SNSで評判が良い、という情報に流されて購入する方が、間違いないものを買った実感が楽に得られます。

大多数の人は楽と便利からは逃れられず、自然と環境に適応していきます。特に便利な環境はどんどん自分の都合の良いように取り入れていくものです。

スマホは使えば使うほど自分に都合の良い情報や興味がある情報の比重が増していき、とても快適な環境になっていきます。わざわざ探しに行っていた趣味領域の情報も、いつものルーチン的なスマホ利用の中でスムーズに得られるようになっていくのです。

スマホ市場の成熟は、人とスマホの関係も成熟させつつあります。10年前では考えられないほど、労せずに楽しく過ごせるスマホ環境ですが、もうこの環境も生活者にとっては当たり前になってきました。

そして世の中にはもっと楽なことや、もっと便利なことが生まれつつあります。この兆しを捉えることで、5年後、10年後の楽で便利な生活が少しずつ見えてきます。

次回は、さらに便利な環境をつくるAIスピーカーの利用実態調査から、スマホの「次」の世界を考えてみたいと思います。