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「ダボス会議2019の潮流」~ビジネスのヒントを探る

2019/02/28

「ダボス会議2019の潮流」~ビジネスのヒントを探る

今年も1月22日~25日、スイス東部の山あいの小さな街ダボスとクロスタースに、世界100カ国およそ3000人の政財界のリーダーが集まり、世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」が行われました。

今年のテーマはGlobalization 4.0: Creating a Global Architecture in the Age of the Fourth Industrial Revolution(グローバリゼーション4.0 - 第4次産業革命の時代に形成するグローバル・アーキテクチャー)。第4次産業革命によってさまざまなものがインターネットでつながっている社会の中、グローバル化をどう構築していけばよいのか。4日間でおよそ300のセッションが行われ、議論が交わされました。

会議場の全景
会議場の全景

普段からビジョンや中期経営計画策定、SDGs対応、リーダーシップコミュニケーション、広報戦略、PA(パブリックアフェアーズ)戦略策定などに関わる機会が多いのですが、その際にも毎年のダボス会議での潮流が欠かせない視点となっています。今回は、その潮流の一端を、昨年3月掲載「世界を動かす“ダボス会議”の基本情報とトレンド」の続編として紹介します。

今回のテーマ「Globalization4.0」~誰も取り残すことのない社会を目指して 

近年の会議では、第4次産業革命を基本にテーマ設定が行われてきました。今年もそれは踏襲され、インターネットでつながれた世界ということで企業の関心はAIやフィンテックといったものに集まりました。もちろんサイバーセキュリティーも大きなテーマのひとつです。

年次総会の直前にジュネーブの本部で開かれた記者会見で、世界経済フォーラムの創始者のシュワブ会長は、「グローバリゼーションは実質的に人々の利益となっているが、われわれはそこから取り残された者や弱者、敗者をケアする必要がある」とし、さらに「グローバリゼーションの新しいアプローチをわれわれが定義する必要がある」と述べています。

このデジタル化された新たなグローバリゼーションの中、参加したリーダーたちは過去の失敗から学び、誰も取り残すことのない社会をいかに構築するか、また自社ビジネスをどう導いていけばいいのか、多くのセッションに出席したり、議論の場を設けたりしてそれぞれが解決方法を探っていました。

首相演説、大臣登壇など日本が目立った2019年の年次総会

一方、近年でもまれに見る陽気なムードに包まれていた2018年の年次総会とは打って変わって、今年の会議は世界経済の先行きを悲観する発言が相次ぎました。その背景にはトランプ米大統領やマクロン仏大統領ら多くの首脳が国内情勢の都合で参加を見送ったことなどがあったといえます。出席者の間では米中貿易摩擦や中国経済への懸念も広がりました。

そんな主要国のリーダーが欠席した中、日本は5年ぶりに安倍首相がダボス会議に参加し基調講演を行いました。演説の中で「成長をもたらすものは、デジタルデータ」であると指摘し、国境を超えたデータ流通の必要性を述べた他、国際貿易の枠組みや、6月の大阪でのG20 首脳会議に向けて、議長国としてプラスチックごみによる海洋汚染対策についても言及しました。

この他、世耕経済産業相がソサエティ5.0に関するセッションに、河野外相が地政学に関するセッションに登壇。石井国土交通相が自動運転に関する会議に参加するなど、例年になく日本の大臣の参画が目立ちました。

国内のみならず世界に向けてリーダーがビジョンを発信する際は、メディアを意識した言葉を選び、状況に応じたポジションなどを明確にしてオーディエンスを魅了する必要があります。

年次総会に参加する国内29の企業や大学などによる実行委員会主催の「ジャパンナイト」が今年も行われ、大臣らと共に首相が初めて参加しました。首相が紹介した日本の寿司や和牛、日本酒に世界のメディアや要人がこぞって興味を示しました。日本のリーダーたちのプレゼンテーションに共感する方々が多かったようです。

「ジャパンナイト」で振舞われた寿司
「ジャパンナイト」で振舞われた寿司

今年の会場外は一般公開ブースが減り、招待制のイベントが増加。個別交渉ルーム設置企業も増加

各社のブースの様子
各社のブースの様子

セキュリティーに厳しい本会議場から外に出てみると、各企業ブースが並びます。常連のFacebook、Google、アクセンチュアの他、今年は、Eコマース大手の京東商城(JD.com)やHuaweiなど中国企業の出展も目立ちました。しかし前回までのような華やかさはなく、ブースの入り口には「Invitation Only」(招待者のみ)と大きく張り出されているものも多く見かけました。

今年の傾向として訪れる全ての人に参加してもらう企業ブースが減り、独自のセッションなどのイベントを行う際も、参加者を絞り込んでいる傾向がうかがえました。本会議場ではなかなか取れない会談の部屋を独自で設け、より多くの商談をよりクローズな自社らしさを出した空間で行えるようにすることが狙いかもしれません。そのため、心なしか装飾も外からはのぞきにくいものが多い印象を受けました。

なお、例年は会議場外のイベントを取りまとめたアプリなどもありましたが、2018年5月に施行されたGDPR(EUの一般データ保護規制)によって個人情報の取得が難しくなったことで、アプリもなくなり、サイドイベントや企業ブースの集客にも影響をもたらしたようです。

「SDGs」「脱プラスチック」は外せない課題

2017年の年次総会以降、今回もSDGsは重要なテーマとして存在していました。会議の参加者である企業のトップたちの左の襟にはSDGsバッジをしている人が年々増加しています。

会場のセッションや展示では、VRやAIなどのテクノロジーを使って、いかにSDGsを理解し、共感してもらい行動にうながせるのかという具体的な議論も多くなってきました。会議場外でも国連が設置しているSDGsのテントがあり、メディアゾーンを設けて生インタビューなど動画配信を行っていました。

また、国際機関や民間企業の基金が設けた「サステナブルインパクトハブ」というブースでは、テーマ別にセッションが行われていました。

脱プラスチック問題は世界的にも重要な課題のひとつで、会議場では水のサーバーが用意されており、飲み物容器もサーブされる軽食も、ペット樹脂製品が減り、ほとんど瓶やガラス製品に変えられていました。これは、会議全体でゴミを減らそう、再利用できるものはしようという姿勢を示したものです。

今年の年次総会のリサイクルガイドラインの表示
今年の年次総会のリサイクルガイドラインの表示

今年は会議を運営する共同議長に多くの若者が選ばれており、その中にごみ問題などの課題を解決する日本のNPO法人「ゼロ・ウェイストアカデミー」の坂野晶理事長も入っていました。彼女も会議中、世界の政財界のリーダーに循環型社会への転換へ協力を訴えていました。

ダボスでもここ数年「サーキュラーエコノミー」について積極的に議論が交わされてきました。日本では「リサイクル」で片付けられがちですが、世界は「リサイクル」にとどまらない循環型社会の構築に真剣に取り組む必要性に迫られていることを感じ取ることができました。

今年のダボスから見るまとめ

最後に、今年のダボスからのTake Awayのポイントをまとめました。

*ビジネス界では通商に悲観的な見方が拡大しています。
*唯一の明るい材料はテクノロジーで、AIは盛んに議論されていました。
*社会課題の解決に向けて、テクノロジーで理解や共感を得ることで行動に移せるかというフェーズにさしかかっています。
*循環型経済などによる社会課題の解決もグローバルなビジネスでは重要になってきています。

第4次産業革命というインターネットでつながった社会で暮らすわれわれは、Globalization4.0という新たな世界秩序の中で、国内のみならず世界中のステークホルダーと協業し、誰も取り残すことのない社会をつくることが求められています。