生活者が考える「2028年のなってほしい未来」とは?
2018/10/31
未来予測支援ラボはじめました
「未来予測支援ラボ」は、この先の私たちの未来がどのような社会になるのか、未来に関する各種の情報をデータベース化し、未来シナリオを作成したり、未来を考えるためのキーワードを想像したりしつつ、今後のビジネスチャンスを考える電通の社内横断チームです。
今回は、私たちが実施した「生活者が考える2028年の未来調査」の一部を紹介したいと思います。
私たちの周りには、未来に関する言説が満ちあふれています。AI、IoT、ロボット、フィンテックなど第4次産業革命とも呼ばれる急速な技術革新、中国・インドの経済成長に象徴されるグローバル経済の動き、温暖化・異常気象など、さまざまな要因が私たちの未来生活に変化を及ぼすことが考えられます。
日本特有の要因では、人口減少や高齢化による社会構造の変化も見逃せません。世帯構成変化、働き方改革なども私たちの暮らしに変化をもたらすことが予想されます。未来社会は、これらも含めた無数の要素が複雑に絡み合いながら実現する複雑系社会なので、正確に予測することは簡単ではありません。未来予測と未来予言は紙一重です。
一方で、未来はわれわれの想像力やパワーで変えていけることも厳然たる事実です。受動的に未来を受け入れるのではなく、より良き未来を形作っていくための創意工夫が求められます。私たちは、未来予測を通じて、より良き未来に効果的に接近するための動線を戦略的に構築していきたいと考えています。
10年後になってほしい社会の第1位は?
さて、今回の調査は、現在の生活者は、10年後の未来社会の姿をどのように捉えているかというものです。生活者の考える「集合的な未来」をあぶり出そうとする試みです。
今から10年後の2028年、人々はどんな社会が実現してほしいと考えているか?10年後、女性や若者、高齢者は活躍する社会になっていると思うか?人々は、幸せになれると考えているかなどの項目を伺ってみました。
今回のレポートはその第1回「10年後になっていてほしい社会、なっていると考える社会」です。(調査概要は文末を参照ください)
今回の設問は、ラボのメンバーで「(理想も含めて)10年後はこんな社会になっているかも」という項目を全部で60点挙げ、それぞれに「なっていてほしいと思うか」(希望)、「なっていると思うか」(実現性)について聞いたものです。[60項目の詳細については、本文の最後にお問い合わせ先を掲載しております。]
表1は、生活者が考えた「なっていてほしい社会」のランキング・ベスト15です。ランクの上位を占めたのは、主に少子高齢化課題が解決された社会、新しい働き方や暮らし方が実現した社会に関する項目が中心でした。
少子高齢化では、「高齢期になっても安心して暮らせる社会」(1位)、「高齢化問題を解決するための産業、商品やサービスが生み出されている」(6位)、「少子化の歯止めがかけられ、人口減少のペースがゆるやかになる」(11位)社会などが上位に挙がっています。
働き方や暮らし方では、「自宅や地方など、働き方のスタイルが多様化している」(4位)、「低成長でも、幸福感を持ち暮らせる社会」(5位)、「夫婦ともフルタイムで働きながら子育てが可能な社会」(8位)、「障がい者に対しバリアフリーをはじめ全ての面で優しい社会」(10位)などが上位に挙がっています。
この結果から見えてくる生活者が望む10年後の社会は、「働き方改革で労働生産性が飛躍的に向上」(53位)したり、「新しい産業創出で再び世界のトップに」(57位)という社会ではなく、日本固有の社会課題がある程度解決もしくは緩和され、高い経済的成長が望めなくとも、高齢者、女性、障がい者、子どもたちが分け隔てなく、都会や地方で分散して生活し、働き方や暮らし方の多様性が実現されているサステナブルな社会だということです。
なってほしい社会となっている社会の間にあるギャップ
一方、「なってほしい社会」(希望)ではなく、実際に「なっている社会」(実現性)の視点から見た10年後の社会は、どのようなものであったか、同じく見ていきましょう(表2参照)。
これを見て分かるのは、「なってほしい社会」ランキングで上位であった少子高齢化課題が解決された社会などの項目は下位となり、上位を占めているのはテクノロジー革新によって実現する社会ということです。
「ネットスーパーでほとんどの食材や日用品が届けられる」(1位)、「自動運転が、業務利用など一部で実現される」(2位)、「電気自動車や水素自動車がより一般的になる」(3位)、「あらゆる購買行動がキャッシュレスになる」(4位)、「日常生活の中でのAI活用が一般的になる」(5位)、「ドローンを活用した物流輸送が実現している」(6位)などが上位を占めています。それらの項目は、すでに一部は実現しているものもあり、現在の延長線上で10年後を現実的に捉えようとしていることが理解できます。
このように見ると、「なってほしい社会」(希望)と、実際に「なっている社会」(実現性)の間には大きなギャップが存在していることに気が付きます。テクノロジー的な未来は、いわば技術革新のみで実現されていく社会ですが、一方で「なってほしい社会」(希望)を実現していくためには、社会課題解決のための新しいイノベーションを生み出す、社会構造そのものを変革するなど、より高い数多くのハードルが控えています。
私たちが、豊かな未来社会を実現していくためには、「なっている社会」を「なってほしい社会」に近づけていく努力が求められます。それにより、はじめて私たちは、「なってほしい社会」を自らの力で実現することになるといえるでしょう
このギャップをいかに近づけていくか、次回はより詳細に分析していきます。
お問い合わせ先 future@dentsu.co.jp
【調査概要】
調査名:「生活者が考える2028年の未来調査」
実施実施:2018年6月
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国に住む20~69歳の男女(1000サンプル)
調査会社:電通マクロミルインサイト